考えること | 「衣食住育学」石川幸夫のブログ

「衣食住育学」石川幸夫のブログ

教育畑40数年、猫好き、子ども好き、音楽好き!幼児、小学生の算数指導用に、水道方式のタイルを独自開発。教育評論家・教育研究家・子育て評論家としても活躍中です。

「質問の反芻(はんすう=繰り返す)」
 
 授業中に生徒達に向けて行う質問、投げかけられた生徒の反応がそれぞれ違います。ある生徒は即答し、ある生徒は首を傾げます。そんな中に、私の質問を何度も繰り返し声に出す子がいます。
 
 先生:「この計算はどこから始めますか?」
 生徒:「この計算はどこから始めますか。」
    「この計算はどこから始めますか。」
    「うぅーん、えーと、この計算はどこから始めますか。」
 
 質問を繰り返しながら、問題に取り組みます。最近、このように問題を繰り返し声に出したり、独り言を言いながら問題を解く子が増えてきました。色々と尋ねて見ると、自分自身思考力がないと言います。また、問題の理解に時間がかかるとも自己分析します。何度も問題を自分自身に言い聞かせないと問題の意味が解らない
ようです。だから、質問のことばを何度も反芻します。反芻する内、ことばの意味が少しずつ解ってきるのですが、その後の応え方が解らずまた質問のことばを繰り返します。ここで、焦らせてはいけません。そこで、問題の要素を分析し、幾つかに分けながら一つ一つを解いて貰います。最後に、それらをまとめて答えを導いて貰います。
 
 答えを導き出すまでの過程が解らない、つまり「解法までの手順」を指導する事が求められるかも知れません。解法の手順をアルゴリズムと呼びますが、実は、それ自体が思考の流れや過程ともなるので、学習には、機械的な計算であっても思考に絡むような質問は欠かせません。質問は、具体的な思考の道標となります。その道標を辿り、考え方をまとめていきます。計算問題でも思考力を付ける学習になります。また、質問とそれに対する答えは、全て声に出して行われます。思考を読む、まさに表面に出てこない思考を声に出し、その通りなぞっていく、思考のなぞり学習です。
 
 単純な質問から本質に迫る質問、この段階を踏むには、解りやすい計算問題などから指導するのが良いかもしれないと考えました。算数や数学では、タイルを使いより具体的に解説や質問を繰り返します。それは幼児も、小学生も、中学生も皆同じです。考える事の面白さを、また、子ども達には「わかった!」「できた!」という思考の達成感を味わって貰いたいと思います。算数や数学という学習は、思考の達成感を味わえる学習だと思うからです。タイルだけでなく、図も数多く書くように心がけます。テープ図、線分図、略画、正方形、長方形、三角形、円など様々な図を書き、説明して貰います。時には、積み木、パズルも使用します。考えて貰うには、こうした道具の活用も必要だと思うのです。反芻する子ども達は、思考する段階のスタートラインにいます。
 
 見た目と、実際の違いも思考の面白さを示してくれます。1Lマスと、1dLマスを用意します。事前に1L=1dLを説明しておきます。そして、本当にそれが正しいかどうか立証するのです。たぶん、皆さんはこの文面を通して、「そんなことは実験しなくてもわかる。当たり前の事だ」とお考えでしょう。1Lマスは、縦横高さが10cm×10cm×10cmの立方体です。対する1dLマスは縦横5cm高さ4cmの直方体です。この見た目の違いが、たとえ1L=10dLという情報を与えられても常識的判断を狂わすのです。事前に、確認をとります。
 「さて、1dLマス何杯で、1Lマスはいっぱいになるでしょうか」すると、「10杯」「9杯」「8杯」と複数の答えが返ってきます。
 実際に1Lマスに1dLマスで射水を入れていきます。途中で、再度確認をします。すると、何人かが10杯から8杯と変更してきます。こうして最後の瞬間を迎えます。表面張力も確認できるほど、感動的なフィナーレです。
 ことばには内言と外言があります。物事を考える際の内現、思うこと、考えこと、そして、思ったことを表現する外言、子ども達には、こうした内言と外言のバランスが必要なのだと思います。