ナンバー25 S F 的 小話 「密造品 」 | 堀切光男のエッセイ畑

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S F 的 小話「密造品」 二千 一年 ネットマガジンに掲載

 

「まもなく新世紀に向けて カウントダウンが始まります」

 

テレビからアナウンサーのうわずった声が ラーメン屋の店内に流れている。

 

「はいよっ,特製 年越しラーメン上がったよ」

 

オレはカウンターに居並んだ常連客の 前にアツアツのラーメンを並べて行く。

 

今夜は貸し切りだ。

 

「あっと、 まだ食べちゃあダメ だよ。 今夜は特別な物を用意しているんだ」

 

と、オレは隠し 金庫にしまい込んでいた物を うやうやしく 取り出すと

 

皆に 一つずつ,配った。

 

「うわあ、 本物かよ、 これ」

 

「この 匂い、この手触り。 どうやら本物のようですなあ」

 

「信じられない、 本物だ。 五十年ぶりにお目にかかったよ」

 

「私は もう死ぬまで、 これでラーメンを食べられないと諦めて いましたよ。

 

ありがとう、 ありがとう。 ああ、 生きててよかった」

 

( さあ、 オレが皆に 一つづつ 配った 物とは、 一体なんでしょう?)

 

つづく・・・・・です。



 

オレは湧き上がる 感嘆の声を 満足げに聞きながら

 

「しー、実は 密造品 なんだ。 自然保護 がやたら厳しい このご時世。

 

使い捨ての こんなものを 使っているのが、

 

バレたら サツにしょっぴかれるぞ。 くれぐれも内密にしてくれよ。

 

では、 各人 用意はいいかな」

 

と、 促した。

 

テレビからは一段と 大きな声が 流れてきた。

 

「さあー、 いよいよ3 0 0 1年 に向けてカウント ダウンです。

 

5 、4、 3 、2 、1、0」


 

それに 合わせて 一斉に 木製の ホンモノの 割りばしを割るいい音が、店内に

 

パチン、 パチン、 パチン と響き わたった。

 

( 了 )