新正体不明  赤瀬川原平 | 青子の本棚

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「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。

赤瀬川 原平
新 正体不明


「意味はないけど味がある」正体不明の写真集。
特になんのこともない街角の風景写真。
なかには一見、何もこんなゴミゴミした汚いところなど撮らなくてもと思うような写真も。
でも、添えられたキャプションを読むと思わずニヤリ。


トタン板の上にできる不思議な影。
「影は花より命が短い」
「生花(いけばな)」と同じ様に「生影(いけかげ)」?
ほんの数分後には、もう形を変えてしまう影と静物のコラボレーション。
「影を生ける」という視点がおもしろい。

「水羊羹」と題された見下ろしたどぶ川に写る世界。
水面に写るコンクリートの建物と川に沈んだ不法投棄された自転車。
「千と千尋」の世界だ!
それはあたかも中の栗が透けて見える水羊羹のよう。

廃物利用の鉄板を使ったどぶ板。
ナットを打ち抜いた後の六角形の穴が網の目の様に美しい。
経済効率を考えた職人さんの高度な技術の残り滓。

苔の森の後ろには青いトタンの空。
前景にはトタンの波々の凹の部分につまった土が地面に沿って、まるで中国・桂林の山並みのような線を描いている。
まさに、蟻の視線。


どれもこれも、見ていて飽きない。
私たち、常識の目に騙されてるのかもしれない。
正体はあるんだけど、じっくり見てみるとそこには。。。

遊び心の愉しい一冊です。




> トマソンにしろ路上観察にしろ、赤瀬川氏の視点にはいつも驚かされます。この写真集も面白そうですね!ちょっと見方を変えるだけなのに、そのちょっとが凡人には難しいです。 (2004/12/19 19:28)
青子 > 露さん、レスありがとうございます。この写真集視点がおもしろくぽけーとながめてるだけでなんだかなごみます。トマソンも私好きです。以前勤めていた会社の倉庫に塗り込められたドアとかあったんですが、最近はなかなかステキなのが見つからないです。 (2004/12/19 22:43)