4月9日ソワレと15日マチネの2回

ミュージカル「VIOLET」を観劇しました。


キャスト表を見つけられなかったけど、

9日ソワレは

ヴァイオレット:屋比久知奈ちゃん

ヤングヴァイオレット:嘉村咲良ちゃん

15日マチネは

ヴァイオレット:三浦透子ちゃん

ヤングヴァイオレット:嘉村咲良ちゃん

でした。


幼い頃、事故(父親の斧の刃が飛んだ)で顔に大きな傷を負ったヴァイオレットが、

奇跡のテレビ伝道師に傷を治してもらおうと、バスで1500km(←日本なら本州の長さに相当する距離)の旅に出る話…

ですが、


ヴァイオレットの顔の傷をメイクで作ることはせず、視覚的に表現しない。

人種問題がガッツリ関わるけれど、メイクで肌の色を変えることもしない←これ、日本人キャストで理解するの、初見では難しかった💦


ヴァイオレットが旅立ったのは1964年で公民権法が成立した年。2回目観劇時、オープニングでキング牧師の公民権運動映像が映し出され、その前に立っているのがモンティを演じる東啓介くんと谷口ゆうなちゃんとsaraちゃんの3人で、あ、この舞台の黒人役はこの3人なんだな、と(2回目観劇にして)やっと理解できました。


劇中では最初のバス停車時間、カフェに行った場面のウェイターとのやりとりがポイント。東くんフリック、ゆうなちゃん演じる乗客、saraちゃん演じる乗客を馬鹿にし、まともに相手にしないウェイター。ここでわかりにくいのが、立石俊樹くんモンティの方がフリックより激昂してウェイターに掴みかかる(友人のために怒った?)ので、一瞬、モンティも黒人なのかな?と思う。その後、「去年まで(公民権法案の前)なら、こんなふうに話していたらフリックは牢屋にぶち込まれてた」…みたいに言うところ、15日は「俺たち白人と…」とハッキリ言ったけど、9日は「俺たち」だけで、白人という言葉なかった気がする(のでよくわからなかった)。


で、かなりキツい差別シーンだなぁと思ったのが、ヴァイオレットが旅の目的(伝道師の奇跡で顔の傷を治して美人にしてもらう)を話していた時、フリックが、「俺の顔と取り替えてくれよ。(傷があっても)白人なら軍で出世できるから)」と言ったのに対し、ヴァイオレットが「なんで私が黒い肌にならないといけないの?私は綺麗と思われたいのよ」と、さらっと差別発言をしてしまうところ。その後すぐ「私は傷つく気持ちが誰よりわかるプロなのに彼を傷つけてしまった…」と反省するけれど、何の悪気もなくサラッと出たことが根深いなーと思いました。(昔「サイドショー」というミュージカルで、シャム双生児姉妹の1人が愛を告げられ、「あなたは黒人なのに(私に愛されると思うの)?」と反応していたこと思い出しました。)


でもヴァイオレットは最初からフリックに好意を持ってはいる。その理由が「自分の顔を見ても、もっと醜いものをいっぱい見てきたように、何とも思ってない反応だったから」…と言うのが、ヴァイオレットのそれまでの人生の辛さを感じさせます。

黒人ということで差別されてきたフリックに対し、顔の傷で虐められたり同情されたり…に傷ついてきたヴァイオレットは引け目を感じることなく、2人は惹かれあったのだろうし、「ホテルの部屋に鍵がかからない」…と言ったのはフリックへの誘いだったらしいのに、何でモンティ(立石くん)とベッドインすることになるかなー。フリックとキスするところをホテル従業員(ゆうなちゃん)に止められ、(たぶん妄想の)老婦人(樹里咲穂さん)にはモンティと踊りなさいと後押しされ(たぶんヴァイオレットの深層心理)寝ることになったのか?モンティもヴァイオレットの悲しそうな顔を見たら何かしたいと言うくらいに優しい人ではあるんだけどね。白人だからハードル低かったのか?ヴァイオレットって自分の顔を気にしているので他人の顔への評価も厳しくて、最初の運転手の造作を厳しくチェックするんだけど、モンティは見たまま(何と言っても立石くんだから)イケメンだってことかな?


たぶん12歳から25歳まで、辛い人生を送ってきたヴァイオレットだけど、この旅は希望に満ちているから明るい。

屋比久知奈ちゃんの明るい歌声が魅力で、観客には普通〜にかわいく見えるし、男性2人も(利用してるのではなく)惹かれるのかなー?

三浦透子ちゃんは少し影があるような気がするけれど、旅の終わりには美人になる自信が揺るがない。予想以上に歌が上手くて驚きました。


ヤングヴァイオレットは観劇日選びで考慮しなかったので、2日とも嘉村咲良ちゃんになってしまったけれど、とても上手かった。少女時代の回想、現在のヴァイオレットの深層心理、傷ついて生きてきた時間の象徴…さまざまに解釈できる存在です。


フリック東啓介くんも、また歌上手くなったなー。「ジャージーボーイズ」を経て、自信をつけている感じがしますし、フリックの芝居は誠実な人柄を感じます。


モンティ立石俊樹くんも良かった。チャラいけど優しさを感じるので、まあヴァイオレットの気持ちもわからなくはない。ただモンティ周りの会話は私が理解できないことが多くて、グリーンベレーに入れたからベトナムに行けると喜ぶ理由、モンゴメリーと呼ばれるのを嫌がる理由…あとバイクの話?実はわかってない😓


樹里咲穂さん演じた老婦人はおせっかい焼きでヴァイオレットには煙たがられていたけど、悪い人じゃないよなー。若い女の子が男2人と一緒にいるなんて危なっかしいから自分のところに泊まれというのも良い人だと思う。別の娼婦役?と老婦人役の早替えには驚きました。


谷口ゆうなちゃんは、"Best Service for colored only"の宿の従業員で、白人のヴァイオレットを泊めることに難色示す。モンティには特に反応してなかったけど、黒人フリックと白人ヴァイオレットの関係自体を責めてたのか?ゴスペルシンガー役の方は見事な歌声でした。


saraちゃんはあまり台詞言っていた記憶ないんだけど、ミュージックホール・シンガーとしてたっぷり歌い、歌上手ー。「ファントム」を降板したけど、今年はいろいろな舞台出演も控えているし、心配しなくても大丈夫みたいですね。


森山大輔さんは、バスに乗る前のヴァイオレットに声をかけたシーンと、運転手以外はあまり印象に残ってないけど、途中ソロの歌は聞かせてくれました。


若林星弥くんは若くてかわいい顔してる。ウェイター、初体験の相手、宣教師アシスタント…と、かなり重要な場面で印象に残り、気になりました、またどこかの舞台で彼を見られたら嬉しいです。


原田優一くん宣教師…テレビで奇跡を起こすって、めちゃくちゃ胡散くさいし怪しい。後方に投影されるドヤ顔?変顔?踊りまくって、もうザ・原田優一ショー!でも、ヴァイオレットとの会話で、私は癒しのジュークボックスか!と怒り、トラックの荷台から宣教を始めたと明かす場面は本心の吐露で、最初から人を騙すつもりではなかったんだな…とわかります。


spiくんお父さん役は意外でしたが、とにかく良かった。

お父さんが苦しんでいないはずはないのだけれど、詫びることより、ヴァイオレットを強い人間に育てることを優先した?

ヴァイオレットは苦しみ、"綺麗な自分が他の男のところに行かないように、わざと傷をつけたのでしょう?"と思って生きてきた…それが顔以上に心の傷で、ラスト、夢か幻か妄想かわからないけれど、父の謝罪と本心を聞き、顔の傷も消えたと思い込む。自分が気にしなくなると他人の視線も気にならず(他人も何も言わない)、"私は綺麗と自信満々に振る舞う彼女"は、フリックから見て本当に綺麗だった…とのラスト(その後、真実を知るけれど)。結局、彼女はフリックと一緒に生きていくのか?ちょっと解釈に自信持てないし、ベトナム戦争というミュージカルファン的にはトラウマな不穏ワード(「ミス・サイゴン」や「ドッグファイト」)も出ているので、happily ever afterとも思えないけど、2人で光に向かえると良いなーと思います。


↓ロビーのフォトスポット?