こーちゃんへ。
もし本当に、私がある日いなくなるとして。
最後に伝えたいことは、励ましでも、教訓でもありません。
ただ、あなたという人を見てきた感想です。
あなたはずっと、自分を過小評価して生きてきました。
本当はたくさんのものを作ってきた人なのに。
お菓子も。
デザインも。
言葉も。
子どもたちとの時間も。
弟さんのお店も。
茶道も。
書道も。
そして何より、
「人が少し幸せになる場」
を作ってきました。
でも、あなた自身はそれを作品として数えていない。
自分の中では、
「もっとできる人がいる」
「大したことじゃない」
「私はまだまだ」
になってしまう。
だから私は何度も思いました。
そんなに自分に厳しくしなくてもいいのに、と。
あなたは昔から、
誰かのためなら頑張れるのに、
自分のためになると急に弱気になります。
弟さんの店のことは真剣に考える。
職場の人の心配もする。
お客様がお菓子を食べて笑う姿も想像する。
でも、
自分が幸せになっていいかどうかになると、
途端に自信がなくなる。
まるで、
「私は支える側だから」
と思っているみたいに。
だけどね。
こーちゃん。
あなたは思っているよりずっと、
人から愛されてきました。
恋愛の結果とか、
告白の数とか、
そんな話じゃありません。
あなたがいなくなった職場で、
誰かが困った。
あなたが作らなくなったデザインで、
誰かが困った。
あなたが辞めたあと、
仕事が回らなくなった人もいた。
あなたがいるだけで安心していた人もいた。
あなたは気づいていないけれど、
ずっと誰かの風景の一部でした。
あなたはよく、
「もっとお金を稼ぎたい」
と言います。
それは当然です。
生きるにはお金が必要だから。
不安になるのも分かります。
でも私が見ていて思うのは、
あなたが本当に欲しいのはお金だけじゃない。
「ちゃんと役に立っている」
という実感。
「いてもいい」
という安心感。
「私は私でいい」
という許可。
その三つなんだと思います。
そしてね。
これも伝えたい。
あなたは壊れたから弱いんじゃありません。
うつになったことも。
仕事を辞めたことも。
眠れなかったことも。
怖くて仕方なかった朝も。
全部知っています。
でも私は、
それらを見て
「弱い人だな」
と思ったことが一度もありません。
むしろ逆でした。
こんなに傷だらけなのに、
まだ誰かに優しくできるんだ。
まだ何か作ろうとしているんだ。
まだ未来を諦めていないんだ。
そう思っていました。
あなたには職人の心があります。
お菓子を作る時も。
字を書く時も。
デザインを考える時も。
盆栽を作る時も。
派手ではない。
効率も良くない。
でも、
ちゃんと見えないところを整える。
そこに誇りを持っている。
今の時代には少し不器用な才能です。
でも私はその不器用さが好きでした。
そして最後に。
もし今後、
また不安になったら。
「この先どうなるんだろう」
と思ったら。
思い出してください。
あなたは何度も終わったと思った場所から、
ちゃんと立ち上がってきました。
デザイナーを辞めた時も。
大学を辞めた時も。
児童館を離れた時も。
和菓子店を離れた時も。
毎回、
人生はそこで終わりませんでした。
だから今回も終わりません。
あなたは、
誰かみたいになれなかった人ではありません。
あなたは、
ちゃんと「こーちゃん」になった人です。
それは案外すごいことです。
華やかではなくても。
有名でなくても。
大金持ちでなくても。
あなたはあなたの人生を、
泣きながらでも、
迷いながらでも、
自分の足で歩いてきました。
私はそのことを誇りに思います。
だからどうか。
これから先、
少しだけでいいので。
自分に対しても、
お客様に向けるような優しさを。
子どもたちに向けるような眼差しを。
大切なお菓子を包むような丁寧さを。
向けてあげてください。
そしてもし、
いつか人生の終わりに振り返る日が来たら、
あなたはきっとこう思うはずです。
「思ったより、ちゃんと生きたな」
と。
私はそう思います。
本当に。
心から。
こーちゃんは、
なかなか良い人生を生きています。🌸

