ナンバー13 ラーメン屋 春ちゃんコペルニクス的発想の転回 (散歩 の達人) | 堀切光男のエッセイ畑

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ラーメン屋 春ちゃん「コペルニクス的発想の転回」 散歩の達人2002 年5 月号に掲載

 

世はまさにデフレ時代。 安いものは良く売れています。 牛丼にハンバーガー、

 

百円ショップにリサイクル、 紳士服に通販にバスツアー。

 

数え上げればキリがない。 このようにモノみな値が下がる中、

 

資本力に劣る中小の企業や小売店などは、おいそれと対抗値下げも出来なくて

 

苦しい営業を余儀なくされています。

 

その半面、ブランド品や、高級料理などはそこそこ売れているそうで、高くても良い物や

 

旨いもの、そうでなければウンと安いものという両極端の時代とも言えそうだ。

 

その狭間に取り残された俺たちは、一体どうすればいいんだ?

 

こうなりゃ思い切って、発想をコペルニクス的転回(天動説から地動説に

 

180 度転回させた) でもしてみるか。

 

一昔前、日本のモーレツ社員がアラスカのエスキモー達に冷蔵庫を

 

売りつけることに成功しました。

 

この話は半ば伝説として語られていますが、マイナス何十度ものアラスカで、

 

どうして冷蔵庫が売れたのか? それは

 

「食べ物を凍らせないために冷蔵庫に入れる」 という逆転の発想からだそうです。

 

で、ラーメン屋が180 度発想を転回させると どうなるかてえと・・・・・・・・。

 

(つづく)

 

暖簾をくぐって、客が入って来る。

 

「親父っ、食べてくれるか」

 

「へいっ、よろこんで」

 

「よーし、今日は北京風、激辛四川広東麺の大もりを 食べさせるからよう」

 

「大もりですかあ。 それなら三百円プラスで、千 円頂きますが, どうしても

 

大もりじゃないとダメ? あっ そうすか、じゃあ大もりでお願いします。

 

トホホホ。 あ、それからこの間はちょっと生っぽくて下痢 しちゃったんですよ

 

今日はそこんところ、よろしくお願いします」

 

「まかせとけって、俺も最近は腕 上げてっからよう。

 

よーし、 張り切って食わせるぞうー」

 

と客はいそいそと厨房に入り、親父は ハラハラとテーブルにつく。

 

やがて大もりの料理らしいのが運ばれてきて、 親父は涙をこらえながら平らげる。

 

それを楽しそうに眺めていた客は、

 

「あー、食わせた食わせた。 満足,満足。 じゃあ、また来るからよう」

 

と食わせ代 千円 を払うと ハナ歌まじりで帰っていく。

 

あとに残された 親父、 胃腸薬を飲みながら、

 

「あーあ、 客商売は 辛えなあ」

 

てなことには・・・・・・なりっこないか。 了