僕が学生時代から大学時代に師事した皮膚科の教授は
皮膚は内臓の鏡だととよく言ってました。
大学を卒業して医局に入り、大学病院に来院される患者さんを見ていると
肝臓や腎臓が悪い、あるいは糖尿病があるような方は
乾燥したり、肌が黒ずんだり、かゆくなったり、潰瘍ができたりといろいろな
肌トラブルを抱えていました。
青山ヒフ科クリニックを1999年に開院して診療にあたると
大学時代には診れなかった、あるいは僕が未熟のせいでわからなかった
ことが見えるようになりました。
それは皮膚は内臓の鏡であると共に心の鏡であるということです。
大学病院と異なり、青山ヒフ科クリニックを訪れる方は内臓の病気はないのですが
精神的あるいは肉体的なストレスにより心に負担がかかり、それがニキビ、赤ら顔、毛穴の開きなどの皮膚疾患や
疾患という大げさなものではなくても、くすんでいる、ハリがない、乾燥してしている、
などの症状を呈している方が多いのです。
逆に言うと、赤ら顔で毛穴が開いているあるいはニキビがあるけれども、肌がプリプリなのという方は皆無なのです。
こんな当たり前のことがわかってきたのはつい最近のことです。
心に負担やトラブルのない方は、肌の状態が非常によく
皮膚科を受診されることが少ないのです。
心に負担があってもそれをうまくカバーしている方は、肌のトラブルも少ないのです。
なぜ心に負担があると肌に症状が出るか解説します。
僕自記憶があるのですが、大きな失敗などをすると肌に行く血流が低下して
手足に行く血流がス――と冷たくなることがあります。
精神的ストレスがあると交感神経が緊張して、肌に行く血流がほんの数秒で低下してしまうのです。
精神的ストレスがなくなると、肌への血流が増加して肌トラブルも出現しません。
精神的ストレスが長く継続すると、肌の代謝が下がり、表皮細胞が角層に変換するのが低下して皮膚のバリア機能が低下します。
そうすると乾燥肌や敏感肌になってしまうのでそれを何とか防ごうとします。
でも表皮細胞が角層に変換してバリア機能を上げるには数週間かかります。
今そこにある危機、肌トラブルを解消するのは皮脂を増加させるしかないのです。
その結果、毛穴が開いたり、ニキビができます。
皮膚の代謝が下がった結果、繊維芽細胞によるコラーゲンやエラスチンの合成も低下しますが、
残念ながらバリア機能低下に対する皮脂分泌増加のようにそれをすぐにカバーすることはできません。
その結果、肌がたるみ、弾力のない肌が出現します。
ストレスが長く継続すると、視床下部―脳下垂体―皮質からなるHPA軸が活性化して
メラニン産生ホルモンやサブスタンスP、副腎皮質ホルモンなどが増加します。
その結果、肌がくすんだり、サブスタンスP により炎症が起こり、かゆみや痛みを生じたり
副腎皮質ホルモンによりさらに皮脂分泌が増加して、毛穴が開き、ニキビが悪化するのです。
内臓では、子宮卵巣に行く血流が低下して生理不順を起こします。
胃腸に行く血流が低下して異の肌荒れである胃炎や胃潰瘍を起こします。
さらに腸ではアドレナリンが分泌され悪玉菌が増加して
胃のもたれ、膨満感、便秘、下痢があ起こるだけでなく
腸内細菌の毒素が腸管から吸収され、全身の炎症を起こしやすくします。
その結果、炎症性サイトカインにより肌はますます荒れやすくなり、脳はうつ状態になりやすくなります。
その結果、やる気がない、疲れやすい、会社に行きたくないなどの症状も出てしまうのです。
脳、腸、皮膚は独立した臓器ですが、炎症を起こすリンパ球などはこれらの臓器を循環しています。
腸で悪玉菌が増加して炎症が起きていると、皮膚や脳でも炎症をおこして赤ら顔、ニキビ、うつ状態などを
引き起こします。
精神的ストレスが長く継続すると、脳でも炎症が起き、社会忌避行動が起こります。
これは脳の炎症が激しくなり、脳細胞が破壊されるのを防ぐための行動ではないかと僕は推定しています。
それから睡眠不足でも脳に炎症が起こり脳細胞は破壊されるそうです。
このような状態を防ぐには、皮膚、脳、腸などにおいて炎症を起こさないように
ストレスを減らす工夫をすることです。
高糖質、高脂質の食事はさけて、植物繊維、オリゴ糖、魚などを接種して
規則正しい生活、十分な睡眠、瞑想などの時間を持つといいでしょう。
自宅の周囲を散歩するだけでも違います。
友人と楽しいお酒を飲むこともストレス解消にはいいのですが、
これはこのご時世では難しいことです。
コロナウィルスが人にもたらしてきた災害やこれから起こす多くの禍を考えると心が重くなります。
やまない雨はない、明けない夜はないと確信して、毎日を過ごすことが大切ですね。
自宅でしみじみスキンケアをするのもいいと思います。