巨額の富を動かす芸術家とメガコレクター。ある無名の芸術家の絵を巡り次々と事件が起こっていく。
- Velvet Buzzsaw - 監督 脚本 ダン・ギルロイ
出演 ジェイク・ジレンホール、レネ・ルッソ、ゾウイ・アシュトン 他
こちらは2019年制作の アメリカ映画 です。(112分)
ロサンゼルスのアート業界。画廊の商売人たちは如何にして絵を高く売りつけるかということばかり考えていた。
そんな彼/彼女らにとって、絵の価値が分からないのに良い絵を買おうとする金持ちはカモでしかなかった。商売人たちはスノッブを上客として扱いつつも心の底では軽蔑していたのである。
ジョセフィーナはそんな世界に飛び込んだばかりであった。ある日、ジョセフィーナは偶然にも素晴らしい絵の数々を発見した。それは同じアパートに住んでいた老人が描き残したもので、極めて不気味な作品ではあったが、傑作の風格がそこにはあった
その話を聞いたモーフとロードラはジョセフィーナを出し抜き、老人の絵画を高値で売り出すことにした。老人は亡くなる間際に「自分の死後、描いた作品は全て廃棄して欲しい」と言い残していたが、利益に目がくらんだ2人は遺言を無視した。
絵画の素晴らしさはSNSを通して世界中に発信されていった。ところが、2人の周辺で怪現象が頻発するようになった。事態を重く見たモーフは絵画を処分しようとしたが、時既に遅かった、、。
ジェイク・ジレンホールの出演作品で、監督は「ナイトクローラー」というコンビの映画という事もあって、少し前から気になっていたこちらの作品。やっと観る事が出来たのですが、最初の感想は「正直、こんな映画だとは思わなかった」です(笑)
ちょっとした作品概要には、画商を舞台にしたヒューマンドラマ、サスペンスという紹介だったものですから、ジェイクがまた裏で悪だくみをしてお金儲けするような悪人話だと思いきや、中盤から一気にオカルト風のホラーな映画に変貌したんでビックリ仰天しちゃいましたよ。
映画はアート業界を舞台に、ギャラリーや画商、芸術批評家、といった直接作品とは関係ない人物達の手によってアートが商品となりお金儲けの道具として莫大な金額に変化していく舞台裏と、その人間模様や駆け引きが描かれていきます。
このオープニング場面の展示会で様々な人物、立場、職種の人間が入れ代わり立ち代わり登場するのですが、それぞれのキャラクターや関係の紹介がごちゃごちゃしている為、全体像を把握するのに少し時間が掛かってしまいました。
そんな中、画商ビジネスで成功を夢見るジョセフィーナが同じアパートに住んでいた老人ディーズの死去によって、彼が描き残した大量の絵画を発見。彼女は「自分が死んだら作品は捨ててほしい」という遺言を無視してアート界に紹介してしまった事から様々なことが巻き起こってしまいます。
その不思議な魅力を持つ絵をめぐってのサスペンスになると思いきやです、なんと絵に魅了され、利益を得ようとした人物が不思議な絵の力によって次々と殺されていく事になるという、前半と後半では全く別の映画のような展開を見せる作品です。
監督自身、映画「ザ・プレイヤー」のような作品と公言しているように、アルトマン監督の群像劇にホラー映画をブレンドしたような作品というのが本作を表現するのに適当かも知れません。
ただ、ホラー映画を期待するには少々怖さが薄いというのも事実で、映像として面白い部分や血が噴き出る派手さはあるものの、さほど恐怖という所までは結び付かない中途半端さがあります。
しかし前半で描かれる金儲けとしてのアートシーンや、それに群がる欲望に満ちた人間のドラマ、そして時折挟まれるブラックなジョークという映画の流れを考えると、あえてカリカチュアした金儲け風刺ドラマとして観る事も出来ます。
芸術を生み出す作家を置き去りに膨らんでいくビジネスと金額、アートシーンに留まらず創作活動をつづける多くのクリエイターに共通するテーマも含まれています
アート評論家を演じるジェイクは本作でバイセクシャルなモーフを絶妙な物腰で表現していて見事な演技力を見せてくれています。 彼の恋人役で、事の発端となるジョセフィーナを演じるゾウイ・アシュトンという女優さんは正直微妙な感じでしたね。
やり手画商のロードラを演じていたのがレネ・ルッソ、「リーサルウェポン」のイメージが強かったせいか、気付かないうちに時間って経つんだな~とその見た目からつくづく感じてしまいました。そしてあのジョン・マルコヴィッチと顔面凶器のトニ・コレットも出演されているという豪華さです。
不明瞭なアートシーンに価格を付ける芸術界の裏側を皮肉った、ブラックでホラーな作品です。 ラストもホラー的でありながら色々な含みを感じさせる絶妙なエンディングとなっておりますので、機会がありましたらご覧になってみて下さいませ、です。
では、また次回ですよ~!