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男からのズンズン責められ追い詰められる私がいる。
奈落の底に、あるいは深海に引き込まれアップアップして息が苦しい。
深まる苦痛。
それがある瞬間。
すべてが一瞬に解き放たれて天上に舞う。
まさにその直前。
責められる極限の痛苦に、私の眉間の縦皺が長く深く刻まれる。
男は自信と満足感にそそられる。
ターボがかかる、臨界点への膨張。
私は全身が男のあれで充満したかと思う。
奥へ、溢れかえるその刹那。
すべての逆転。

私は眼をいっぱいに見開いて男を凝視する。
突然襲ってきた快楽をまだ統御できずに翻弄されている、私。
半開きの口からは妙なる音色のあえぎがもれ、蘭麝の香りが立ちのぼる。
快感は男を何十倍も凌駕する深みと広さの翼を広げる。
男はそのやさしさに包まれ抱かれる。
攻めの快から受けの楽の奈落に落ちつつ、男は安息していく。


寝ても醒めても ~ Nuit et Jour ~-bird.jpg

















はるかにヒマラヤの嶺々
豊饒の紫外線が降り注ぎ
乾いた風が音を立てて天空に突き騰がる
ニードルの頂には
私の屍

肉の塊は
バキバキと骨が砕かれ
バサバサと肉が解体され
血は粉末となって飛散する

旺盛な食欲の野禽たちは
食卓の猥雑な騒ぎのままに
私を啄ばみ嚥みくだす

できることなら
肉の塊に再び痛苦を蘇らせ
感触をしみじみと味わいたいものだ

その甘美な夢こそ
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男の人ってみんなそうなのかしら、忙しい忙しいと言って。
いつも私の前を走るようによぎって行くだけのあなた、
お国の大事なご用なのだからとおっしゃるけど。

「心配しなくてもいい、お前はボクのものだよ」と、
言っていれば女は安心するとでもお思いになって。
女がコトバだけでものごとを信じ込むとでも思ってらっしゃる、
女はあさはかだと。

私に欲しいのは、コトバでも視覚情報でもないの。
貴方のぬくもり、触感、香り、味。
そう、虐げられし、プリミティブな感覚。一対一の秘密が欲しい、、、

なんどもなんども季節が変わって、とうとう今年も終わって。
あなた、とうとう夜会に連れてってくださらなかったわね。
あつらえた夜会服はクローゼットで眠りこけ、夜の輝きに焼かれることなく色あせ。
スパンコールの靴は煌めくことなく、ランジェリーはサイズが違って。

お国の大事がそんなに大事なら、女の小事はささやかすぎて見えないもの。
お歳を召されて目が不自由なら、地球より大きい女の大事は無理

またひとつ除夜、ひとりで、、、
あなたのもの以外になりようはなくとも、誰も知らない、そばにもいない。
最小限の面積のひとつ。