「ベイビー・ドライバー」のエドガー・ライト監督によるタイムリープ・ホラー。

 

 

 

 

 

 

      - LAST NIGHT IN SOHO   -    監督 エドガー・ライト

 

 出演 トーマシン・マッケンジー、アニャ・テイラー=ジョイ、マット・スミス他

 

こちらは2021年制作の イギリス映画 イギリス です。 (115分)

 

 

 

 

  ファッションデザイナーを夢見るエロイーズは、ロンドンのソーホーにあるデザイン専門学校に入学。だが、同級生たちとの寮生活に馴染めず、アパートで一人暮らしを始めることに。

 

 

 

 

そんなある日、エロイーズが眠りにつくと、夢の中で、60年代のソーホーにいた。そこで歌手を夢見る魅惑的なサンディと出会ったエロイーズは、身体も感覚も彼女とシンクロしていくのだった。

 

 

 

 

夢の中の体験が現実にも影響を与え、充実した日々を過ごすエロイーズ。タイムリープを繰り返す彼女だったが、ある日、夢の中でサンディが殺されるところを目撃してしまう。さらに現実では謎の亡霊が現れ、次第にエロイーズは精神を蝕まれていく

 

 

 

 

サスペンスなのかホラーなのか、予備知識がないままとりあえずレンタルしてみた私。「ベイビー・ドライバー」のエドガー・ライト監督という事で、それなりに面白い映画だろうと予測して鑑賞したのですが、はい、間違いなく面白い映画でございましたよ~!

 

 

 

 

まずオープニングのミュージカル風の出だしからもう良いです。60年代好きという主人公エロイーズに絡めた当時のポップスをBGMに、自分がデザインした新聞柄のドレスに身を包んで踊る姿、「ティファニーで朝食を」や「スイート・チャリティ」等のポスターが貼られた部屋の雰囲気がとってもキュート。

 

 

 

 

部屋にある鏡に映る亡くなった母親と会話するエロイーズの姿で、彼女が不思議な能力の持ち主だとさらりと紹介する手際もスマート。 そんな彼女を育てた祖母の下を離れ、デザイナーになる夢を叶える為に都会のロンドン・ソーホーに単身上京することに。カバンの中には着替えよりも古いレコードが優先ってのもポイント高いです。

 

 

 

 

エロイーズは学生寮に入る事になるのですが、都会の学生達のイケイケな空気に馴染めない彼女は、急遽古いアパートの屋根裏部屋を借りて一人暮らしを始めます。初めての一人暮らしの夜、眠りについた彼女は憧れだった60年代のソーホーに迷い込みます

 

 

 

 

ここで見える当時のソーホーのきらびやかな夜の景色が魅力的で、まず目に映る大通りの劇場に掲げられた「007/サンダーボール作戦」の看板で一気にこちらのテンションはマックスを迎え、そのまま映画館に入って映画を観たくなっちゃいます。

 

 

 

 

吸い込まれるようにカフェ・ド・パリという劇場に入ったエロイーズはそこで鏡に映ったサンディという女性に出会います。ここから彼女は60年代に生きるサンディを鏡の中から傍観する事になります。

 

 

 

 

60年代の場面ではサンディが主人公になり、エロイーズは鏡に映るサンディとして画面に登場する事になるのですが、シーンによってはエロイーズが実像になる場面もあって、その世界観のルールが若干曖昧だったりするのが気になります。

 

 

 

 

ただここでサンディがジャックという人物とホールで踊る場面が秀逸で、ジャックを相手にサンディ~エロイーズ~サンディと次々に踊る相手が入れ替わるシーンでは一か所を除いて全てワンカットで撮影されいたと知り驚きました。

 

 

 

 

メイキングを見ると、ジャックのアップになったタイミングでカメラの後ろで待機していた相手が入れ替わるというとってもアナログな方法で撮影されていて、鏡を使った場面も同様に、映画本来の魔法が随所に散りばめられている作品です。

 

 

 

 

鏡の中のサンディもエロイーズと同じように歌手になる夢を持ち劇場に売り込んで成功していくように思うのですが、徐々に男達に利用され奴隷のように落ちていきます

 

 

 

 

そんな中でサンディが男に殺される場面を目撃してしまった事からエロイーズの現実の世界にも影響するようになり、遂には日常でも男のゴーストを度々みるようにまでなってしまいます。その幻影を払拭しようと彼女はサンディを殺した男を突き止めようとするのが後半の物語となっていきます。

 

 

 

 

意外にも物語の根幹となっているのは、60年代のエンターテインメントの闇とその奥に潜む女性の性搾取というかなりダークでヘビーなテーマとなっています。ただこれは現在でも続いている問題ですが、一番華やかだったであろう時代に設定する事で明暗と、少し生々しさから距離を置いて客観性を持たす手段だったのかも知れません

 

 

 

 

映画の後半はかなりホラー映画的な演出が登場し一応の決着がつきます。それで十分楽しめる映画なのですが、観終えた後に考えると少しだけ疑問やモヤモヤが残る部分が生まれる作品でもあります。あくまで個人的にですが。

 

 

 

 

ラストにゴーストの手が沢山出て来る場面があり、ポランスキーの「反撥」を連想させます。あの映画の主人公は精神を病んでしまうのですが、この作品のエロイーズが見る幻影とは何だったのか、彼女が見たサンディの姿は事実だったのか、彼女の妄想も入り混じったものだったとしたら。そして最後の幻影は、、。等々

 

 

 

 

ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、2回、3回と観る度にまた違う見え方のする不思議な映画です。主演のトーマシン・マッケンジーは「OLD」とはまた違った魅力で観ているこちらの共感を呼びます。カラーリング変えるだけであんなに変化するもんなんですね。

 

 

 

 

そしてアニャ・テイラー=ジョイの画面力の凄さ、あの「ウィッチ」の素朴さからの今作の女優感は迫力でした。そしてただただ良い奴のジャック君、ややポリコレ臭を感じましたが好演してました。驚いたのがテレンス・スタンプの登場!若干の無駄使いにも思いましたが60年代の象徴として拝見出来て良かったです。

 

 

 

 

とまぁ個人的な疑問は残るものの、映画として十分面白い作品なのは間違いありません。とにかく素敵な映像とため息の出るライティング、女優さんのダンスと、物語にシンクロした60年代ポップスに当時を再現した街並みの雰囲気等、映像の仕掛けとストーリーの仕掛けが巧妙に仕組まれた映画ならではの体験が出来る作品です。

 

 

 

 

「サスペリア」「反撥」「サイコ」「ジェイコブス・ラダー」「アイズ・ワイド・シャット」といったホラー作品を彷彿とさせる場面も多々ありますが、それだけではない別の面白さも味わえる独特な映画となっています。ブルーレイにはボリュームたっぷりなこんな風に撮ってたんだメイキングも収録されていますので、機会がありましたらご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー