私にとっては2回目の「ライムライト」です。
1回目に観たのは初演時の2015年7月。
その時のブログを読み返すと何だか歯切れの悪い(私にしては辛口?)感想。その印象から2019年の再演時は気が進まずパスしたのでした。
でも今回は3回目の上演。クリエの舞台って1回きりのものが多い(私が再演熱望する「ラディアントベイビー」や「ゴールド」も、「デュエット」も、「トゥモローモーニング」etc.も1回ずつ)から、3回目って珍しいし、やはり名作なのかな?と足を運んでみました。
で、今回の観劇。
老芸人カルヴェロ(石丸幹二さん)が、ガス自殺を図ったバレリーナ・テリー(朝月希和さん)を助け、励まし、彼女が立ち上がるまでの1幕は淡々と進む感じ。
映画の名台詞集などに載っているであろう示唆に富んだ美しい言葉を石丸さんの美しい声で語られ、ありがたいお話…とは思えるのだけど、今ひとつ心が動かず。
市村正親さんや鹿賀丈史さんなら、どこかユーモアを交えて心を開かせ、開いた隙間にメッセージを投げ込んでくると思うんだけど、石丸さんは真面目なんだよねーと思っているうちに1幕終了。
そして始まった2幕だけど…
2幕は大きく心動かされました。
まず、空気を変えてくれたのが初参加のもっくん(太田基裕くん)ネヴィル!テリーと再会し、話しかける時のテンパった様子がかわいくて可笑しくて、1幕中、欲しいなーと思っていた笑いをもらい、こちらの心も緩みました。そこからシリアスな恋する二枚目男性に移行するのも自然で無理がない。先日、「ダンス・オブ・ヴァンパイア」のアルフレート役と発表され、また(「ライムライト」、「ストーリー・オブ・マイ・ライフに続いて)もっくん⁉︎と思ったけど、やはり上手い役者として起用されているんだろうなぁと納得しました。
朝月希和さんテリーのバレエは好きです💕ピルエットはシングルを稽古場面で見せたくらいで、オーディションや舞台場面に特別難しいパがあった訳ではないけれど、動きが大きくメリハリあり。バランセ→ストゥニュからシャッセ&グランパドゥシャと序盤で大きなジャンプを綺麗に決めて、華やかさを印象づけます。ポールドブラのパキッと(?)した動きは、バレエの腕として見るには少しアクセントが強すぎるけれど、その明快な動線が、迷いなくカヴァレロに求婚する彼女の性格を表しているように見えました。
保坂知寿さんのオルソップ夫人…四季時代は石丸さんの相手役(「アスペクツ・オブ・ラブ」や「異国の丘)だった知寿さんが老け役を演じて脇に回るのは勿体ないと思ってしまうけど、ガサツな中にも自然な温かさが舞台を支えているのですね。
吉野圭吾さんポスタントは、以前よりおとなしい感じ?特別に笑いをとるような特徴ある演技はなかったけど、石丸さんカルヴェロとの老人同士の友情を感じさせる芝居、セリフにホロリとさせられ、そう言えばこの2人のジキルとアターソン大好きだったな…と思い出しました。
そして石丸幹二さんカルヴェロ…偶々ですが、この日は石丸さんの59歳の誕生日だったそうで、やはりこの役には年齢の説得力が大事ですね。初演時はまだ50歳くらいだったならピンとこなかったのも無理はない(今もまだ若すぎるくらい)。そして観劇する私も、9年前は小学生の母で、まだ人生からの退場を想像したことはなかった。でも、今や息子も成人し、自分の仕事や趣味の幕引きについても考えはじめています。今ならカルヴェロの気持ちが理解でき、彼のラスト・ステージには涙溢れました。
ただ、舞台ラストについては、本編からカーテンコールへのタイミングが早すぎて、涙も引っ込むくらいでした。もう少し横たわるカルヴェロにスポットライトをあてて照明落としながらインストゥルメンタルの音楽を聞かせるくらいの余韻が欲しかった。1幕、2幕共に終わりが唐突で戸惑ってしまったのは初演観劇時と同じ感想です。