永冬生活…事故 | 腹回り鏡餅に浮輪ネガポジ部屋

腹回り鏡餅に浮輪ネガポジ部屋

光と闇は表裏一体。
2017年末に 脳梗塞で倒れ 糖尿病も併発、軽い右側麻痺、言葉がたどたどしい。
LDH系、特に三代目JSB、特に登坂広臣(臣ちゃ)好き♡♡♡
斎藤工(工ちゃん)好き♡♡♡
《いいね》は生存確認、内容に関わらずしてます。
(記事に無関係、無神経な※ 無言削除)

会社を辞める日があと数日後に迫っていた。

私は毎日、頭の中でシミュレーションをしていた。
辞める時、奴らに何を言ってやるかを。

私がこう言うと、それに対して相手があんな反応をし、そこでまた私があぁ言う…
頭ん中では実際に会話がなされ、相手の出方も、私の対応も、全てを見渡すことが出来た。

完璧だった。
私は、やや緊張をおぼえながらも、わくわくさえしていた。

今まで我慢し、耐えてきたものを、やっとぶつけることが出来る。
やっと解放される。
そう思っていた。

あの朝。

会社へ向かって原付を走らせていた。

会社は自宅から比較的近い場所にあった。

いつもの通い慣れた道だった。

その時突然。

私の視界を一台の車が横切る。

え。

あーっ!!

なんて思ったかどうかも解らぬほどの、ほんの一瞬の出来事だった。

気付いた時私は、仰向けにひっくり返っていた。

まるでバナナの皮で滑ったコントばりに。


事故った。

事故った。

事故った。

どぉしよぉっ。


半ばパニックになっていた。

会社までは、あとわずかな距離だった。

そこから見えるほどに。

とにかく震える体で原付を起こし、すぐ脇の店舗の駐車場に停める。

車から相手が降りてきた。

《なんでいきなり曲がってきたんですかっ!?》

そう。
私は片側二車線の道路を、普通に直進していただけだった。
そこへ相手がいきなり、私の横の車線から左折したのだ。

「てめぇーがぶつかってきたんだろがッ!!マジうぜーッ!!」

相手は20代半ばの柄の悪い男だった。

《ソッチが急に横切ったからぶつかったんでしょっ!!》

「急にぶつかってきたのはソッチだろがよぉッ!!」

私は絶対に悪くないっ。

負けちゃいられない、と、強い口調で言ったのが、逆に相手の闘争心に火をつけたのか、もっと声を荒げて凄んでくる。

コチラが女、それもおばちゃんだったんで舐められたのだ。
凄んで強気でいけば、勝てるとでも思ったのだろう。

((馬鹿にしやがってっ。))

だがこのままではラチがあかない。
仕事中だとは思ったが、とりあえずダーリンに電話する。

ところが。
何度掛けてもダーリンは出ない。
いつもなら仕事中でも必ず出てくれるのに。

私は普段、起こして欲しいなど頼まれた時以外は自分から電話をしたことがなかった。
いつもはメールだけ。

本当に緊急な時のみ電話をする…
そんな暗黙のルールが出来ていたのだ。

なので違う時間に電話すると、必ず出てくれた。

それが。
今回は何故か、全く出てくれないし、折り返しの電話もない。


どぉしよ…

どぉしよ…

どぉしよっ。

怖い…

ダーリン、怖いよっ。

お願いだから電話に出てよっ。

駄目だ…。

やっぱ出ない…。


その時。

ふと相手を見ると、そこにいた筈の相手が消えていた。

【やったっ!!】

それが私の本音だった。

何をそんなに恐れていたのか。

相手の男?

いや、違う。

今回の事故は100%相手が悪い、と言っても過言ではない。

しかし…。

私は原付をぶっ飛ばしていた。

そう。

【ぶっ飛ばしていた】のだ。

原付の法廷速度は30キロ。

それを優に越えていた。

((そのことを指摘されたらどぉしよぉ…。))

それが、そればかりが、頭ん中を支配してしまったのだ。

情けないが、それが事実だった。

だから内心、その場を早く逃げ出したかった。

それで【相手が逃げてくれたらな…】という気持ちで、わざと相手から見えない建物の陰でダーリンに電話をかけていたりした。

それが見事に成功した訳で;

それですぐに自宅へ戻った。

その時点で、事故から1時間近く時間が経っていたが、まだ体の震えはおさまらなかった。

やっとダーリンから電話が掛かってきたのは、それから少ししてからだった。
事情を説明する。

自宅に戻ってきたことも。

《事故現場に戻った方が良いかな…。》

『そりゃそうだろっ。今から俺もそこに向かうから。つか、チビは大丈夫なのかっ!?』

そこで初めて私は、自分の体のことに気付いた。
あまりにもパニクり過ぎて、自分が怪我をしているかどうかなんて考えもしなかったのだ。

とりあえずたいした怪我はなさそうだった。
もっとも。
自宅まで自力で帰って来てるんだから大丈夫なんだが。

事故現場に戻った私はふと、その周辺を探してみた。
相手の車があるような気がしたのだ。

相手が入っていった道は裏道のようになっており、小さな工場ぐらいしかなかった。
舗装していない空き地のようなスペースがあり、ずらりと車が並んでいた。

その時。
私の目に飛び込んできたのは、あの相手の車だった。
近付いて確かめてみる。
間違いない、あの車だっ。

それは、あるスーパーの裏側だった。

車の中を覗いてみると、そこの制服が入っていた。
このスーパーに勤めているのか。

暫くしてダーリンが来てくれた。
うまい具合に、ちょうど仕事と仕事の空き時間だった。

ダーリンに車を見つけたことを言う。

『なにッ!!見つけたのかっ!?』

かなり驚いた顔で私を見る。

事故から2時間弱は経っていた。
まさか見つけるとは思ってなかったのだろう。
(かくいう私が一番驚いたが;)

本当にそこで働いているのかを確かめに行く。