日生劇場で「王様と私」を観劇しました。


子役キャスト表を見つけられなかったけど、たぶんこちら↓のはず。


私が「王様と私」を観るのは1999年の一路真輝さんアンナ&高嶋政宏さん王様の版と、2019年のケリー・オハラさん&渡辺謙さんの来日公演版に次いでの3回目


…なのだけど、これってこんなに面白いミュージカルだったっけ😳❓もちろん、これまでも良い作品とは思ってました。古き良き名作としてリスペクトを持って、名曲を謹んで拝聴させていただく…という姿勢で観ていたけど、そんなに(笑えるという意味で)面白かったという記憶ない。それが今回は1幕なんてずっと笑いに包まれて、本当に同じ作品?と思ってしまったくらい。小林香さん演出のマジックでしょうか?


まず主役2人のキャラクターが良い!


開演すると、オーバーチュアの途中で幕が開き、船の上のアンナ(明日海りおさん)登場。白いドレスに帽子、パラソル…フランス人形みたい😍!手紙を読む表情に新しい生活への決意と期待が感じられます。オーバーチュア中に主役顔見せって斬新。

本編スタートし、息子との会話が始まると、かわいい外見と裏腹に、中身はかなり男前。怖い時は口笛を吹いていれば強くなれると教える(この口笛が、王様のラストシーンに繋がり泣けた😭)。

王宮に着くと、家を与える約束を忘れたと言う王様に対して約束を守るよう主張し、一歩も引かない。賢く気品ある貴婦人でいながら男前〜な中身がただただカッコ良い。歌うと綺麗なソプラノ…「マドモアゼル・モーツァルト」の頃よりずっと綺麗な高音♪それでいてコミカルで、こんな素敵なコメディエンヌでもいらしたのかーと再発見。頭が高いと言われて最後は寝転がってしまうところも可愛すぎたー。


北村一輝さん王様も本当ーにチャーミングでかわいい🥰誰?北村一輝さんを王様にしようと考えた方?見る目ありすぎ✨歌はたしかに大変で、この日は一部歌詞がとんでしまったけど😱それも許せる。周囲が植民地になる中、国を守るために近代化を進めながらも、これまでの伝統や慣習を急に変えられない転換期の王様。悩むことも怖いこともたくさんあるのに弱みを見せられないってそりゃあーストレスマックスだったことでしょう。病で倒れるのは急だけど優しい方だから心身のアンバランスに限界が来たと思いました。


これはミュージカルには珍しく、"主役にロマンスが生まれない舞台"といわれてきたけど、明日海アンナのユーモアと北村キングの愛嬌が相まって、なんとも言えない2人の空気感が微笑ましくも愛おしいです。クライマックスは「Shall We Dance?」。アンナの歌、1人ダンスから王様と手を繋いで踊る。王様が手の位置はここじゃないと腰に持っていくのがセクシー💕また、ここのドレスが本当ーに素敵で、上品なピンクラベンダーの色味、絶妙な艶感、重みもあるのに回ると軽やかに大きく広がるドレープ、衣装さんの素晴らしい仕事に拍手です👏


木村花代さんチャン夫人も良かった。明日海さんが元宝塚トップなら、花代さんは元劇団四季主演女優の存在感。「Something Wonderful」の超高音ソプラノが綺麗ー。アンナが西洋の賢い女性代表であることに対して、チャン夫人はアジアの賢夫人として凛として素敵。シャムが近代国家であることを証明するため、皆"ドレスを着て靴を履き、ダンスを踊ろう"というアンナの策は(日本の鹿鳴館みたい)私も疑問だったので、チャン夫人がチクリと批判してくれたのは小気味良かったです。


朝月希和さんタプティムも綺麗なソプラノと寂しげな表情、佇まいがピッタリ。ソロも、竹内將人くんルンタとのデュエットも素晴らしかったです。私は朝月さん初めましてだったのですが、元宝塚娘役さんで、すでに京本大我くん主演「シェルブールの雨傘」でヒロイン演じていたのですね。


小西遼生くんクララホム首相、今拓哉さんオルトン船長、中河内雅貴くんラムゼイ卿は、もったいない使い方だったなー。1人3役やっても良かったくらい、それぞれの登場シーン短い。でも、この顔ぶれが参加しているという贅沢さが必要だったのでしょうねー(重みが違います)。


子どもたちは大活躍。特に皇太子・立石麟太郎くんとアンナの息子ルイ・木村亜有夢くんが、喧嘩しても互いにすぐに謝罪し、折れない大人たちにあきれているところなど、(役としても役者としても)頼もしく、将来が楽しみと思う場面です。

ラストシーンの皇太子の宣言も見事すぎて、この子の名前は覚えておかねば、と思いました。


この作品って元々、悪気はないんだろうけど"西洋と東洋を比較し、東洋を揶揄する意識を綺麗な歌とダンスでコーティングしている"ようにも思っていたので、小林香さんが演出するのは意外でした。小林さんと言えば、芸術の弾圧とか、貧困問題とか、ジェンダー問題に切り込む社会派の演出家と思っているので、こんな"古き良きミュージカル"を演出するとは思ってなかったんですよね。

でも、実際に演出した舞台を観ると、近代化に向かうアジアの政治的な部分が浮かび上がり、ある意味現代にも問いかけている?この古典を演出しても、やはり鋭い視点なのはさすがです。


それでいて装置や衣装は美意識高く、予算はしっかり使っている贅沢感あり。私の勝手な偏見で、尖った演出家って、何かシンプルな装置で役者の表現力と観客の想像力に頼ることを芸術と思ってるって印象ある(めちゃくちゃ偏見ー🤣)んだけど、小林さんの舞台は装置も贅沢(特に「リトル・ウィメン」と「リトル・プリンス」好きだったー)。

今回の王宮、階段、仏像…黄金だけどギラつかず上品で豪華。天井から垂れ下がる東洋風布もセンス良くて素敵。あと宝塚の銀橋みたいに、オケピと客席の間もアクティングエリアとして使われ、近くで観られるのはファンサービスとしても満点。

"ちょっぴりオツムに、ちょっぴりハートに"(in「モーツァルト!」)ではないけれど、考えさせる視点と楽しいエンターテイメントが揃った、全てに素敵な舞台でした。