算数の苦手な子に多いイメージ力不足 | 「衣食住育学」石川幸夫のブログ

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教育畑40数年、猫好き、子ども好き、音楽好き!幼児、小学生の算数指導用に、水道方式のタイルを独自開発。教育評論家・教育研究家・子育て評論家としても活躍中です。

「イメージ力があっての直観力」

■お母さんの不安 「このままで大丈夫?」

 子どもの成長にとって大切な非認知能力、そして、切実な問題に発展してしまう、認知能力の発達、どちらにも共通して重要なのが「言語能力:語彙数の獲得」です。更に、子ども発達過程で重要になってくるのが、言語力を基にした思考力に対して、もう一つの思考力である抽象思考です。幼児期、抽象思考と言えば「数」になります。他の物に置き換えて考える力、今目の前にないことでも想像できる力、そして、物事を論理的に考えられる力、幼児期の間に、私たちは、かなり高度な能力を身につけていくことに驚かされます。

 

 長い間、子どもたちの数・算数・数学と、幼児から中学生まで指導してきて感じることは、幼児期から系統的な数指導を学んできた子は、やはり、数学には苦手意識はなく、比較的、大学から就職先をみても理数系が多いという傾向を示します。医学の道に進んだ子、また、司法への道に進んだ子も、想像力や論理性に優れた面を見せていました。

 

 対して、算数の苦手な子、考えることが苦手な子は、イメージ力が弱く、先生方が算数の文章問題などで分かり易く説明するテープ図や、線文図の意味が理解できず、式にすることが苦手です。答えはわかるのに、解き方がわからない、答えがあっていれば良いという考え方も共通しています。そして、年長から低学年にかけては、計算も指を使って数える子が圧倒的です。この間の様子を聞いてみると、その殆どが、「数指導」ではなく、「数え方指導」になっています。昨日も、教材を求めに来られた方が、数のイメージや、計算のイメージができていないので、この先が不安だと仰っていました。少しの時間でしたが、計算のイメージについて、足し算と掛け算の違いについて、タイル教具。(水度方式という数・算数指導で使用)を使いご説明しました。20分ほどでしたが、足し算・引き算・掛け算・割り算・計算の決まり、面積までに及んでしまいました。そして、この間、一つも数字による説明は出てきていません。

 

 算数の苦手な子の特徴として、イメージができないことがあげられるのですが、ブロック・パズル・積木など、こうした物を作る遊び、そして、作ったものを壊す遊びが少ないことも特徴の一つです。子どもの遊びは、体を動かす遊びと、頭と手先指先を使う遊びに分けられます。どちらも大切で、それぞれ、空間認知能力を高めるところが共通しています。

 

 幼児の数指導では、数字などを使った抽象的な説明ではなく、タイルなどの具体物を使い、数を量としてイメージしていくことが分かり易いでしょう。直ぐに計算を教えたり、数字を教えたりすると、抽象思考に移行する説明がなされずいきなり、大人感覚で抽象思考にもっていっては理解もできないでしょう。幼児期から低学年指導という、学習の基礎を指導する際、こうした大人感覚で指導される方が増えているようです。いずれ交換法則を習うのだから、「2×3も、3×2も同じで良いだろう。」というのはあまり感心しません。何故、わざわざ、面倒くさい指導をするのでしょう。それは、答えがあっていればいいのではなく、その答えを導き出すための考え方が大切なのです。これを「思考」と言います。それも、文章問題では、その内容をうイメージし、物の経過や情景を頭に入れ、具体的な場面をイメージします。これを、数字と記号を使い「立式」という抽象化された「式」へと変換していきます。

 

 幼児教育、低学年教育を行う先生方は、子どもの将来の姿を想像し指導します。そして、物事の考え方、導き方など、その基礎となる部分を指導していきます。主に、言語であっても、数であっても「概念理解」を含めた指導を行っています。学校が始まる前、タイル教具を購入された小学校の先生がいらっしゃいました。「数を量としてイメージさせたいのです。」とおっしゃった言葉が印象的でした。最近、こうして、低学年だけでなく、幼児の算数指導に目覚めた先生が増えてきました。これは大変嬉しいことです。子育て中のお母さんやお父さんからも、「昔、タイルを使っていたので!」という嬉しいお言葉も頂戴しています。水道方式による「幼児の算数」を広めてきた私にとって、とても励みになります。