心地好い重みで ふ、と 目覚める。
そこに 少し心配そうな 優しい瞳があった。
た・・・くみ?
私の 目尻を這う指先が 冷たい。
彼の指先を濡らしていたのは 涙だった。
((そうだ・・・アタシ 泣いてた?))
目の前を歩く筈の その背中は
いくら 手を伸ばしても 追い付けなかった。
((待ってッ!!お願い、待ってッ!!))
そう叫んでる筈なのに 声が出ない。
霧の中に 消え行くように
その背中が 霞んでゆく。
必死に目を凝らしても 見失いそうになる。
届かぬ 指先。
届かぬ 想い。
切なくて 苦しくて・・・。
そこで 目が覚めた。
苦しそうな私を
彼は 黙って そっと抱き締めてくれていた。
大丈夫だよ・・・
そう言って 熱い唇を這わせる彼は
間違いなく 彼だった。
夢でも 幻でもない。
本当の彼。
その 重みを確かめながら
きゅっと しがみつく。
大丈夫だよ・・・
私の気持ちごと ふわっと抱き締めながら
念を押すように もう一度ささやく。
コクリと 小さく頷くのを 確認すると
ホッとしたように ぎゅっと 抱き締める。
その強さが 暖かい。
ここに居て 良いんだよ・・・
そう言ってくれてるようで 嬉しい。
特別な言葉は いらなかった。
沢山の言葉は いらなかった。
そこに 彼が居て 私が居る。
それだけで 良かった。
ゆらゆらと流れるトキの中で
絡んだ指だけが 熱を帯びてゆく。
言葉は いらなかった。