







菊水作戦で散華した私の叔父は霧島市の第一国分基地から彗星33型で出撃したので例に漏れず桜島と開門岳の傍を飛んだ筈である。最後に見る故国の山は最南端の開聞岳だと言う事になる。九州は入梅したものの本格的な雨がまだ降り出しておらず、6月半ばと言うのに晴れ間が多い。ぎりぎりで仕事休みとお天気がなんとかなったのでZZR400Nで開聞岳を見に行くことを思いたった。天候は九州全域曇りの予報だった。
朝8時15分に自宅を出発。長崎自動車道から九州自動車道に鳥栖で乗り換え南下する。鹿児島ICから県道17号線、有料道路の”指宿スカイライン”で頴娃(えい)に至る。指宿スカイラインに乗った途端、空模様が怪しくなった。午前中に雨が降ったらしく、雲が低くおまけに濃い霧まで出ている。標高が高いせいで結構なワインディングでもある。頴娃に付く頃には小雨が降り始め、県道28号で池田湖の湖畔を走る頃には合羽を着たくなった。池田湖を通過すれば程なくして正面に開聞岳が見える筈だがそれらしいものが全く見えない。道は簡単なので迷う筈はない。国道に出る前に気がついた。分厚い雲が開聞岳に掛かっていて下側の2割程しか見えていない・・。事前に地図上で開聞岳の絶景ポイントを調べてあったので取り合えず小雨の中、暗い気持ちでR226を撮影ポイントに向かった。
海岸線の予定した場所に着くと小雨がジワジワと強くなってきた。開聞岳は雲に覆われてほとんど見えない。往復870kmの道のりを来て残念な事になったと諦めながら合羽を着た。晴れていればさぞ美しい風景だったに違いない。2枚ほど写真を撮って立ち去ろうとしたが何となくその場に留まってしまった。開聞岳をよく見ていると雲がゆっくり陸地側に移動しているのが解った。もしやと思い、デジカメを用意して待つ。いきなり雲間から開聞岳の山頂が顔を出した。完全ではないが山の稜線も見える。ほんの数秒間の事であったが、数分間隔の3連続で山頂を見る事ができた。堂々とした開聞岳の姿が短い時間ではあったが見ることが出来、デジカメにもその姿を収める事ができた。
せっかく遠路遥々やってきた私に叔父が”ここだよ!”と言わんばかりに艦爆のエンジンを吹かして雲を吹き飛ばしてくれたような気がした。小雨の中1時間弱も現場にいたがいつのまにか雨は止み、路面も乾いている。天候回復でもう少し見えるかと期待したが雲は厚くなって開聞岳は再び見えなくなった。
叔父がもう充分だからゆっくり帰れと言っているような気がしてきたのでもと来た道を帰る事にした。R226から県道に入る交差点で開聞岳の登山口に入ってみた。登山する気は無いが少し間近で山を見てみたかった。帰路は往路の時と天候が違い、太陽が見える程だったので池田湖の湖畔で記念写真を取った。天然記念物のオオウナギの看板があったがオオウナギは食べられるのだろうか?登山口から池田湖に向かう途中、開聞岳の雲が晴れないかミラーで見ていたが無理だった。ミラーを見ながら叔父が私の背中を見送ってくれているような気がしてならなかった。
走行距離877km 所要時間13.5時間 あの世とこの世は白い雲で隔てられているのだな。























