ただひとつ、気になることがあった。
その医者が
「生理があるなら更年期障害なんてある訳がないッ!!」
と吐き捨てるように言ったことだ。
【オマエハバカカ】と言われた気がした。
確かに私の場合は更年期障害ではなかったかもしれないが、若年性更年期障害ってのも聞いたことがあった。
それで少しその医者が信用出来なかった。
もぉ一ヶ所病院に行っておくか…。
今度は産婦人科に行ってみた。
結果はやはり異常なし。
しかし。
やはり更年期障害について、最初の医者の言ったことは違っていた。
たとえ生理があっても更年期障害になる可能性はあると。
まぁともかく。
一応血液検査では異常のないことが解った。
会社の人などへは、はっきりと異常なしとは言わず、適当に話しをしておいた。
今度は心療内科に行けだのなんの、て話しになっても面倒だったので。
そんな調子でどうにか年が明けたが、やはりどうにも嫌になり、ダーリンに辞めたいと言うとOKが出たので、年明け早々に辞めてしまった。
やった…。
これでもう働きに行かなくて良いんだ。
足のおもりが取れ、晴れ晴れとした気分…
と、のんびりもしていられなかった。
実はこの頃。
大変な問題が起きていたのだ。
ダーリンの借金問題だ。
あれは弁護士にお願いして、あとは待っているだけ、の筈だった。
ところが。
年の明ける前、年末頃。
義母の様子が何かおかしい、とは思っていた。
自宅に電話をしても拒否されてしまっていたり、全く通じなかったり。
それでも私達が遊びに行くと、笑顔で迎えてくれ、晩ご飯も食べさせてくれた。
少し【どぉしたんだろ?】とは思ったものの、本人も何も言わないし特に追求はしなかった。
そんなある日。
あの弁護士から突然、ダーリン宛で内容証明付きの手紙が届いた。
手紙の内容は
【俺さー、あんたの弁護士、降りッから】
的内容だった。
いやもちろん、丁寧な言葉の文面だったが。
ついては明日、各消費者金融にその旨を通達すると。
私達はすぐには事態が飲み込めなかった。
実は…。
債務整理で、とお願いをしていたのだが、その作業は遅々として進まず。
ヤキモキもしたが、どのみちその作業の先の手続きが終わらぬ限り、支払いもしなくて良かったので、苛々するまではいかなかった。
こんなに時間がかかるものか…と思う程度だった。
ダーリンは2度ほど呼び出され、書類の確認やらをしていた様子だったが…
『これっ。全然違いますよっ!!』
ある日。
偶然目にした書類の数字が、何もかも全く違っていたらしいのだ。
それはある大手消費者金融の、借りた日、借りた金額、残りの金額、すべてだ。
実際に借りた日よりも数年遅い日付、実際に借りた金額よりも少ない金額、実際の残高よりも多い金額だった。
そこは借金の中でも一番古く、一番高額だった。
つまり、確実に多額の過払い金がある筈なのに、そのままでは貰えない可能性があった。
それほどの大きな違いだった。
まだ、ダーリンが全く覚えていなかったなら話しは解る。
最初のアンケートみたいなものを記入した時に、少なくとも、残高は確実に解っていたわけで。
その残高までもが違っているのはおかしいのではないか?
しかもその書類(借りた日付、金額、残高が書いてあったもの)は、ダーリン本人に見せて確認とった訳でなく、たまたま、相手の【不手際】で目にはいったものだったのだ。
そうなると、他の全てのものも本当にちゃんとしたものかどうか怪しいもんである。
ところが。
その弁護士はガンとして他の消費者金融のものは見せなかった。
そしてその指摘に対しては
「んなもん、消費者金融側がそぉ提出してきたんだから、それ以上わかる訳がないだろ…etc.etc.グダグダうにゃうにゃゴニョゴニョ…」
と、最後の方は聞き取れない声でぶつくさ言っていたそうだ。
『とにかくきちんと調べて下さいっ!!』
そう念押しし、その時はそのまま帰ったそうだ。
そして。
突然、なんの前触れもなくあの手紙が届いたのだ。
念を押して帰ってから、数日後のことだった。
『ざけんなっ!!あのやろーっ!!』
すぐに電話したのだが、何度かけてもあの弁護士は捕まらなかった。
コチラと話をしないように逃げているのは明らかだった。
おまけに電話に出た助手(女性)が
「その手紙の通りですッ。で、残りの料金は、いつ支払ってくれるんですかッ!?」
と。
いやいやいやいや。
何一つ解決せず、弁護士費用だけとるとはどういうことですかね?
あの費用は、全て解決した上での金額。
それを支払えと言うのはいかがなものか。
もちろんダーリンはつっぱねた。
逆に
『途中で降りたんだから、お金返してくれなきゃおかしいですよねっ。』
と食い下がった。
しかし結局。
返金されたのはほんの数万円。
やれ調査費だ、やれ手数料だ、と言われ、20万近く取られてしまったのだ。
弁護士だからといって、有名だからといって、必ずしも良い弁護士とは限らないんだ…
私達は、身を持って知ることとなった。
本当に痛い経験だった。
しかし大変なのはこれからだった。
またあの多額の返済をしていかねばならないのだ。
どうしよう…
いや。
どうしよう、などと悠長なことを言っている余裕はなかった。
余裕はなかったが…
いつから返済を再開するんだろ…
きっとダーリンの実家に、支払い督促状が矢のように届くんだろな…
そんなふうに漠然と構えていた私達。
しかし。
そんな甘いものではなかった。