シャーリー・ホームズとバスカヴィル家の狗  高殿円 | 青子の本棚

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「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。

 

 

 

 

叔母:キャロル・モーティマーのアメリカ人の婚約者:ヘンリー・バスカヴィルが、遠い親戚のサー・チャールズ・バスカヴィルの急死により遺産相続人となった。バスカヴィル家は、デヴォン州アルスターの領主で、爵位とともに継ぐことになったお屋敷で、急遽、結婚式を挙げることに。叔母に招かれた私:ジョー・H・ワトソンは、一通の手紙を見せられる。そこには、ムーアに住む魔犬こそが真の主で、ふさわしくない者が当主につけば、牙をむいて襲いかかり死を免れない。先代:チャールズ・バスカヴィルが良い例だと綴られていた。

 

 

 

 

ドイルの『バスカヴィル家の犬』のパスティーシュです。

ホームズ、ワトソンをはじめ、主要人物が男性から女性に変えられ、時代も現代に移してのシャーリー・ホームズシリーズ第二弾です。

 

 

彼らが挑む事件は、原作の”ほぼまんま”です。

何百年も続く貴族の館、火を噴く犬の伝承、前当主の不審な死、底なし沼に、殺人鬼……。

 

登場人物も、バスカヴィル家の使用人夫婦:バリモア&ローズ、植物学者:マージ・ステーブルトンとその弟でキラキライケメンのジャック(この姉弟、原作では兄妹で、妹が美人)、そしてナイフ殺人鬼:ジム・セルデンと、こちらもまんまですね。

「魔犬はいない」も、そのままですが、まぁ、これは当然でしょう。

 

 

あっても問題のないものがない場合、それは問題がある。

そして、いないのにいるように見せかけることにも。

 

シャーリーが、クールに謎を解いてみせます。

おもしろかった~。

 

 

しかし、時代は現代ですから結末は、しっかり現代的。

そこに至る過程には、ドローンが登場したり、飼料用穀物の遺伝子改良やら、絶滅した伝染病:粟粒熱(ぞくりゅうねつ)の復活だとか、今風仕様です。

私は、断然こっちの方が好みです。

 

 

そして、シャーリーハート大好き相棒のジョーの決意もかわいい。

 

 

 

いやいや、死なない。シャーリーを守って、私も生き延びる。明日もクロテッドクリームをたっぷり塗ったスコーンを食べるんだ!

 

 

 

 

そしてですね、ラストに置かれた不穏な伏線の数々が、気になりすぎです。うさぎ

 

  • シャーリーの主治医:ヴァージニア・モリアーティ。
  • 退役後、モリアーティの部下となったと推測されるアフリカンブリディッシュビューティの元上司:イライザ・モラン大佐から告げられる、いまだ受理されていないというジョーの除隊届。
  • たったひとりで武器もなく、テロリストたちを惨殺し、ボスコム渓谷から無傷で脱出した「ボスコムの魔女」と呼ばれるジョー・ワトソンの過去。

 

そして、シャーリーの姉:ミシェール・ホームズも、何故かジョーを見張っているらしい。

 

わーん、謎多すぎ。。。泣くうさぎ

気になる、気になる~。

早く伏線回収したいよー。

 

 

 

 

 

 

 ミシェール・ホームズとハロッズの段ボール箱

マイキーの月曜日の妾宅に住む日本人シングルマザーには、二人の妹がいた。上の妹が下の妹の亭主に横恋慕。亭主がなびかなかった腹いせに、次女が三女に新しい男を紹介した。三女はその男と不倫。亭主は、妻と男を殺し男の耳を……。

 

シャーリーの姉:マイキー絡みのスピンオフ作品が併録されています。

 

こちらも第二弾ですね。

 

ギリシャ危機や、2012年のシンガポールの改正特許法の施行、そして、それらに関係あるようなないような微妙なリンクのマイキーのストレス。

”風が吹けば桶屋が儲かる”式のリンクは、007銃ばりのロシアンスパイ抹殺計画のネタばらしになっています。

 

 

そして、前回の「シャーリー・ホームズとデオゲネスクラブ」では、噂だけど七人の情人だったのが、なぜか五人になってます。

一人は、なんと温室(ターキッシュバス=デオゲネスクラブ?)の支配人になってるとのこと。

あと一人はどーした?

 

 

【覚書】マイキーのハート恋人たち

  • 月曜……料理上手な日本人シングルマザー
  • 火曜……NYから週に一度やってくるシティバンクの男
  • 水曜……代々役者志望のイケメン
  • 木曜……二十店舗のサロンを持つヘア・スタイリスト
  • 金曜……フォークランド帰りの退役軍人のおじいちゃん

水曜日のイケメンが”代々”ってのはすごいね。凝視

そこそこ売れると、次の若手に替わるらしい。

 

 

そして、ここにも、またまた不穏な伏線?が張られています。

マイキーとシャーリー姉妹の歴史とジョーの生い立ち。

どちらも、なかなかハードみたい。

 

だけど、あまり共通点のないそんな二人が、のんきにお茶してる様子は平和そのもので、なんかほほえましいなぁ。

 

 

 

    

本 共同体を構成する個々が違うことには大きな意味があり、違うことによる無駄は百年単位で見れば無駄ではなくなる

チョココーヒー 

 

 

 

 

 

 

 

 

【おまけ】

 

◆イケメンの遺伝子

『ロード・オブ・ザ・リング』の頃のオーランド・ブルーム似の自称トレジャーハンター:ジャック・ステーブルトン(=植物学者:マージの弟)は、女性にハートモテモテ。

それはもう、女性なら老いも若きも沼るイケメンだそうです。

(往年のオーランド・ブルーム?覚えてなかったのでググってみたけど、正直、私は沼らないな無気力

 

 

イライザ・モラン説によりますと、女子が愛しているのは、イケメンではなくイケメンの遺伝子なのだそうです。

 

なぜなら、

男とは、いずれ別れるかもしれんけど、子どもとは、ほぼ一生の付き合いになる。

よって、

        

イケメンの子は、1/2の確率でイケメン、もしくは美女。

        ↓

        ↓(隔世遺伝の確率はどーした?)

        ↓

どんな顔で生まれても、自分の子ハイハイはかわいいけど、どうせなら乙女のトキメキ美形の方が幸せ指数がアップ上がる。

 

 

なら、イケメンやったらアホでもええんかと言うと、そこはちょっと困るけど、今の時代、まだまだ美形はなにかと得するからね。

 

ジョーも、もし母のお腹の中で選べるとしたら、迷うことなくシャーリーの顔を選ぶそうです。

私やったら、うーん、あほの程度にもよるかな。

 

と、どこまでも二兎を追う強欲です。バレエ笑

 

 

◆シャーリー・ホームズの瞳の色

そんな美形の代表:シャーリーのお顔はというと、雪のように白い肌、黒檀のように真っ黒な髪、血のように真っ赤な唇と、まるで白雪姫のような形容です。

乙女のトキメキクールビューティ、確かに美形ですねぇ。

 

そして、プラス「ルークのライトセイバー色の瞳」を持つシャーリー。

 

いままで、「パライバトルマリン」と形容されていたシャーリーの瞳ですが、なるほどライトセイバーかと、ニヤニヤしてしまいました。