
男の人ってみんなそうなのかしら、忙しい忙しいと言って。
いつも私の前を走るようによぎって行くだけのあなた、
お国の大事なご用なのだからとおっしゃるけど。
「心配しなくてもいい、お前はボクのものだよ」と、
言っていれば女は安心するとでもお思いになって。
女がコトバだけでものごとを信じ込むとでも思ってらっしゃる、
女はあさはかだと。
私に欲しいのは、コトバでも視覚情報でもないの。
貴方のぬくもり、触感、香り、味。
そう、虐げられし、プリミティブな感覚。一対一の秘密が欲しい、、、
なんどもなんども季節が変わって、とうとう今年も終わって。
あなた、とうとう夜会に連れてってくださらなかったわね。
あつらえた夜会服はクローゼットで眠りこけ、夜の輝きに焼かれることなく色あせ。
スパンコールの靴は煌めくことなく、ランジェリーはサイズが違って。
お国の大事がそんなに大事なら、女の小事はささやかすぎて見えないもの。
お歳を召されて目が不自由なら、地球より大きい女の大事は無理
またひとつ除夜、ひとりで、、、
あなたのもの以外になりようはなくとも、誰も知らない、そばにもいない。
最小限の面積のひとつ。