見る絵と聞く絵 | 「衣食住育学」石川幸夫のブログ

「衣食住育学」石川幸夫のブログ

教育畑40数年、猫好き、子ども好き、音楽好き!幼児、小学生の算数指導用に、水道方式のタイルを独自開発。教育評論家・教育研究家・子育て評論家としても活躍中です。

「幼児の絵は…」
 
 殆どの学校が今日から夏休みに入ります。子ども達には、これまでは水の事故に注意を促していましたが、それ以外の注意喚起が必要になってきました。岡山で起きた女児行方不明事件から、我が国でも諸外国並みの登下校の管理を強化する必要が出てきたようです。我が国の安全神話がこのまま次第に崩れていくのでしょうか。
 
 今回は、幼児の絵について再び述べさせて頂きます。幼児が描く最初の絵は、殆どが何を描いているのかわかりません。スクリーブル(殴り書き)が始まる1歳~3歳は、言葉の意味や、ものの用途、関連などについてまだまだ未熟な時期です。大人の絵は、自分以外の人を意識して描く場合が多くみられます。対する3歳以下の幼児は、「自己中心性」の絵になり他の人の目は気にせず思うがまま描いていきます。
 最初の内は、線を左右、上下に描くだけの単純なものです。しかし、年齢が3歳近くになってくると絵に変化が出てきます。単純な直線に混ざり、曲線が登場してきます。線を意識すると言うことはとても重要で、視覚から入る情報を次第に脳が認識できるようになります。その情報のアウトプットを表現するのがスクリーブルです。そして、手先指先の神経が発達し、更に認識力が高まってくると、直線が曲線に、そして閉じた円形へと進化してきます。幼児の知的発達はこうしたスクリーブルからも見ることが出来ます。
 
 幼児が文字や数に興味関心を示す平均が3歳半と言われています。この時期はことばの意味が理解できる頃で、物事を形で表現できるようになってきます。それは、積み木であったり、パズルであったり、スクリーブルであったりします。このような視点で子どもの絵を捉えていくと、幼児期に大人と同じ芸術性を求めることが難しい事だということが理解できます。また、大人は、何を描いたか理解できないことから、幼児の絵は「聞いてあげる絵」という表現がされます。子どもに対して、「何を描いたの?」と聞くことから始まるのではないでしょうか。
 
 幼児の思考は「自己中心性」を持っていると言われています。(心理学者ピアジェ)それは、言語発達の未熟さ故のことだとも言われています。年齢が「つ」の取れる頃にさしかかると、見たものをそのまま描こうとします。それまでの子ども達の絵には、時として驚くべき表現がされる場合があります。大人では考えつかない絵が登場したりします。頭の中が透けていたり、お腹の中に食べ物が描かれていたり、子どもの絵の変化は、そのまま子どもの知的変化と平行していると考えて良いでしょう。「つ」の取れる時代、つまり、一つ、二つ、三つ、四つと九つ(9歳)までの子ども達には、視覚を通して、空間認知能力の発達が促されていきます。また、抽象思考と言うもう一つの考え方に大きな影響を与えます。
 
 絵に表すという知的行為は、平面図形的認識、空間図形認識の発達に大きな影響を与えていきます。位置関係や方向、上下、左右関係、そして平行垂直など感覚教育とも言える内容が詰まっています。こうして幼児の絵をみると、大人の趣味や芸術作品という見方ではない、教育の中で言語や数と違ったもう一つの学習があると言うことに気付かされます。幼い頃の絵は、文字でも、数字でもありません。自分の思いを絵で表現しているのではないでしょうか。今、お子さんが0~3歳であれば十分スクリーブルをさせて上げてください。勿論、幼児には、大いにスクリーブルをさせるべきだと思います。