横溝正史の同名推理小説の映画化で、地方の由緒正しい旧家で行った“密室殺人”を描いた推理映画。脚本・監督は「餓鬼草紙」の高林陽一

 

 

 

       

 

 

 

               - 本陣殺人事件 - 監督 高林陽一 原作 横溝正史

 

 出演 中尾彬、田村高廣、新田章、 高沢順子、常田富士男、東野孝彦 他

 

こちらは1975年制作の 日本映画 日本 です。(106分)  

 

 

 

 

  山間の集落、広い敷地のある一柳家は江戸時代から続く旧家。 事件は長男の賢蔵と久保克子の婚礼の日、恙なく終わった式後の未明に起きました。 離れに休んだ若夫婦の部屋から、克子の悲鳴があがったのです。 駈け付けた家族が見たものは、日本刀で斬りつけられた克子と側に倒れる血まみれの賢蔵の姿でした。 枕元には琴、金扉風には三本指の血痕、そして兇器の日本刀は、庭の石とうろうの根元に突き刺さっていました。

 

 

 

 

離れには門も錠もかかっており、庭には昨夜から降った雪の上に足跡一つ見当たらない、完全なる密室殺人​​​でした。 やがて、この「本陣殺人事件」を担当した磯川警部により捜査が行われる事になりますが、捜査に不安を感じた克子の親代わりである叔父・銀造は、友人である私立探偵の金田一耕助に捜査を依頼します。 複雑怪奇な人間模様に絡められたこの事件を、果たして金田一は解決することができるのか​​​​​​、、。 というお話です。

 

 

 

 

私が大好きな金田一耕助映画の変り種作品として有名な本作。 地方に住む私は何故か本作を公開から数年後、二本立ての一本として小学生の頃に劇場で観た覚えがあります。 多分、「女王蜂」だったような、、地方あるあるですね。

そんな市川崑+石坂浩二​による決定版金田一が登場する一年前に作られた本作は、時代設定を現代に変更、当然金田一耕助も現代風にアレンジされ、そのファッションはGパンに揃いのパッチワークが施されたベストにサングラスというナウいいで立ち。 

 

 

 

 

このGパン金田一として後世に残る演技をするのが顔面圧の中尾彬。 現在のアクも当時は控えめで、原作イメージに固執しなければそれなりに探偵に見えなくもありません。本作の醍醐味は密室殺人の謎、トリックの意外性とその仕掛けの面白さが横溝作品の中でも突出していて、それが実現可能かどうかはさて置いて、まるでピタゴラスイッチを見ているかのように日本的な道具を利用した独創的なトリックを視覚的に見せてくれるのが本作の面白い所です。 そういったヴィジュアルの仕掛けと、ATG的な映像表現が相まって、ミニマムなこのお話を独特な映像美で魅せてくれています。

 

 

 

 

時代を現代にしたためその動機にやや弱さを感じる部分や、説明不足、重要な遺体が唐突に発見されたり、後半の見せ場である金田一によるトリック再現が別の人物の回想と繋げて省略されていたりと、探偵金田一の活躍を見たい人、推理劇を楽しみたい人には残念に感じる部分は多々ありますが、田村高廣のキャラ作りによる不気味さや、横溝作品特有の日本的な因習感と映像美は、市川版とはまた違った面白味があります。中尾金田一より、賢蔵田村と鈴子役高沢順子の方が印象に残る作品でしたが、そのトリックは一見の価値があります。 出来れば横溝正史シリーズの古谷一行版も併せてご覧頂ければと思う私でありました、、。

 

 

 

 

 

 

そしてもう1本のミステリー作品

 

 

1957年に刊行されたアガサ・クリスティの推理小説、マープルシリーズの長編第7作目「パディントン発4時50分」の映画化作品

 

 

 

 

 

 

     「ミス・マープル/夜行特急の殺人」 - MURDER SHE SAID -

     

        監督 ジョージ・ポロック  原作 アガサ・クリスティ

 

出演 マーガレット・ラザフォード、アーサー・ケネディ、ソーリー・ウォルターズ

 

こちらは1961年制作の イギリス映画 イギリス です。  (86分)

 

 

  列車に乗っていたミス・マープルは隣の線路を並走する列車の車窓に男が女の首を絞めて殺している瞬間を目撃。翌日の朝刊にそれらしき記事が見当たらないことから警察に事件の経緯を話しますが、警察の捜査では列車内はおろか線路周辺でも死体は発見されませんでした。ミス・マープルは、殺人犯は列車内で絞殺した死体を列車から投げ落としたと考え、ブラックハンプトン駅の手前で線路が大きくカーブする地点にあるクラッケンソープ家が所有するラザフォード・ホールがその場所であると推理し、、。

 

 

 

 

というお話ですが、大まかに原作をなぞっているものの、映画用に大きく脚色された本作では、マープル自身が目をつけた屋敷にメイドに扮してして潜入捜査する事になるという展開になっています。 主人公マープル含め音楽から映画のトーンもとってもコミカル潜入先でのメイドぶりや屋敷の主人との掛け合いがとってもユーモラスでキュート。アガサ・クリスティ的なミステリーの推理も楽しみながら、映画独自のマープルが楽しめる作品であります。

 

機会があれば一度ご覧になってみて下さい。 ではまた次回ですよ~! パー