そしてこの頃。
私は再び働き始めることになった。
デジカメを検査する仕事で、ちぃママの紹介だった。
ちぃママは私のすぐ後に【あの】派遣先を辞めていた。
腰を痛めた為、重い物を持ったりすることが出来なくなったのだ。
ちぃママが次に行ったのはデジカメの組立ライン作業。
派遣会社も変わっていた。
つまりまた同じ会社で働くことになったのだ。
前の会社を辞めてから、1ヶ月ほど経っていた。
仕事はとても簡単だった。
組立前の部品が箱詰めされている中からランダムに一部を抜き取り、検査するのだ。
決められた以上の傷がないか、
部品はチャンと組み込めるか、
歪みがないか、
などなど、淡々と検査するだけだった。
ただひたすら。
しかし…。
働き始めたのは良いが、私は以前の私とは違っていた。
((働きたくない…っ。))
心底そう思っていた。
前の会社からの無気力感は、なくなっていなかった。
ダーリンの借金問題はとりあえずひと段落したものの、遅々として進まず。
義母には【いつ入籍するの?】と言われ続け。
(だからダーリンに言ってくれっ)
多額の借金があることは、さすがに言えないが、チラッとお金のことを言ったら
「お父さん(義父)なんて、勝手に仕事は辞めるは、給料は貰ってこないは…。まだあの子は、家にお金を入れるだけマシよッ。」
と。
いやいやいやいや、おかーさまっ。
私、ダーリンには一銭もいただいてませんからっ。
それどころか私がお金を援助してるんですがっ。
義姉は訳の解らないことするし。
それにダーリンと話しをすると、すぐ怒鳴られるから私に電話してくるし。
(だからダーリンに言ってくれっ!)
訳の解らないことばかり言うから、怒鳴られる訳で。
義母にしても、義姉にしても、ダーリンに言うべきことを私に言ってくる。
私はそれが、とてつもなく嫌だった。
でもそんなことを言える訳もなく。
そしてその、ダーリンの女性問題。
無気力への道標はいくらでもあった。
そう、相変わらず例の女とは続いていた。
女とのメールを発見→私が発狂→ダーリンが泣きつく→言いくるめられる→女とのメールを発見…
というのが馬鹿みたいに繰り返されていた。
終いには、何度も目にする
(^3^)-☆chu!!
の顔文字が大嫌いになり、自分の携帯から削除したりした。
私名義の借金は残っているし、税金などの支払いは出来ぬまま。
そんな様々なことが絡み合い、私の気力はなくなるばかりだった。
何より、仕事そのものがあまりにも単調すぎた。
前回の会社も、その前も、結構動き回らねばならぬ細かいことが多かった。
しかし今度の仕事は、動くと言えば検査品を出し入れするぐらい。
ほとんど一日中、椅子に座っていなければならなかった。
それがますます私の気力を奪っていった。
気力のなさは、やがて体調にも影響を及ぼす。
毎朝【行きたくない…】と思うのはもちろんだが、体調もおかしくなったのだ。
会社までは原付で通っていた。
ごく普通に運転して、会社に着いた途端に、体がドーンと重くなる。
更衣室を出て仕事場に向かう頃には、歩く度に膝が抜け、カックンカックンしながら歩く。
軽いめまいがし、壁に手を添わせながらでないとまともに歩くことも出来なかった。
そんな状態なのに、仕事を終えて自宅に帰ると、全く普通にシャキシャキ行動出来た。
そんな体調の変化をおこす自分が、滑稽だった。
まるで登校拒否の子どもである。
いや、よくよく考えれば、この会社の仕事そのものは嫌いではなかった。
今までに比べて、ジッと座っている時間の多いのは確かに退屈ではあったが、黙々と検査をするのは嫌ではなかった。
会社の人達も、皆、良い人ばかりだった。
(中には、皆に嫌われているチョイウザ野郎も居たが)
そう、私が嫌だったのは【仕事内容】ではなく【仕事】そのものだった。
【働く】のが嫌だったのだ。
入社して3ヶ月もすると、週の半分ほど休む時まであった。
体調が悪そうなだけでなく、いつも顔色も青白かった私を、誰も【仮病】だと疑う人はいなかった。
心配して、病院で検査してもらった方が…と言ってくれる人も居た。
もちろん私自身は解っていた。
いわゆる【病気】ではないことを。
実際、本当に体調が悪くなるので仮病ではなかったが、自宅に帰るとなんともなくなるということは、精神的なものからきていると思った。
それでも
最低でも週に一回は休んでいること、
自宅でシャキシャキ動けはしたが軽いめまいはあったこと、
から、一度検査をしてもらわねばな、と考えた。
とりあえず近くの病院で自分の症状を言って血液検査をしてもらった。
もしかしたら更年期障害、貧血、あるいは私の認識のない何かの病気かもしれない、と思ったのだ。
念の為にと心電図までとられた。
数日後。
結果は特に何もなし。
貧血ですらなかった。
逆に私は、自分で自分に感心した。
検査の結果異常なしということは、全くの精神的なものだということ。
それなのに気持ちが萎えるだけでなく、体は震え、顔まで青白くなるのだ。
自分て凄い…
そんな変な感心のしかたをしたりして。