終着駅:リリボイの地下街にあるカフェ<マリ>で、ハルカとカナタに時間を巻き戻され子どもに戻ったコズモに出会った僕:オリオと叔父さんは、自分たちも子どもにされては大変と急いでリリボイを離れることにした。パンタライ駅で預けていた車をピックアップし、川沿いに下っていく途中、観覧車を見つけた叔父さんは、懐かしさを覚え遊園地の中へ。フランクフルト・ソーセージを食べていると、トカイ刑事が近づいてきて僕に云った。「ミスター・ベルダの死因が判明したんです」 一方、ココノツは、ブリホーデンの図書館へ行き、二十一番までつづくあの歌詞を書き写してきていた。
<インク三部作>、ついに完結です。
ネガティブな出来事も、ポジティブに変える素敵な終篇でした。
ネガの反対はポジ。
だから、一見ネガティブな言葉も、裏を返せばポジティブなんだな。
詭弁かもしれんけど。。。
これは、オリオの成長の物語なのですが、彼を取り巻くオトナたちが、良い仕事してます。
ここはやはり、年の功なのでしょう。
なかでも叔父さんの言葉が沁みる、沁みる。
一見、風采が上がらず、ちゃらんぽらんに出たとこ勝負で生きてきた感アリアリの叔父さんなんですが、なんかねぇ、好き。
どうして人は人と争うのか
叔父さんいわく、人と人は、考えや思いが違うから争うんじゃなく、同じことを考えて同じものを求めるから、争いになる。
ふん、ふん、なるほど!!
だから、恋人:パティさんをハリーさんに取られちゃったワケだ。
しっかり学習してますねぇ。
エライ、エライ。
みんなが叔父さんのように、↓こんなふう思えれば、いつの日か争いは、なくなるのかもしれません。
同じものをもとめるから、競い合う。敵になる。だけど、同じものをもとめているんだから、そいつこそ、俺といちばん分かり合える奴かもしれないんだ
子供の尻尾
「あきらめが肝心だ」と云う叔父さん。
でも、一方で、「子供の尻尾を忘れるな」とも。
オトナはね、尻尾があったことを忘れてしまうから。
でもね、大人になっても、残ってるんだよ、尾骶骨。
なんか深いな。
希望
<六番目のブルー>をつくっていた会社や工場が、かつて「あった」と過去形となったとき、オリオは考えます。
大事なのは、決して希望を捨ててしまわないこと。
そこは大丈夫、私、捨てられない質なので、希望だって捨てられない。
どんなに、しぼんだり、しおれたりしても、それは僕に含まれている僕の希望であり、そうして希望をひとつポケットにしまっておけば、何かのきっかけで、急速にふくらんで、前に進む勇気を与えてくれるかもしれない。
唯一の真実と危ない橋
「唯一の真実」、それは「未来が、どうなるか分からないことだけが分かっている」ということ。
人生はいつだって、大丈夫かもしれないし、大丈夫じゃないかもしれない。
分からないことが分かってるんだから、分かったような気になって不安になるなということ。
但し、『いま』目の前にあるのが『危ない橋』だと分かっているときは、渡るべきじゃない。
でも、叔父さん、結構危ない橋渡ってきたように見えるけど。。。
まぁ、渡らんとあかんときもあるけど、そんなときは、この呪文をお共にどうぞ。
アブドラ・ハブドラ・サブドラサ
あっ、お子たちは、マネしちゃダメだぞ!の注意もお忘れなく。
時間
時間は残酷なものと叔父さんは云います。
時間が、大切な人を、あちらへと連れ去ってしまうことからは、誰も逃れることができません。
けれども、
時間の野郎はさ、俺たちの大事なものをことごとく奪いとっていきやがるが、俺たちの悲しみや辛い気持ちや苦しみも連れて行きやがる。うまいこと出来てるよ。
「悲しさのかたまり」の青だとか、「アリアドネの赤い林檎」だとか、なんだそれ?なんだけど、そもそもそれが、この物語を魅力的なものにしていて、既作品とのリンクはもちろん、「雲をつかむような話」なんて、お約束の常連?言葉も健在で、はたまた「カナタ」さんの本名が「タナカ」さんだったという言葉遊び(「ハルカ」と「カナタ」だけじゃなかったのね)も飛び出して、あっという間に終わってしまいました。
結局、<六番目のブルー>は、見つかったけど見つからなかったような……。
でも、それでも世界は回りつづけ、回りつづければ時が流れて、時が流れたら、悲しみも時間に洗い流されていきます。
と云うことで、オリオくんは、ベルダさんの死を受け入れられたようだし、ミランダさんからのご褒美で「終列車」そっくりの子犬を頂いた叔父さんも、ご機嫌なんで、めでたしめでたし~です。
【おまけ】
◆唯一の法則
電球交換士のトビラさんいわく、この世は回りながら動いている。
それが、この世の唯一の法則だと。
今日が終われば、今日とは違う明日がやってくる。たとえ、今日が悲しい日であったとしても、否応なしに終わって明日になる。明日はもう今日じゃない。明日はもう悲しい日じゃないってことだ
◆リンク作品