ホモ・デウス(下)――テクノロジーとサピエンスの未来  ユヴァル・ノア・ハラリ | 青子の本棚

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「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。

ホモ・デウス 下: テクノロジーとサピエンスの未来/河出書房新社
¥2,090
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やっと届いた『ホモ・デウス』下巻です。


本 私たちを束縛するものは、自らの無知以外、何一つない。疫病にも旱魃にも人知を超えた意味はなく、私たちにはそれを根絶できる。戦争はより善い未来への途上にある必要悪ではなく、私たちは敵と和解できる。死後に私たちを待ち受ける楽園はないが、技術的な問題をいくつか克服すれば、この地上に楽園を生み出し、そこで永遠に生きることができる。


冒頭から、明るい未来音譜を約束するような言葉で始まる下巻。

人殺しが悪いのは、どこかの神が「殺してはならない」と言ったからでなく、盗みが悪いのは、どこかの古い文書に「盗んではならない」と書いてあるからでもなく、殺された人の家族や友人がひどい苦しみを受け、盗まれた人が嫌な思いをするからである。

と、共同幻想である宗教から、自分自身の内なる声である意識を重視する人間至上主義へと宗旨替えした私たち。
このあたり、ヴォルテールの『カンディード』 を読んだあとだから、すっきりとよく解りました。チョキ

そんな私たちが、次に向かうところは。。。

それは、まるで、SF小説のディストピア。叫び


アルゴリズムが、シンギュラリティを超え、人間が軍事的にも、経済的にも無用になったとき、人は何をすればよいのか。
人は、何かをする必要があり、することがないと、頭がおかしくなる。

薬物とコンピュータゲームなんて答えが挙げられてるけど、本読めばええんちゃうん?
一生かかっても読みきれない書物が、あふれかえってんねんから。
なーんて、ちょっと羨ましく突っ込んだ私あせるですが、そういう人ばっかりでもないしね。
良くも悪くも、多様性に富むのが人類だもん。


来るべきシンギュラリティを前にして、既に、膨大なデータの収集がGAFAによって行われています。

本書では、ナビゲーション・アプリの「Waze(ウェイズ)」を例に、アルゴリズムが、正しい道路の混み具合を、半分の運転者にしか教えないかもしれないと警告を発しています。
なぜなら、全ての人が情報を共有することによって、別の場所で、あらたなる渋滞車車車バスを引き起こす可能性までも、考慮に入れるからだそうです。

そうやって、最適値を作り出すのだそうです。
個人の意思ではなく、全体を尊重。
ん?
マガタ・シキかい。パンチ!

それって、Amazonが、大量の注文を見越して一部の人には欠品と告げ、別の商品を紹介するみたいなもんやん。ドクロ
それで良いわけないよな。
怖い。。。叫び

それでも、GAFAは、まだプライバシー保護問題が、わずかでもブレーキになってるけど、アリババになると、推して知るべしです。
このシステムは、世界中で今、一番中国に合ってるもの。


他にも、アンジェリーナ・ジョリーの受けた乳がんの遺伝子検査の高額費用を例に、一部の富裕層と残りの人々との身体的・認知的能力の格差が、今以上に増大するとか、震えあがるような予測にあたふたさせられます。汗

だって、どー考えても、私ってその他の方やもん。ガックリ
ちなみに、検査料金(切除・再建手術は含まず)だけで、三〇〇〇ドルお金以上ですって。叫び


なんか、お正月鏡餅から、薄気味悪い未来を目覗いてしまい、縁起でもないなぁ。

「正月は 冥途の旅への一里塚 めでたくもあり めでたくもなし」
なんて、言ってたお坊さんを思い出します。
暗いよ、未来。雷


でもね。
悪い頭なりに、一休さんの真似して考えてみました。

世界には、原料とエネルギーと知識という三種類の資源があり、前の二つには、量に限りがあり、使えば使うほど残りが少なくなるけど、知識は、使えば使うほど増えアップ続けます。

知識の蓄積は、AIに負けるのは当然だけど、人間って、それだけかい?
人間って、本当にアルゴリズムだけで動いてるの?

この本は、それを前提として描かれた未来です。
しかし、この先に、どんだけ凄いブレークスルーひらめき電球が、やってこないとも限りません。
これは、あくまで警告の書。

アルゴリズムは、確かに大量のデータ処理には有利だけど、敢えて使わないへそ曲がりもいるのが人間じゃないですか。
勝てば官軍と歴史に正義がないように、未来に必然もないんじゃないのかなぁ。




本 古代には、力があるというのはデータにアクセスできることを意味した。今日では、力があるというのは何を無視するかを知っていることを意味する。では、私たちの渾沌とした世界で起こっていることをすべて考えると、何に焦点を当てるべきだろうか?