noteを通じた交流を経て、テオとサラは放課後、二人きりで話す時間を持つようになった。といっても、大抵は学校の隅の静かな場所や、人の少ない図書室の奥の席だった。そこは、二人にとってのささやかな「秘密基地」のような場所になった。
最初はnoteの記事について話すことが多かった。テオが書いた文章の構成について、サラがもっと読者の興味を引くためのアイデアを出したり、サラが書いた少し哲学的な内容の記事について、テオが素朴な疑問を投げかけたり。
「この部分、すごく考えさせられました。でも、僕にはちょっと難しくて…」テオが率直に言うと、サラは優しく噛み砕いて説明してくれた。「ごめんね、たまに熱くなりすぎちゃうんです」と、照れたように笑うサラの姿は、生徒会長としての威厳とはまた違う、年相応の可愛らしさがあった。
次第に、二人の会話はnoteのことだけにとどまらなくなっていった。学校生活の悩み、将来への不安、好きな音楽や映画の話。お互いの秘密の趣味を打ち明けることもあった。テオは、誰にも言えなかった、深夜にこっそり描いている下手なイラストのことや、いつか自分の物語を書いてみたいという夢をサラに打ち明けた。サラは、意外にも熱心なアニメファンであることを告白し、テオを驚かせた。
「生徒会長だからって、真面目なことばかり考えているわけじゃないんですよ」と、少し顔を赤らめながら言うサラに、テオはますます親近感を覚えた。
ある日、テオは最近書き始めた、少し長いなフィクションの物語をサラに見てもらった。それは、受験を控えた少年が、不思議な力を持つ少女と出会い、様々な困難を乗り越えていくという、典型的なライトノベルのようなものだった。
読み終えたサラは、真剣な表情で言った。「テオさん、この物語、すごく面白いです。キャラクターも魅力的だし、展開もワクワクします。ただ…もう少し、主人公の心情描写を深く掘り下げてみると、もっと読み手の心に響くと思います」
サラの的確なアドバイスに、テオはハッとした。自分では気づかなかった欠点を指摘され、改めて自分の文章を見つめ直すきっかけになった。
それから、テオはサラに自分の書いた物語の断片を見せるようになった。サラはいつも注意深く読み、時には厳しい意見も言ってくれたけれど、その根底にはいつも、テオの才能を伸ばしたいという温かい思いやりがあった。
まるで、二人は秘密の編集チームのようだった。放課後の秘密基地で、お互いの書いたものを読み合い、意見を交換する。そんな時間が、テオにとっては何よりも貴重なものになっていった。
そんな中、サラがふと、予期せぬ提案をした。「テオさん、私たちの書いたものを、形にしてみませんか?」
テオは目を丸くした。「形に…って、どういうことですか?」
サラは少しいたずらっぽく微笑んだ。「例えば…電子書籍として出版してみるとか」
テオは、サラの予期せぬアイデアに、言葉を失った。自分たちの書いたものが、本になるなんて、考えたこともなかったからだ。
続く