ウォークスルーSICをあえて中止して設けた「玄関の収納」 | 失敗しない間取り相談 新築|リフォーム 間取りアドバイザー 坂口亜希子

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セルフチェックで「あなたのマイホーム図面」を辛口主婦目線に耐える図面に変身させます!
日々家事をこなす主婦であり建築士だから気づく!わかる!間取りのアドバイス。

玄関に設ける収納の扉をどうするか?という視点で見た時…

もちろん来客目線は気になるが それよりも、普段の「手軽さ」「片づけやすさ」を最優先にしたい!という人が意外と多い。

すぐ隠せて、普段は便利にオープン利用したい!という「効率優先派」さんの玄関収納の話。






以前、間取り相談を受けられた北海道在住のY夫さんから完成&住み心地報告をいただいた。
(Y夫さんに掲載許可済み)





しばらく暮らしたのちに、このような感想をいただくことは本当に嬉しいです笑い泣き
Y夫さん、ありがとうござます!

 

Y夫さんの当初の概要は…

元々アパートだった物件を購入しての大規模リフォーム。

一部をガレージにしてもまだ各所ゆとりのある計画だった。

構造に関わる部分の階段、耐力壁、大きな窓は、すでに変更できない段階にあったが、Y夫さんは

「広さはあるが全体的に無駄なスペースがある気がする」とお悩みだった。


具体的なお悩みも多々いただいたのだが、まずはパッと見、「玄関ホールの正面にトイレドアがある」ことが非常に気になってしまった汗



Y夫さんちの基本情報

  • 夫婦+子供二人(当時…年長、年少)
  • 夫婦共働き
  • 木造2階建て、大規模リフォーム
  • 施工…リノベーション専門業者
  • 間取り決定までリミット迫る

 



 

玄関の正面にトイレドア


来客が玄関に入った瞬間、目の前にドアが見えても、それがトイレなのか?リビングなのか?正直わからないとは思うんだけど…
でも、正面にトイレドアがあるのは何となく抵抗がある。(←私はね…。気にしない人もいるだろうけど)


Y夫さんちの間取りが、まさにそうだった。

Y夫さんのお悩みには、トイレについて何もないので、あえて問題視しなくてもいいとも言えるんだけど…
でも、気になる部分を黙っていられないタチなので仕方ない汗


Y夫さんちの原案間取り↓




ちょっと変わった玄関前だけど、リフォームなので抜けない壁や柱もあり、それを生かして屋根付き駐車場になっている。

玄関付近を拡大…

 

と、その前に、
ビルダーさんの図面は、なぜか北が下、南を上に作図してあった。

一般的に住宅図面は、北を上、南を下向きに作図するんだけど、それに慣れているので逆なのがどうにも落ち着かない。

ビルダーさんには悪いが坂口提案は逆にさせてもらった汗(店舗設計では入り口を下にするケースが多いけど、今回はそれとも違うみたい?まいっか。)


ってことで、図面をひっくり返して…玄関付近を拡大↓




↑あなたはどうですか?
「玄関入った正面にトイレドア」気になりませんか?


全体的な配置から、トイレはここがベストな場所だよな…とは思った。

ただ、ドアの向きがどうにも気になる。
そこで、こんな風はどう?と、まずはラフ案を作成↓




↑トイレを横向きにして、ドアの正面が玄関を向かないようにした。

玄関を入って右手にあったSICを左手に変更。
玄関ホールに窓も設置できていいんじゃないか?と。

ただし、SICを設けることでどうしても玄関自体の巾が広く取れない。

Yご夫妻さまもトイレドアの件は気に入ってくださったが、玄関巾の件は「確かにね…」と。

 

「玄関ホールの正面にトイレドア問題」はあっさり解決したんだけど、その代わりに「SIC問題」が浮上してしまった汗





そもそもSICが絶対条件なのか?とお尋ねすると、別にそうではないとおっしゃる。

Yご夫妻さまが玄関に求めることは…

  • ウォークスルーのSICは別にどちらでもよい
  • 玄関が広くなるならSICは無くてもよい
  • 普段の使い勝手を優先したい


…ということだったので、それではこんな風はどうでしょうか?とさらにご提案。

まずは当初の原案、その下に坂口提案

 




↑先に提案した横向きトイレはそのままに…

  • 玄関巾は、当初原案1.5m→ラフ案1.35m→今回提案2mに
  • ウォークスルーのSICをやめて幅広な玄関収納とした
  • 収納の扉は開けっ放し利用が容易な3連引戸とした
  • 常に広い玄関ホールとできる


Yご夫妻様は、ウォークスルーのSICにこだわっていたワケではないので、常に玄関ホールが広く使える、この提案を気に入ってくださった。




 

玄関収納の扉は何がいいのか?


玄関収納の扉は一般的に「クローゼット折戸」で提案されてることが多い。

例えば…

 

 

■①↓扉は折戸で、収納内部が全体的に土間の場合。


【リクシル クローゼット折戸】


■②↓同じく扉は折戸。全体的に室内と同じ床高の場合。


【リクシル クローゼット折戸】

 

 

■③↓同じく折戸だが、半分土間で、半分床高の場合。


↑閉じた時
↓開けた時

【パナソニック クローゼット折戸】



収納扉が折戸の場合、床の形状が土間なのか、室内と同じ床高なのか、半々なのか、どちらにもかかわらず採用しやすいのがメリットである。


・・・・・


今回「普段の使い勝手を優先したい」とおっしゃるYご夫妻さま。

全部土間だと靴を履いて靴を取りに行くのは面倒だし…
全部床だと濡れたモノや汚れモノを置きづらいし…

ということで半分土間で半分床高がいいよね、と。

じゃあ、これで…?

とはカンタンにいかない…んですよ汗

なぜかというと、「できれば普段は開けっ放しで利用したい!」のに、開けた状態の折戸が邪魔になるから。


土間側だけならまだいいけど、ホール側は開けた扉がそこそこ通行の邪魔なんだよね…

それと折戸って、引戸に比べて、なんとなく開いてる状態が「いかにも開けっ放し感」があると思わない?(私だけ?気のせい?)






そこで提案しようと思ったのが「3枚連動引戸」である。

扉が2枚の引戸でもいいんだけど、全開時になるべく広く開口を確保したいので、あえて3枚をご提案。



 

折戸の代替として「3枚連動引戸」にする



【Ykkap 3枚連動引戸】

建材メーカーの3枚連動引戸は大きく分けて2種類ある。

  1. 部屋と部屋の間に設けるタイプ
  2. 収納専用タイプ(←部屋用に比べるとかなりお値打ち)


ここは収納なので、じゃあ2の収納用で…

とはカンタンにいかない…汗←またしてもっ


なぜかというと、「半分土間にしたい」ということは、床に段差があるので、扉の下にレールが設置できないから。


【YKKap 収納引戸】

収納用の3枚引戸は下にレールが必須なのだ。

でも半分は土間にしたい!

じゃあどうするか?


それは…やや値段アップとなるが、1の部屋用の扉にすると可能だ。


収納用ではなく、部屋用にすると一部が土間だとしても可能とできるから。

ただし条件があり…、上吊タイプにして、引戸を受ける下レールの代わりに「ガイドピン」の設置が必須




扉は上で吊るタイプなので引戸がゆらゆらせず真っすぐ進むためにレールが必要なんだけど、それが床に段差があって設置できない変わりに、ガイドピンが土間ギリギリに設置できるのなら可能となる。

半分土間とはいかないが、「ガイドピン」設置位置ギリギリまで土間にできる。
この場合の土間は全体のおよそ1/3。




↑つまり、土間は収納の1/3にはなるが、引戸とすることが可能なのだ。


コストアップにはなるが1の部屋用が向いているとケースは…
 

  • 収納内の床に段差を設けたい(土間と床高)
  • 開けっ放しでの利用率が高い
  • 開けっ放し時、扉が邪魔にならない方がいい
  • 開けっ放し時、見た目が折戸よりもスッキリさせたい
  • そもそも折戸が好きではない

という方。

Yご夫妻さまも「開けっ放し率が高く、扉が邪魔にならない方を優先したい」と、この提案を採用されたのだった。




 

実際に暮らしている様子


Y夫さんより当初頂いた写真の中に、玄関収納がなかったのでリクエストしたところ…
すぐに暮らしているそのままの状態を撮影してくださった。

「下駄箱、乱れてますが…」と言いつつ
「…使い勝手良しです!」と写真を送ってくださったY夫さん。

Y夫さん、プライベートな部分にもかかわらず、貴重なショットをありがとうございます!



↑閉まっている状態


↑開けた状態

↑開口部全景


↑ホール側から見た状態

 

ただいまー!と玄関に入り、靴を脱ぎつつ手に持ち、すぐ横の棚へポン!と置くことが、この配置なら大した手間じゃなくできそう!

なので、玄関に家族の靴がズラーっと並ばずに済みそうだな、と!

 

出かける際も、今日はこっちの靴にしようかな…と、昨日の靴との入れ替えもストレスなくできそう!




家族がバタバタ出入する日常ならば、玄関収納の扉が全開も大して気にならず、
それよりも、収納したモノが一目瞭然の快適さの方が優勢だと思う!

突然の訪問者(宅急便など)があるときは、玄関ドアを開けるタイミングでサッと閉められる!

ウォークスルーのSICも魅力だがそこそこ場所を取られる。

が、これなら常に広々した玄関ホールとできるのでメリットは大きいと思う。


収納扉を「折戸」→「部屋用の3枚連動引戸」にしたことによるコストアップは確かにあるが、得られるメリットも大きいので、選択肢としてはアリだと思う。




■ちなみに、収納内に土間は無くてもよい、すべて床高でよいが、3枚連動引戸にしたい!という場合、

 

つまり↓収納の中がこちらのように床高でOK!という場合は…




「下レールが必須の収納用3連引戸」が対応可能なので、部屋用を使うよりコストを抑えることができる。


我が家の「譲れない部分」がどこか?をハッキリ決めるとよいかも!

 

 



 

重箱の隅をつつくような話だけど…ちょっとおまけで


Yさんちの3枚連動引戸のガイドピンは建具と同じ色になっている。



これはコレで全然ありだと思うが、
床の色と違うことが気になる、という人がおられるかも?と思ったのでおまけ情報を。


建材メーカーによるけど、建具が白でもガイドピンは床色に近い色を選択することができる。

例えばYKKapは選択肢が4色。


リクシルは選択肢が8色。


ガイドピンの色もこだわりたい!という場合は、色指定をされるとよいな、と。





もう1点、補足すると…

建材メーカーのカタログに載っている規格寸法は、
全体横幅が1マス分、1.5マス分、2マス分、3マス分、4マス分という設定が大半である。

※1マス=900~910㎜とする



Yさんちの玄関収納幅は↑2.5マス分なので、規格寸法より0.5マス分、巾が広い。
そこで2.5マス分で1つの建具になるよう「特注対応」としている。

特注は、製作可能範囲であれば多少追加となるが我が家にピッタリの巾にできる。




 

まとめ


玄関に設ける収納の扉をどうするか?という視点で見た時…


■折戸は床の状態を気にせず設置しやすい!

  • 収納内の床の状態が「全部土間」「全部床高」「一部土間で残りが床高」いずれにも対応可能。



■引戸

  • 同じ幅の時、なるべく開口幅を広くしたいので「2枚」よりも「3枚」にするのもよいかと。



■3枚連動引戸は床の状態に注意が必要

  • 収納内の床の状態が「一部土間で残りが床高」のときは「ガイドピン」を用いた引戸にする作戦が有効。
     
  • 「ガイドピン」が可能な3枚連動引戸は「収納用」ではなく「部屋用」となるため割高ではある。
     
  • 「ガイドピン」の色を床に合わせたい場合、選択可能。



これらを駆使すれば「こだわり屋さん」のあなたでも満足できる玄関の収納にできるかも!

担当の設計者さんに相談しつつ検討してみてはどうでしょうか。


最後に…

玄関入った正面の写真も!



Yご夫妻さまのセンスの良さがうかがえる一枚!

 

 

次回もYさんちシリーズで…

 

 

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