叔母:キャロル・モーティマーのアメリカ人の婚約者:ヘンリー・バスカヴィルが、遠い親戚のサー・チャールズ・バスカヴィルの急死により遺産相続人となった。バスカヴィル家は、デヴォン州アルスターの領主で、爵位とともに継ぐことになったお屋敷で、急遽、結婚式を挙げることに。叔母に招かれた私:ジョー・H・ワトソンは、一通の手紙を見せられる。そこには、ムーアに住む魔犬こそが真の主で、ふさわしくない者が当主につけば、牙をむいて襲いかかり死を免れない。先代:チャールズ・バスカヴィルが良い例だと綴られていた。
ドイルの『バスカヴィル家の犬』のパスティーシュです。
ホームズ、ワトソンをはじめ、主要人物が男性から女性に変えられ、時代も現代に移してのシャーリー・ホームズシリーズ第二弾です。
彼らが挑む事件は、原作の”ほぼまんま”です。
何百年も続く貴族の館、火を噴く犬の伝承、前当主の不審な死、底なし沼に、殺人鬼……。
登場人物も、バスカヴィル家の使用人夫婦:バリモア&ローズ、植物学者:マージ・ステーブルトンとその弟でイケメンのジャック(この姉弟、原作では兄妹で、妹が美人)、そして
殺人鬼:ジム・セルデンと、こちらもまんまですね。
「魔犬はいない」も、そのままですが、まぁ、これは当然でしょう。
あっても問題のないものがない場合、それは問題がある。
そして、いないのにいるように見せかけることにも。
シャーリーが、クールに謎を解いてみせます。
おもしろかった~。
しかし、時代は現代ですから結末は、しっかり現代的。
そこに至る過程には、ドローンが登場したり、飼料用穀物の遺伝子改良やら、絶滅した伝染病:粟粒熱(ぞくりゅうねつ)の復活だとか、今風仕様です。
私は、断然こっちの方が好みです。
そして、シャーリー大好き相棒のジョーの決意もかわいい。
いやいや、死なない。シャーリーを守って、私も生き延びる。明日もクロテッドクリームをたっぷり塗ったスコーンを食べるんだ!
そしてですね、ラストに置かれた不穏な伏線の数々が、気になりすぎです。
- シャーリーの主治医:ヴァージニア・モリアーティ。
- 退役後、モリアーティの部下となったと推測されるアフリカンブリディッシュビューティの元上司:イライザ・モラン大佐から告げられる、いまだ受理されていないというジョーの除隊届。
- たったひとりで武器もなく、テロリストたちを惨殺し、ボスコム渓谷から無傷で脱出した「ボスコムの魔女」と呼ばれるジョー・ワトソンの過去。
そして、シャーリーの姉:ミシェール・ホームズも、何故かジョーを見張っているらしい。
わーん、謎多すぎ。。。
気になる、気になる~。
早く伏線回収したいよー。
ミシェール・ホームズとハロッズの段ボール箱
マイキーの月曜日の妾宅に住む日本人シングルマザーには、二人の妹がいた。上の妹が下の妹の亭主に横恋慕。亭主がなびかなかった腹いせに、次女が三女に新しい男を紹介した。三女はその男と不倫。亭主は、妻と男を殺し男の耳を……。
シャーリーの姉:マイキー絡みのスピンオフ作品が併録されています。
こちらも第二弾ですね。
ギリシャ危機や、2012年のシンガポールの改正特許法の施行、そして、それらに関係あるようなないような微妙なリンクのマイキーのストレス。
”風が吹けば桶屋が儲かる”式のリンクは、007ばりのロシアンスパイ抹殺計画のネタばらしになっています。
そして、前回の「シャーリー・ホームズとデオゲネスクラブ」では、噂だけど七人の情人だったのが、なぜか五人になってます。
一人は、なんと温室(ターキッシュバス=デオゲネスクラブ?)の支配人になってるとのこと。
あと一人はどーした?
【覚書】マイキーの恋人たち
- 月曜……料理上手な日本人シングルマザー
- 火曜……NYから週に一度やってくるシティバンクの男
- 水曜……代々役者志望のイケメン
- 木曜……二十店舗のサロンを持つヘア・スタイリスト
- 金曜……フォークランド帰りの退役軍人のおじいちゃん
水曜日のイケメンが”代々”ってのはすごいね。
そこそこ売れると、次の若手に替わるらしい。
そして、ここにも、またまた不穏な伏線?が張られています。
マイキーとシャーリー姉妹の歴史とジョーの生い立ち。
どちらも、なかなかハードみたい。
だけど、あまり共通点のないそんな二人が、のんきにお茶してる様子は平和そのもので、なんかほほえましいなぁ。
共同体を構成する個々が違うことには大きな意味があり、違うことによる無駄は百年単位で見れば無駄ではなくなる
【おまけ】
◆イケメンの遺伝子
『ロード・オブ・ザ・リング』の頃のオーランド・ブルーム似の自称トレジャーハンター:ジャック・ステーブルトン(=植物学者:マージの弟)は、女性にモテモテ。
それはもう、女性なら老いも若きも沼る池イケメンだそうです。
(往年のオーランド・ブルーム?覚えてなかったのでググってみたけど、正直、私は沼らないな)
イライザ・モラン説によりますと、女子が愛しているのは、イケメンではなくイケメンの遺伝子なのだそうです。
なぜなら、
男とは、いずれ別れるかもしれんけど、子どもとは、ほぼ一生の付き合いになる。
よって、
イケメンの子は、1/2の確率でイケメン、もしくは美女。
↓
↓(隔世遺伝の確率はどーした?)
↓
どんな顔で生まれても、自分の子はかわいいけど、どうせなら
美形の方が幸せ指数が
上がる。
なら、イケメンやったらアホでもええんかと言うと、そこはちょっと困るけど、今の時代、まだまだ美形はなにかと得するからね。
ジョーも、もし母のお腹の中で選べるとしたら、迷うことなくシャーリーの顔を選ぶそうです。
私やったら、うーん、あほの程度にもよるかな。
と、どこまでも二兎を追う強欲です。
◆シャーリー・ホームズの瞳の色
そんな美形の代表:シャーリーのお顔はというと、雪のように白い肌、黒檀のように真っ黒な髪、血のように真っ赤な唇と、まるで白雪姫のような形容です。
クールビューティ、確かに美形ですねぇ。
そして、プラス「ルークのライトセイバー色の瞳」を持つシャーリー。
いままで、「パライバトルマリン」と形容されていたシャーリーの瞳ですが、なるほどライトセイバーかと、ニヤニヤしてしまいました。