映画 DISTANCE/ディスタンス
3年前にカルト教団が起こした殺人事件の加害者遺族である4人の男女は、1年に1度再会し、遺灰が沈む湖で手を合わせることにしていた。その年、湖から帰ろうとする4人の車がなくなるというアクシデントに見舞われた彼らは、同じくバイクをなくした元信者の青年とともに、かつて信者たちが暮らしていたロッジで一夜を過ごすことになる、、。
こちらは2001年制作の 日本映画
です。 (132分)
こちらでもご紹介した 「万引き家族」 「ワンダフルライフ」 の 是枝裕和 監督の長編
3作目の作品で、カンヌ国際映画祭 コンペティション部門の招待作でもあります。
出演者は 井浦 新、伊勢谷 友介、寺島 進、 夏川 結衣、浅野 忠信、りょう、遠藤 憲一
という、今となってはかなり豪華なお名前が並びます。
ドキュメンタリー出身の是枝監督らしい実験的なこの作品、かなり余白をもたせ
た演出によって、演者達から多くアドリブの言葉とアクションを引き出し、静かなが
らも緊張感のある作品に仕上がっています。
カルト教団 「真理の箱舟」 が無差別殺人事件を起こして3年、加害者で実行犯の遺族
4人は、その命日に集まって遺灰を撒いたとされる奥深い山間の湖に慰霊に訪れます
しかし、乗って来た車が盗まれてしまいます。
そこに居合わせた元信者である坂田の案内で実行犯たちが潜伏していたロッジで一夜
を明かすことになります。そう、これはただ一夜をロッジで過ごすというだけのお話
ですが、それぞれとり残された遺族が加害者となった家族の居たその場所で、そこに
至ってしまった過去に向き合う姿が紡むがれてゆきます。 ![]()
映画を観れば、これがオウム真理教のサリン事件から着想している事は明らかですが
この作品の面白い所は被害者ではなく 加害者側の実行犯遺族から描かれている点で
す。
現実世界に居場所を見失ない、教団にしか真の家族を見い出せなかった加害者夫、
妻、兄弟、という身近な関係性にいながら、教団へ傾倒していく彼等を食い止める事
が出来なかった無念さと、心にぽっかり空いた大きな穴。
その穴を埋める為に理由を探しますが見つけられない無力感。 加害者の遺族という
だけの、それぞれ異なった環境の集団が、疑似ではあるものの家族のような関係にな
っていく姿が皮肉に映ります
ドキュメンタリー的な手法で、社会とそこに暮らす家族を捉えた本作は是枝監督の作
家性が色濃く出ている作品ですが、実験的な演出の分、観ているこちらに多少の寛容
さを求められます。
映像にも演出にもリアリティを求めるあまりかなりの間延び感があり、その作品のテ
ンポに浸れるか否かで映画に対する印象はだいぶ違ったものになります。手持ちカメ
ラによるブレと、自然光、聞き取り辛い言葉。 個人的には伊勢谷友介の 不自然な自然
さが慣れるまでノイズになりましたが、これもそれぞれの好みでございます。
逆にそのアンバランスさが、違った生活環境で一時的に集まった他人 というリアルな
空気感を生みだしてもいました。 その他人の集団が核心を突かないまま、当たり障
りのない甘噛みの会話をつづける光景が、妙にリアルに感じた私でありました。
そろそろのエンドロールかな?と思っていた時、急に映画的な展開が訪れます。元信
者坂田が、親しくしていた信者の弟、敦に 「ところであなたはホントは誰なんです
か?」 と訊ねるのです。 ここまで淡々と進んできた物語が一転、サスペンス映画に
変貌して、観ていた私はゾッとしました。
俯瞰で観ていた私達も、実は真実
なんて何も分かっていなかったと思い知らされた瞬間でもありました。
登場人物の中でも、その時、その時で自分の都合の良いように言い訳して逃げる坂田
に、一番人間らしさを感じてしまった私でありました。
やたら大きな笛と、盗まれた車の行方が気になりましたが、車という移動手段が消え
るという事も、この遺族の心的状況を比喩しているのか?とも思いましたが、やはり
気になるのでした。それと、物語に直接関係ない立ち食いそば屋のシーンが好きでし
た。良い映画って、何故か食事シーンが印象深かったりしますね。
最後に登る炎に希望を見るか、絶望を見るかは、それぞれの解釈に委ねられますが、
個人的には希望の炎として捉えたいものであります。 あくまで希望ですが、、。
被害者と加害者、その家族、他人、個人と社会、それぞれの距離感と隔たりの隙間を
埋めようと模索する人達のドラマであります。興味がありましたら、この機会にでも
ご覧になってみてみて下さいませ、です。 ![]()
では、また次回ですよ~! ![]()


















