今やYouTubeで大人気、日本でチケットが一番、売れてるバレエ団では?と思う谷桃子バレエ団。

特にこの日はプリンシパル・永橋あゆみさんが"全幕主役は最後にする"と発表されたので、チケットとるの大変でした。YouTubeメンバーシップの優先予約開始時にアクセスしても数百人待ち。かなりの時間かけて、やっと1階席の後方を確保しました。

当日、会場に着くと「満員御礼」の赤い旗。バレエ公演で、5階2300席あまりの東京文化会館でこれ(4公演全て完売)は、本当にすごい😳


永橋あゆみさん…とにかくお美しくて、まさにビジュアルが"プリマバレリーナ"。マンガに出てくる憧れの先輩を体現したような存在で、YouTubeで初めて観た時、こんな方、実在するんだ?と思いました。


アルブレヒト役の今井朋也さんと並ばれると本当にお似合い、背丈のバランスも良く、さすが長年のパートナー。一幕のジゼルのバリエーションも可憐だったけれど、それ以上に印象に残ったのが序盤のアルブレヒトとジゼルがラブラブ💕の幸せな場面。そこが記憶に残るからこそ、一幕ラストの狂乱の場が悲しい。あゆみさんの動き、表情は狂いながら幸せな場面をなぞっていて、ただ錯乱しているのではなく、幸せな記憶に閉じこもって不幸な現実に心閉ざしているんだ…と感じました。「ジゼル」は何度も観ているけれど、明確にこう感じたのは初めてだったかも?


二幕の精霊はあゆみさんのイメージそのもの。一つ一つのステップ、ジャンプに、これが(全幕)最後で、このジゼルが再び舞台に現れることはないんだ…と思うと、胸が締めつけられそうでした。


カーテンコールでは、あゆみさんの晴れやかな笑顔が美しかったです。

意外だったのが、多くのブラボーやスタオベや終了アナウンス後のしつこい(←失礼🙇‍♀️)拍手がなかったこと。

私は半ばスタオベが慣習になっている(←正直、義理でやるものではないと思ってる)ミュージカル観劇がメインで、ブラボーうるさいバレエ団公演も観ているので、あれ?と思ったのですが、そういう観客のアピール(←失礼🙇‍♀️)なくても拍手はとても温かく…。少し考えて、あ、そうか!と思いました。ここに集まった大半は、普段から舞台やバレエを観ている層ではなく、YouTubeで谷桃子バレエ団を知り、応援したいと足を運んだ"新しい客層"なんだ!新しい客層開拓は何より難しいことだと思うから、谷桃子バレエ団は素晴らしいことを成し遂げてるなぁと、あらためて思ったのでした。





ダブルISSA(小林一茶&海人)について


小林一茶(岡宮来夢くん)は、もうあて書きだろーっと確信するくらい、来夢くん以外、想像できない。

良い子で勇敢で真っ直ぐ…遊郭の女性たちに可愛がられ、パリの女性たちからも受け入れられている。継母、女衒、テレーズに言いよる男(あべにい)などの悪役っぽい人たちからもそれほど痛めつけられることはなく、船に乗っての渡航も語学習得もパリでの生活もスムーズ。あまりにご都合主義…と思うけど、この一茶(のキャラクター)なら皆に助けられて上手く行くのかも?とギリギリのラインで成立しているのは来夢くんだからこそ。結局、あの論文は小林一茶を愛していた絹子さんが俳句を織り交ぜて作った2次創作ではないかと思うのだけど、実際の一茶が辛い人生を送ったと知る絹子さんが、消息不明の10年間くらいのびのびと冒険させ、幸せにしてあげたいという想いではないかな?ふと、去年の大河「べらぼう」の"まことのことがわからないなら、できるだけ楽しいことを考える流儀"を思い出しました。そんな一茶を演じた来夢くん、オリジナル楽曲は音域ピッタリで、低音が生かされているのが嬉しい。序盤の「露の世は」シンプルだけれど"さりながら…"の後に続く無限の心情が伝わり、観劇後も耳に残ります。「希望と夢」、「これは運命」など、歌声も表情も豊か。

あと、衣装!日本にいる時の格子柄の着物も良いけど、パリでの白いフード付マントが少し王子様感もあり、とっても似合ってました(鶴丸?と思った)。


海人(海宝直人くん)は、一言で表現するとスランプ中のミュージシャン(ざっくりしすぎ)?実は私にとってのベスト(過去作)海宝直人は、ブレイク前に主演していた「セカンド・オブ・ライフ」のミュージシャン役だったので、今回、少しそれを思い出しました。

でも、海人の母親に対する拗らせっぷりは共感できないんですよねー。ISSAって芸名名乗ったのも自分だろうに?父が亡くなって20年、一茶の句を心の支えにシングルマザーとして頑張った母のことは理解してるだろうに?まあ、その矛盾やモヤモヤをカバーしているのが、苦悩する役経験豊富な海宝くんの表現力ですね。何かわからないけど、きっといろいろあったんだろうね、とこちらに推し測らせる深みがあり、納得させられてしまう。海人も、海宝くんでないと成り立たないキャラクターだったと思います。

時空を超えたファンタジーで、一番、謎なのは海人がパリの一茶になりかわっているところなのだけど、特に白マントを着ている時は彼が一茶(マントに魂?)?「やせ蛙負けるな一茶これにあり」を海人の口から言わせたところは、2人が一体となった感があります。

前半は一茶(来夢くん)中心の場面が多く、こちらが主役?と思う部分もあったけれど、さすが、終わりに近づくに連れて海宝くんの存在感がどんどん大きくなり、ラストは堂々たる主役に!

全員が「世界は生まれ変わる」を歌っている時、海人いないな?と思っていて、指揮者が振り向いたら海人!?ずっと黒っぽい衣装を着ていた海人が真っ白い衣装になっていたのも、魂の浄化を感じられます。劇中で生まれた歌の完成形をバーンと聞かせるのも"ありそうでなかった"名場面だと思いました。


ストーリーだけ表面的に追うと、トンデモでトンチキにもなりそうなところ、このクリエイター、スタッフ、出演者ならでは…の相乗効果によって、高みに押し上げられている舞台?言葉、音楽、出演者のパワーは全てを凌駕する…と思いました。




ダブルヒロインについて


この舞台、主役が2人のISSA(小林一茶と芸名ISSAの海人)で、その相手役となるヒロインも2人。

18世紀のフランス人女優テレーズと現代の振付師 兼 ガイドの(日本人を母に持つ)ルイーズです。


テレーズ(豊原江理佳ちゃん)は、史上最強ヒロインでは?

ジュリエット(ロミジュリ)のように運命の恋に落ち

マルグリット(MA)のように革命を鼓舞し

ヴァルトシュテッテン男爵夫人(M!)のように芸術家の背中を押す存在で

ヒロイン3人分の大活躍(さらに男装の麗人要素もあり)?

「私はナイチンゲール」、「俳句」の優しい声、「我らは戦う」の凛々しい声、「これは運命」、「いつかまた」の強い声…さまざまな美しい歌声を聞かせてくれて、

「言葉で人を笑顔にする戦い方もある」というメッセージなど、絹子さんの言いたかったことを伝える存在。

豊原江理佳ちゃんは4年前の「ファンタスティックス」で岡宮来夢くんの相手役を演じていて、その時はまだ初々しい2人だったのが、江理佳ちゃんはディズニー「リトル・マーメイド」の吹替も経て、堂々と大舞台の真ん中に立つ存在に。来夢くんも同様にグランドミュージカルで主演を務める俳優となり、大きく成長した2人が再び恋人役を演じているのを見て、感無量😭まさに、「これは〜運命〜」✨と思いました。


ルイーズ(潤花ちゃん)は、テレーズに比べるとソロで歌うナンバーもなく、比重が弱いかな?と最初は思ったのだけど、そのセリフの重要さ、作り出した場面の斬新さから、やはりテレーズ同様の素晴らしいヒロインでした!

"「小林一茶がパリに行った」って言うのは事実じゃないかもしれないけれど、フィクションだと知っていても人は文学やアートに涙を流したり、勇気をもらったりする。そこに事実を超える真実があるから"…みたいなルイーズの台詞。ここにこの舞台の全てがつまっている…と思いました。

それから本当に素敵だったのは、海人とルイーズのセッション?による「世界は生まれ変わる」誕生シーン✨メロディーは聞こえるけれど歌詞が浮かばないという海人に、ルイーズが弾いてみてと頼み、海人の演奏を聞いたルイーズが即興で踊る。それを見た海人が歌詞をつけて歌い、さらにルイーズの踊りが大きくなって…ダンスはコンテンポラリー系?か、私には良くわからなかったのだけど、とにかくこの場面大好きで、ワクワクすると同時に、ちょっと泣きそうになりました🥲15日のトークショーで来夢くんたちが「ミュージカル史に残る名シーン」と言っていたけど、まるっと同意です。このミュージカル、本当に今まで"ありそうでなかった"新しく素敵なシーン満載で、さすが藤田さん演出!と何度も思わされました。




お母さん(絹子さん)について…


この舞台、一茶がパリに行った!という大きな作りごとには、もはや(スケール大きすぎて)突っ込む気になれないけど、


絹子さんの設定にはちょっと突っ込みたい。


俳句の研究者って、家にいない、家族を顧みないってそこまで言われるほど、外での付き合いが多い職業?大きな賞をとってお祝いが続いていた時期に夫が病気になり、亡くなってしまった…ということは本当に不幸で、まだ子どもの海人にはショックだっただろうけど、あんなに恨まれなきゃいけないかな?海人は、母親から生き方を押しつけられたみたいに言ってるけど、自分の意志でミュージシャンやってるのでは?「Talk Talk Tokyo」が親の七光と叩かれたことで拗らせて、逆恨みして、さらに1幕ラストの「俳句は嫌い」に繋がるのだろうけど、スランプを全部、母親の責任にしているのはどうなんだろう🤔


でも絹子さん自身はとてもおおらかに息子の才能を信じてる。「一茶がパリに渡っていた」って、論文としてはあまりに荒唐無稽と思うけど、息子にこの一茶のように生きてほしい、素晴らしい言葉と音楽を生み出してほしいと願う祈りの手紙と考えると納得。パリへの旅は、母の愛を知るための旅だったのだと思います。


ダブルキャストの彩吹真央さんと藤咲みどりさん、どちらも愛情深い素敵なお母さんでした。


彩吹真央さんは存在自体が華やかで、確かにこんな研究者(学者)がいたらマスコミが持ち上げて、時代の寵児的扱いをするのも少しわかる(けど、俳句研究者がそこまで?という気もする)。とてもポジティブで、自分の死すら、息子の糧にしようとしていたのではないかと感じました。


藤咲みどりさんは、音楽座時代からダンスの名手として知っていますが、今回は歌のソロナンバーもしっとりと聞かせ、こんなに綺麗な声だったんだー!と驚きました。研究者らしい落ち着きもあり、地に足がついた感じ。でも、1幕ラストのダンスの軽やかさはさすがでした。


あと、言うまでもないけど、一茶のお母さん(クニさん)の歌はどちらも愛情に溢れていて、このお母さんだから、あの一茶が生まれたのね…と思います。あの歌を聞くと「亡き母や海見る度に見る度に」の句がより一層、心に沁みますね。




「ISSA in Paris」

小林一茶と海人に、遠くまで旅をさせ、大きな経験をさせることで素晴らしい歌の誕生に繋げたい…という意図はわかる…が…


正直、なぜパリ?と思いました。

2人が時を超えて出会うだけなら日本でも良いし、外国に行くにしても、他の国でも良いのでは?

またフランス革命…って、去年も「1789」と「二都物語」観たばかりなのに、ミュージカル関係者はどれだけフランス革命好きなんだ…😞と。


でも!


実際に観てみたら、この時空を超えて過去と現在のパリを対比させたからこそのドラマティックな場面あり、その完璧な流れに魅せられました。


まず、白(生成り?)衣装の18世紀パリの人々が窮状と怒りを歌い(ここまではそこそこ既視感ある🤭)、

一転、黒衣装の現代の若者たち(メインは木暮真一郎くん)が「年金改革絶対反対!」とラップで歌うデモ。

ここで、まず「おお〜!」と思いました。こんな鮮やかな対比、見たことない。


さらに素敵なグランドミュージカル感はその後、


曲調かわり3拍子のワルツ…夕闇迫り、パリがもう一つの顔を見せる…という流れで、18世紀と現代のパリ市民が共に同じ歌を歌う。これがとてもロマンチック、甘いメロディーで、辛い昼、現実があってもパリ市民は夜、甘い夢を見ることを忘れないのか(←あくまでイメージ)と思わせたところからの〜


一茶とテレーズの出会い💕

「これは〜運命〜♪」

ロミジュリか?

これぞグランドミュージカル✨

一部の隙もない完璧な流れ。


この一連のシークエンスだけでも過去にない新しさがあり、同時にミュージカルはこうじゃなくっちゃ!と思わせる安心感、陶酔感がありますね。