クロワさん  いしいしんじ | 青子の本棚

青子の本棚

「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。

 

 

 

 

女性ではじめて月に行った宇宙飛行士:小林黒羽(くろわ)さんが、クロワッサンを好きになったのは、小六のときでした。近所の犬にランドセルにぶらさげたきんちゃく袋に嚙みつかれ、飼い主のおばあさん:マリアさんがお詫びにと持ってきたのがクロワッサンです。十一歳の黒羽さんは、初めて食べたクロワッサンに夢中になります。八十一歳の冬、川べりの芝生の公園で、ホイールチェアに腰かけた黒羽さんは、クロワッサンの手作りに失敗し、パン屋めぐりをして「おいしいクロワッサンと、とびきりおいしいクロワッサンの、ふた通りがある」ことを発見した中学生のころに思いを馳せます。

 

 

 

 

京都の食パンパン屋さん:進々堂さんが、創業110周年記念に無料配布した冊子に書下ろした短編です。

 

図書館のネットワーク検索で偶然見つけました。

どうやって手に入れたんやろ。

とにかく、GOOD JOB!! グッ

感謝です。

 

 

黒羽さんの生涯が順々に語られ、最後にホイールチェアに座っている理由が明かされます。

これが、とても黒羽さんらしくてハート素敵。

ちょっと『トリツカレ男』に似てるかも。笑ううさぎ

 

 

夢中になると、とことん追求し、一つ一つ夢を叶えていく黒羽さん。

可愛らしくて、かっこいい女性です。

 

 

黒羽さんの🥐クロワッサンへの思い入れは並々ならず、高二の夏には、トルコの国旗に描かれた三日月に誘われてイスタンブールや、小笠原やウラジオストックへまで出かけたかと思うと、「リケ女」になって、JAXAの採用を経て新国際宇宙ステーションに……。

そして、ついにロケット月面へ。

 

そこでも、やっぱり、彼女独自のこだわりでお家:「クロワハウス」を建てたりと大活躍バレエです。

でも、どんなときでもクロワッサン🥐は忘れない。

 

 

一日に一個はクロワッサン

 

 

 

だからね、ラストがまた、とんでもなく黒羽さんらしいというか。。。

 

クロワッサン仲間の七十六歳になったブラックホールの研究で有名だった天才学者:ルネ・イジュラン博士に「ほんの、ちょっと、てつ、だって」もらってのくるくるムーンサルト。

 

 

ブラヴォ、フラヴォ!

 

 

 

 

パン屋さん繋がりやから🥐クロワッサン。

フランス語で三日月お月様を意味する”クロワッサン”やから月へ。

ヒロインの名前も、「くろわさん」なんてベタやけど、私の好きな初期の頃の作風が思い出されて、めっちゃ好みハートでした。

 

 

メルスィ、サンキュ、アリガトウ

 

 

 

 オーナメント

    

本 どこでたべても、どんなでも、クロワッサンは、さいこうよ、つきでも、ル・アーヴルでも、このまちでも。そのとちの、空気を、あじわうんだから、空気、がある、ところには、きっと、だれかが、いきをして、いきて、いるんですから

🥐コーヒー 

 

確かにクロワッサンって、<おいしい空気穴のかたまり>やからね。

 

 

 

 

 

 

 

【おまけ】

◆トルコ国旗とクロワッサン

クロワッサン🥐って、なんとなくフランス生まれのパンぽいですが、実は、初めてつくったのは、オーストリアのパン職人さん。

 

オスマントルコが、オーストリアに攻め入るために地下トンネルを掘っている音を、地下のパン工房で働いていた職人が聞きつけて通報し、見事勝利。

その勝利を祝って、国旗の三日月を模したクロワッサンを作ってお祝いしたのだそうです。

そして、マリー・アントワネットが、フランスフランスに輿入れウエディングドレスしたときに、パン職人を連れていき、フランスにもクロワッサンが伝わったのだとか。

 

マリー・アントワネットは、お菓子カップケーキだけじゃなく、パンも大好きだったようですね。

 

あ~、おいしいクロワッサン🥐が食べたくなります。