地底旅行  ヴェルヌ | 青子の本棚

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「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。

地底旅行 (光文社古典新訳文庫)/光文社

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叔父:オットー・リーデンブロック教授に呼ばれ、書斎へ入った私:アクセルは、叔父が手に入れたばかりの古書の中に挟まれた一枚の羊皮紙を目にする。それは、アイスランドで昔使われていたルーン文字で書かれた暗号文だった。有名な錬金術師:アルネ・サクヌッセンムという署名があり、地球の中心へと至るヒントが記されていた。その暗号文を解読した私たちは、サクヌッセンムに続けとばかり、地球の中心目指して旅にでることに。。。



『二年間の休暇』、『海底二万里』、『八十日間世界一周』と、ジュール・ヴェルヌは、小学生の頃の私の愛読書。音譜
でも、これは、読んだことがないなぁ。
「地底」ってなんか地味やねん。

しかし、ルーン文字の暗号解読の場面は、なーんか記憶があるような、ないような、あやふや。
もしかした、忘れてるだけかも。。。ドクロ汗


この叔父・甥コンビが住んでいるのは、ハンブルク。
まずは、地底への入り口とされるアイスランドのスネッフェルス山目指して出発します。

常に前向き、イケイケグーじいさんの鉱物学者:リーデンブロック教授と、その甥でヘタレの助手のアクセル。
いいコンビだなぁ。
家を出るところから、消極的なアクセルのお尻を叩いて出発させるのが、教授の養女である、愛しのドキドキグラウベン。

アイスランドまでの旅は、普通の旅行記でもあり、当時の旅事情を垣間見せてくれます。
当時のアイスランドが、如何に辺境の地であるかが解り、これはこれで、興味深いです。

そして、そんなところにも、教会があることに驚きます。
一行は、粗末なわりに、法外な宿泊費を請求され感じワルっと思いながらも、過酷な環境ゆえに仕方なしと好意的に受け入れますが、なんか怖いね。
まぁ、日本にだって、宣教師がやってきてるんだから、当然か。


そして、現地雇いの寡黙なガイド:ハンスと共に、地底へ。
このハンスが、めっちゃ頼りになるんだよなー。ラブラブ
はっきり言って、彼がいなかったら、絶対二人とも途中で死んでるよ。ドクロ

だって、重装備のわりに、帰り道のことはぜーんぜん考えてないリーデンブロック教授。
飲料水についてもそう。
取り合えず必要なだけ持って、あとは、地下で見つかるなんて、根拠のない自信?で突っ走る。叫び
そんなだから、アクセルのへっぴり腰も解らないでもないです。

でも、途中で、アクセルのために、自分の水を節約して残してくれてたり、アクセルがはぐれたときには、見捨てずに探してくれたりと優しく情け深い面もあり、それゆえに憎めないんだよねー。ラブラブ
それに、タフだよなぁ。

本 「あたりまえじゃ! 人間は心臓が鼓動を打つかぎり、肉体を動かすことができるかぎり、希望を失ってはならん。絶望に身をゆだねてはならん。わしはそう思うぞ」

そして、自分の専門領域に対しては、超一流のプロ。
その上、言い出したら聞かない頑固者。


それに比べて、甥のアクセルは、結構お調子者の部分もあって、うじうじくよくよしていながら、希望が少しでも見えると、突然元気になったりと、ごくごく一般的な私たちとの共通点だらけなんだな。
だから、彼には、近親感ドキドキがわくのですが。


描かれるのは、現代の科学から見れば、速攻でありえへんやろパンチ!とツッコミ入れられる地底の世界ですが、現代にも通じる記述もあります。

例えば、石炭について、その量は無限ではなく、現代のように過剰に使いつづけたら、もたないだろうと書かれています。
石炭が石油に変わっただけで、人類って、いっこも変わってへんやん。ドクロ汗
発表当時の時代を考えると、最先端の知識を駆使して描かれた物語だったんだろうなと想像できます。


地下には、大きな海があって、古生代の生物がうようよいて、バカでかく育ったキノコや羊歯の森があって、マストドンの群れを見張る巨人がいて……。

と、まさに空想の世界で遊ぶ楽しい読書でした。

欲を言えば、
巨人どうなった?
他にもいるの?
筏で火砕流は、もたんやろ?
と、現代だから、気になる点は、無数にあるけどね。

まぁ、いいか。
空想科学小説やもん。




本 「ああ、アクセル。科学などというのは、まちがいでできているようなもんじゃ。だが、まちがいは犯したほうがいい。それによって、少しづつ真実に近づいていくのじゃからな」