ナンバー22 公募に応募 「山小屋と改名したい」 (ネット マガジン) | 堀切光男のエッセイ畑

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主にエッセイ。

公募に応募 「山小屋と改名したい」 ( ネット マガジンの公募は「店名の

 

由来」で あきらかに自分の店への愛着を期待したのだろう。 が、へそ曲がりの

 

ラーメン屋春ちゃんは、全く逆の切り口で、応募したのだ。

 

結果的には入賞したのだが、編集後記を読むと、かなり意見が分かれたらしい。

 

そして、このへそ曲がりに対して、副賞 として 一年間のエッセイ掲載を

 

与えてくれたのだ。 週刊なので、毎週一話。 一年では約五十話。

 

(お前の実力をみてやろうじゃあないか)と思っているなと へそ曲がりに取った 私は

 

まんまと タダで一年以上、百話まで エッセイを書き続ける羽目になったのだ。

 

ネタに苦しんで 、愚作も多いけど結構勉強になり,得るものも多かった。

 

現在、この ネットマガジンは消滅してしまっているけど、今は大いに感謝しています。)


 

(長くなりましたが、これからが 本文です)

 

「山小屋と 改名したい」 2001 年2 月 (ネット マガジン 掲載)

 

うちのラーメン屋の店名は(春 楽)とついているが、私は店名には

 

何の愛着も 無い。 そもそもが知人の店の店名だった。

 

二十三年前、私たち夫婦が晴れて店舗付き住宅を買った時、我われには

 

百五十万円の蓄えしか無かった。

 

銀行にお世話になり、二千万円の資金をそろえたが、それでもギリギリの状態だった。

 

(つづく)

 

開店にあたり、当時他所でラーメン屋を営んでいた,知人の店から

 

貰える物は何でも貰った。 古い器、調子の悪いレジスター。

 

電球の点かない(営業中 看板)、 それらの中に 古い広告 マッチが

 

千個ばかりあった。 店名が( 春 楽)と印刷されていたが、何しろ古いので

 

電話番号ではなく( 有線 電話番号)なるものが書かれているだけ。

 

知人の店は、当時 何々村と呼ばれる地に在り、村営の有線電話が主だったのだ。

 

それもすでに廃止されているので、もうかけてくる人もいないだろう。

 

「このマッチは古いけれど十分使えるね。 店名が印刷されているけど、

 

俺の店も同じ名前にしちゃえばいい訳だ」 とばかりそのまま(春 楽)とつけてしまった。

 

いうなれば、千個 の古マッチが惜しくてついた店名である。

 

知人によれば、( 春 楽) の名の由来は

 

「女房の 名前からとったんだよ。 がははは」 だそうだ。

 

古いマッチを捨てるのが惜しくてつけた店名で、ましてや他人の女房の

 

名前など、どうでもいい事で、そのうえ( しゅん らく )と読む人は稀にしかおらず、

 

「はる・・・・らく・・・さん?」の方が多いとなれば愛着など湧 こう筈がない。

 

「今度 店を改装する時は 店名も変えるんだ」 ずっとそう思って来た。

 

(つづく)

 

私は山が好きなので( 山小屋)と付け替えたい。

 

だけど 喫茶店と間違えられると、女房が反対する。

 

(ラーメン屋 山小屋 )とすればいいだろうと、只今説得中だ。

 

もちろん店名にそった改装も計画中だ。 壁は杉板を張り、

 

床はコンクリートの打ちっぱなし。椅子は丸太を輪切りにした物。

 

テーブルも手作りの見てくれの悪いヤツ。

 

その上に 設置する( 卓上 囲炉裏)はもう制作済みだ。

 

この囲炉裏には炭をおこして、いつもコーヒーを沸かして置く。

 

そして夏に捕ったアユやイワナも串に刺 してあぶって置く。

 

メニューもガラリと変わる。 自動販売機にはビールとワンカップだけ。

 

料理名はすべて頭に(山小舎 )がつく。

 

(山小舎 ラーメン) には山菜を入れよう。 焼 豚はハムでいい。

 

(山小舎 カレー) は具を少なく、時々レトルト だったりする。

 

「まずいっ」 と言う客には

 

「山小舎ですから」 と答えよう。

 

「たかいっ」 と言う客にも

 

「山小舎 ですから」と 言える。

 

「親父、 不愛想だっ」 と言う客には 帰ってもらおう。



 

ああ、 早く「 ラーメン屋 山小舎」をやりたい。

 

だけど( 春 楽) の名入りのマッチやら、 メニューやら、 箸 袋やらが、

 

まだ、沢山 残っている。

 

(了)