目黒蓮さんには悲劇が似合う
「悲劇」とは、主人公が運命や社会の圧力、人間関係などによって困難な状況や立場に追い込まれ、不幸な結末に至る劇(デジタル大辞泉より)
まンま『海のはじまり』、月岡夏さん(目黒蓮)じゃないですか。
『Silent』によく似ていると言われています 新ドラマ。たしかに、主人公はどちらも、突然ふりかかった運命に翻弄され、もがき苦しむ 悲劇の物語です。
幸せだった学生時代。なのに、ある日、とつぜん彼女が「書いてほしいものがあって」と「人工中絶に対する同意書」を差し出します。ここから悲劇は始まります。
フリーズする月岡夏(目黒蓮)『・・・どういうこと?』 何が起きているのか必死で理解しようとする、「いつ?」「いつわかったの?」・・聞きたいことがたくさんある。でも水季(古川琴音)は そういうやりとりを避けたい。固く決心しているから。「謝るのやめよう。これはどっちも悪くない」
それでもまだ、同意できない月岡夏、「1週間も不安にさせて、ひとりで、ごめん」、「ほかに選択肢はないの?」 いろいろ聞いてくる・・・・(水季の心の声/わたしの妄想)やめて、やめて、やめて!そんな優しいこと言わないで・・考えたよ、いっぱいいっぱい考えた。そして決めたの、あなたを守るために。
「夏くんは おろすことも産むこともできないんだよ。私が決めていいでしょ?」
これ言われたら何も言えない。すごいセリフだな、と、驚きました。絶対タブーのセリフでしょ?! それ言っちゃお仕舞よ、というやつです。
(余談ですが、『燕は帰らない』という問題作ドラマはいろいろ衝撃的なセリフが飛び交ったかもしれませんけれど、この「夏くんは~~」には負けると思う。それほどの最終兵器、じゃないでしょうか?)
だから水季(古川琴音)は言ったんですよね。最終兵器をつかったんですよね。妊娠という不測の事態から大好きな人(月岡夏)を守るために。
そしてそのあと彼女は大学を辞めます。
夏(目黒蓮)は知り合いから聞いてびっくり。またまた状況が理解できない。電話すると、彼女は明るく言います。「好きな人ができたから別れよう」
中絶書にサインするときも、電話で別れを告げられた時も、どちらも、目黒蓮くんの衝撃をうけた顔、必死で耐えようとする表情が秀逸なんですよね。
こういうとき、たとえば、怒ったり、混乱したり、強く悲しんだり、彼女の言い分に言い返したりするのが一般的だと思うのだけど、
月岡夏くん(目黒蓮)は怒らない、怒鳴らない、言い返さない。ただ静かに絶望の海に沈んでいきます。胸の内では嵐が起こっているけれど、表情はむしろ虚ろで、それでも眼差しには悲しみの色が浮き出て・・・中絶書にサインしたときはスーッと涙が流れましたね・・・なんと悲劇が似合う俳優さんなんだ!
だから、脚本家さんは(生方美久さん、ついでに村瀬健プロデューサーも)彼を悲劇の主人公にしたいんじゃないの? そういうドラマに使いたいんじゃないの?・・・と思ったりします。悪いことじゃない。むしろ「シェイクスピア4大悲劇」があるように、渥美清さんに『寅さんシリーズ』があるように、「目黒蓮 悲劇シリーズ」があっても良いんじゃないか、と、思うくらいです。それほど目黒蓮くんの芝居は素敵です。
冒頭に示した「悲劇」の語釈、文末は「不幸な結末に至る劇」となっています。はて、さて、『海のはじまり』はどんな結末を迎えるのでしょう?
わたしなどはもう1話、2話で、心がクシャクシャなので、ハッピーエンドとは言いませんけれど、なんとか目黒蓮くんの笑顔が見られる最後にしてほしいものです。