良質な睡眠を得るためにどうしたらいいのでしょう:運動、入浴、規則正しい生活 | 青山ヒフ科クリニック院長Dr.亀山のオフィシャルブログ

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表参道にある青山ヒフ科クリニック 院長 亀山孝一郎のブログです。

なかなか眠れない、あさ目覚めがすっきりしない、眠れないということは

非常なストレスになります。

前回コメントしたように、起きていることは酸化ストレスを生じ

睡眠は酸化ストレスを解消する抗酸化作用なのです。

 

前回起きていると脳には酸化型のグルタチオンやアデノシンが増加すると報告しました。

アデノシンはATPとのいう高エネルギー物質が分解されて生じます。

神経細胞は活動電位を発生するために大量のATPを必要とします。

 

 

ATPをたくさん作るためにミトコンドリアでは大量の糖が消費されその際に活性酸素も

大量に生じます。

上の図にしますようにミトコンドリア内や細胞質で活性酸素が生じます。

生じた活性酸素は SODという酵素で過酸化水素に分解され、

さらにビタミンC依存性のアスコルビン酸ペルオキシダーゼ によって無害な水に分解されます。

その結果ビタミンCは酸化されてしまいます。酸化したビタミンCを還元するために

グルタチオン依存性のデヒドロアスコルビン酸デヒドロゲナーゼがビタミンCを還元しますが

その結果酸化型のグルタチオンが大量に生じます。

 

神経細胞は、起きている時にはミトコンドリア で産生された大量のATPを利用して

神経インパルスを発生させ、情報の伝達をします。

この際にATPはADP、AMP、を経てアデノシンに分解されます。

酸化型グルタチオンやアデノシンは神経細胞以外の一般の細胞でも代謝に伴い産生されますが、

代謝の活発な脳で特に大量に存在します。

 

覚醒時に脳内で増加するアデノシンや酸化型グルタチオンが睡眠作用を発揮することが

最近判明しました。

頭をフルに使用すると起きている時間が短くても眠くなったり集中力が低下するのは

脳内にこれらの物質が増加するからです。

アデノシンはATPが分解してできた高エネルギー物質の燃えカスです。

酸化型グルタチオンはビタミンCを還元して生じた抗酸化作用を失った元抗酸化剤です。

すなわち脳内のエネルギーが欠乏して、抗酸化剤が低下すると眠くなるのです。

 

寝ようと思っても眠れない、大きな原因がこれらの睡眠作用を持つアデノシンや酸化型グルタチオンが

少ない可能性があります。

アデノシンはたくさんあるのだけれど、アデノシンがアデノシン受容体に結合できずに眠くならない場合があります。

例えば、寝る前にコーヒーやお茶をとると、カフェインがアデノシン受容体に結合してしまい

アデノシンの睡眠作用を抑制してしまいます。

寝る直前にはコーヒーなどを摂取しないようにしましょう。

 

脳を含む全身のアデノシンや酸化型グルタチオンを増加させる方法もあります。

全身の代謝をあげる運動をすることです。

運動は脳の血流も増加させ、脳内のアデノシンや酸化型グルタチオンを増加させるだけでなく

骨格筋を動かすために大量のATPを使用してアデノシンや酸化型グルタチオンを全身で増加させます。

その結果脳内のアデノシンや酸化型グルタチオンの睡眠誘発作用が増加するのです。

脳だけでなく、体の代謝を上げてアデノシンや酸化型グルタチオンを増やそうという合理的な方法です。

脳は神経インパルスの発生のために活動電位を上げて代謝を上げます。

骨格筋は筋を収縮させてATPを消費して酸化型グルタチオンを産生させるのです。

 

また昼起きて夜は寝るというメリハリをしっかりさせるために、規則正しい生活が大切です。

朝、光を浴びることで概日リズムは増強されます。

寝るときは体温が低下するのですが、寝る前に運動や入浴をすることにより

一過性に体温が増強し、その後リバウンドで体温が低下しやすくなり、眠りにつきやすくなります。

寝ている間に脳内ではアデノシンや酸化型グルタチオンが一掃され、ATPや還元型グルタチオンが増加します。

 

このような状態で朝を迎えると、満足感のある睡眠をとったと実感することができるのです。

昼寝は摂りすぎると、夜眠れなくなります。

僕は診療の昼休みは、必ず寝るようにします。

そうすると頭がすっきりして、午後の診療も快適にこなすことができ、

夜横になるとあっという間に眠りにつくことができます。

昼寝をすることで代謝があがり、より多くのアデノシンや酸化型グルタチオンが生じて

快適な睡眠を得られることも報告されています。

 

少し眠れないといって睡眠剤に頼るのはなるべく止めましょう。

眠れなかったら寝ないで朝を迎えて仕事をしましょう。

そうすると次の夜にはぐっすり眠れる可能性が増加します。

睡眠をとらないで仕事をすると、アストロサイトが消耗した神経細胞を破壊してしまうことも報告されています。

このようなことにならないように寝不足の次の日は眠れる可能性が増加します。

睡眠薬は依存性を生じたり、昼間眠くなったり、活舌が低下したりいろいろな副作用を生じます。

運動が一番の睡眠薬です。

非常事態宣言が出てジムがしばらくお休みなので、どうしようかと思案中です。

 

ビタミンB3は一番最初の図に示したように酸化型グルタチオンを還元するNADPHの一部を構成しています。

ビタミンB3は概日リズムを制御する遺伝子を活性化するだけでなく、抗老化作用も発揮します。

寝ている間に脳内のATPや還元型グルタチオンを増加させると

満足感、充足感のある睡眠となります。

全身のビタミンABCやグルタチオンが不足していると睡眠中に脳内のATPや還元型グルタチオンを

増加することができなくなります。

 

ビタミンABCの静脈注射を寝る前にすると、大量に脳内にこれらの物質を伝達して、睡眠時間を少なくして

横になっても眠れなくする可能性がありますが、

経口摂取やスキンケアで全身や皮膚に供給することは

快適な睡眠の実現と健康でしなやかな肉体、美しい肌、

そして脳神経の活性化を引き起こし、快適な日々を実現します。