シアター・コクーンにて「アルカディア」を観劇。

研究者たちの話で、会話の内容が難しい~。
パンフレット内の堤真一さんのページには、「難しい話してるわぁ」と深く追求しなくて良いと書いてあるけれど、
ついつい、理解しようとして聞いてしまったので、頭はかなり疲れました(笑)。

劇構成が面白かったです。

同じ屋敷、同じ部屋の中で「19世紀」と「現代」が行き来する。

現代の人たちは、研究者たち
「バイロンによるチェイター殺人事件」を追うバーナード・ナイチンゲール(堤真一さん)
「シドリー・パークの隠遁者」を研究するハンナ・ジャービス(寺島しのぶさん)
「数理生物学」を専攻する大学院生ヴァレンタイン・カヴァリー(浦井健治くん)
それぞれの研究対象への想いは、とにかく熱い。

彼らが研究の拠り所にしているものは、19世紀の庭園設計図に描き込まれたトマシナ(趣里ちゃん)の悪戯書きだったり、サラサラと書いた数式だったり、本心ではない手紙だったり、日記だったり、狩猟記録だったり、デッサンだったり・・・

200年後の子孫たちの研究対象になるなんて思いもせずに、19世紀の人たちが残しているものが
2世紀後の人間を悩ませたり、喜ばせたり…。

19世紀に起きたことの(この舞台における)真実を知る観客には、
現代人たちの的外れの仮説、右往左往、一喜一憂がかなり滑稽にも見える…。

最初は、交互に描かれていた場面が、途中から交錯し、2つの時代の人々が同じ空間を分け合うようになっていく…カオスだけど、ちょっとワクワクする面白さでした。

以前からこのブログ読者の方たちなら、私がこの舞台を観に行った理由は芳雄くん&健ちゃん(StarS応援の一環として)だと推察されているでしょうが、

私的に一番印象に残ったのは、
19世紀のセプティマス・ホッジ(井上芳雄くん)と現代のヴァレンタイン・カヴァリー(浦井健治くん)という
別々の時代を生きて出会うことのない2人が、同じ数式?の謎を解く瞬間が、舞台上では交互に、ほぼ同時進行で描かれたところ…

芝居に全く接点はないながらも、舞台上では互いの存在を感じて、意識しつつ演じているのだと思いますが、ユニットとして数年活動してきた2人の、程よい距離感というか、空気感、リズムみたいなものが心地よく感じられました。

他では、堤真一さん、寺島しのぶさん、神野美鈴さん…いつか生の舞台で拝見したいと思っていた方たちの舞台を観ることができ、嬉しかったです。

堤さん演じるバーナードの軽さや熱さ、スピード感はエネルギッシュに話を進めるし、
寺島さんのハンナは賢く冷静、現代的な女性でカッコ良い、
神野美鈴さんのレディ・クルームは19世紀の制約の中での'愛’を求める人…セプティマスが想いを寄せているのが納得できる可愛らしい大人の女性でした。

趣里ちゃんのトマシナ・カヴァリーは、本当に可愛いかったぁ。
趣里ちゃんって、本当に15歳くらいなのかと思ったら、実年齢25歳で、あの有名人夫婦の娘さんなんですね(一度、ドラマで見てました)。
トマシナの早熟な天才性と、思春期の年頃相応の好奇心。
ある意味、200年の時を越えて、様々な人々を振り回す存在。

現代のガス・カヴァリーと19世紀のオーガスタス・カヴァリーの2役を演じた安西慎太郎くんは、途中まで2役を演じている意味がわからなかったのだけど、舞台上の時間が交錯し始めたとき、彼を見て、現代の場面と思ったら19世紀だったり、逆だったりとミスリードされ、あ…そうか…と騙されたことに気づくのもまた楽しかった。片方は台詞なしという制約もありながら存在感を発揮していたと思います。

難しかったけれど、意外と伝えたいことはシンプル?
いつの時代も、誰かを愛し、何かを追い求めずにはいられない人間というもの?
トマシナのその後の運命は明かされていて、人間は滅びていくものかもしれないけど。

ラスト・シーン…時を越えた2組のワルツは、ロマンティックで、ほろ苦く、切なく…美しい余韻を残しました。