こんにちは。
あおい堂鍼灸院の今泉です。
鍼灸治療で大事な事の中の一つはツボ(経穴:けいけつ)です。
とは言っても円形脱毛症であればドコとドコのツボにホニャララすれば良くなる……等というセオリー、実は無いのです。あくまでも施術を受ける方の状態によって変わりますし、見立てが人によって異なる事もシバシバあります。故に10人の鍼灸師が居たら10通りの施術方法が有る事でしょう。でも東洋医学の理論的な事を勉強していると施術者は違えど大体似たようなツボを使っているような雰囲気があります。その中でも特によく用いられるツボはタイトルにもある『三陰交(さんいんこう)』ではないでしょうか。本日の記事はこの『三陰交』にフォーカスして書いてみたいと思います。
モノの本によると三陰交は効能として血を増やすなどと書かれています。東洋医学では髪は『血余(けつよ)』とされている事もあり、髪のトラブルである円形脱毛症は血に関わってくる事から三陰交が用いられるようです。血余に関して世間では血(ケツ)の「余り」であると解釈されることが多いのですが私は過去記事でも書きましたが「余り」ではなく、血の働き「そのもの」と解釈しています。髪が存在する事が健康であるならば東洋思想的な観点から何かの余剰が健康(≒中庸)には繋がらないと個人的に考えています。
また三陰交は婦人科疾患でも頻繁に用いられます。実はこれも血と関係してきます。なぜなら女性の月経における経血は純粋な血液ではありませんが「経血」という「血」の一種として認識されるからです。同時にこの三陰交は足の太陰脾経(あしのたいいんひけい)という経脈(けいみゃく:気の流れ道)に属すツボです。足の太陰脾経とは足の親指から始まって内股を通り子宮に絡みながら身体の上方へと通っている経脈です。そしてこの足の内側、特に三陰交のある辺りは太陰脾経のみならず、少陰腎経(しょういんじんけい)と厥陰肝経(けっちんかんけい)という経脈が密になり通っています。太陰脾経・少陰腎経・厥陰肝経の3つの陰の経脈が交わる事から三陰交と名付けられています。
ここで東洋医学の前提としての陰陽論を思い出してみましょう。
東洋医学の陰陽とは東洋思想の大本である『易経(えききょう)』に拠ります。易は陰と陽の相反する2つの要素が相互にバランスを取りながら物事が変化していく様を指し示します。
この思想における東洋医学の陰陽の陰は「血」、陰陽の陽は「気」とされます。
さきほど三陰交は3つの陰が交わると説明しました。そして陰は「血」です。
この事から鑑みても三陰交は「血」に大きな影響を与えうるツボである事が分かり、血余である髪の病気の円形脱毛症にも大きく関係してくることが想像できます。よって円形脱毛症の際に三陰交へのアプローチは有益である事が多いと思います。
ここまで書いただけでは従来から有益であるとされているツボが有益だと書いただけの記事で終わってしまいます。つまらないですね。
でも本日どうして三陰交について書いたのかと云えば、このブログを読んでくださる人にもう少し違った視点でもツボを見る事が出来るように成っていただけたら役に立つ事も出てくるのではないか……という思いがあります。とは言えここからは私独自の感覚なので世間的にどう思われるか分かりませんが例のごとく私の鍼灸師としての経験則です。
この先は断定的な書き方もあるのですが「~が多い」と云う風に翻訳しながら読んでみて下さい。
まず経験則として三陰交に何も考えずに鍼をすると便秘気味に成ります。
何故かというと先ほど書いたように三陰交は「陰」の気が強いのです。鍼の刺し方にもよりますが三陰交によって陰の気を補った結果、陰の性質が強まって便秘に成ったのです。
陰の気を補い、陰の性質が強まるとなぜ便秘になるのか。陰陽論での陰陽は「気」と「血」の他、寒熱としても読み解かれます。その考えを応用してみると陽は拡散、陰は収縮とも解釈できそうです。分かりにくければ季節に当て見ましょう。暑い夏は陽の季節です。夏は開放的であり活動的でもあり、万物が緩くなる季節です。これが陽の性質。
一方で寒い冬は陰の季節です。寒い冬には様々な生物は活動を控え家の中や巣の中でじっとしていることが多いでしょう。これを身体に置き換えると陰が増せば身体の活動は控えめになり、冬の動物たちのように大人しく動きが小さくなります。これが陰の性質。
陽の性質は外へ向かい、陰の性質は内へ向かいます。
そうすると陰を補ったことで身体の中にある便が外に出にくくなります(内側に向かう為)。それは即ち便秘です。「気」の働きで言うところの固摂作用(こせつさよう:留め置く働き)に相当すると思います。とは言え便秘は困るのでこの場合の対処の方法はいろいろあるのですが陰を瀉す(しゃす:散らす事)か冷たい陰を逆に温めて弱らせてみると良いと思います。助産師さんから話を聞いたことがあるのですが出産の時、三陰交が隠れる位の靴下を履かせる事があるようです。三陰交の辺りが冷えていると出産がなかなか進まないので靴下で温めるそうです。この現象なども陰が冷えて補されると胎児を始め様々なものが身体の内側に向かうので外に出にくく成って生みにくく成る。逆に三陰交を温めると陰の性質が弱り、胎児が身体の外に出やすくなるのだと思います。
では身体が冷えた時に大小の事でトイレに行きたくなるのは何故か?「出る」のだから外側に向かう働きではないのか??そう思われる事でしょう。きっと思ったはず(笑)この現象を考える時は出る物がどの様な状態のモノかを想像してみましょう。小さい方は言わずもがな水分です。大きい方はお腹が冷えた時に出るものは硬いものではなくて、下し気味な感じだと思います。つまり水分が多いグルグルギュゥゥ~ッ。小さい方にしても大きい方にしてもどちらも水分が多く出てくるのです。水(分)は本来陰の性質が強くて冷たいものです。身体が冷えて陰陽バランスが崩れたので身体にある陰分(水)を排出したのです。そうすると身体の中の陰が減って陽の割合が相対的に多くなるので身体が温まります。身体の質量が少ない方がその後身体を温めやすく成りますね。寒熱は逆ですがモノがギチギチに詰まった冷蔵庫とスカスカの冷蔵庫、どちらがよく冷えますか?物理法則です。冷えた時の大小のトイレ事情の真意は身体の防御策でもあったというオチなのです(私の説ですが)。
なんとなく掴めましたでしょうか。
でも本日の記事の目的は便について熱く語りたかったわけではありません。
やはり円形脱毛症について言いたかったのです。
上記の長々と書いた理論を円形脱毛症に応用するとやはり抜け毛だと思います。
抜け毛は身体から離れる向きの現象ですからこれを止めるには陰の力、言い換えれば血の力が必要です。髪は血余、血そのものですからやはり血の力が弱ければ引き止めにくく成ると思われます。そこでかなり大雑把ではありますが抜け毛を止める為には三陰交も含めた陰のツボを見直していく必要があると思います。この記事を読まれている方々であれば家でせんねん灸などをされているかもしれません。内くるぶしから内股を探ってみて、もし冷たい所や右足左足で凹凸の加減の異なる部位があればそこにせんねん灸を据えてみるのも良いと思います。お灸の場合は出産時の靴下と異なり一瞬の熱さなので1~3壮程度の少数での刺激であれば補瀉あまり意識せずとも良い方へ働いてくれると思います。ここでの注意点は両足同じ部位に同じ数だけ据える事です。
抜け毛の対処は分かった。では生やすためにはどうしたら良いのだ?と思われたかもしれません。
抜け毛は身体に引き留めておく力(陰の力)が弱いのに対して生えない方は拡散する力(陽の力)が弱いものと考えられます。生える、伸びるというのは身体の外側に向かう現象なので陽なのです。
この場合は合谷(ごうこく)が適しているように思えます。合谷のツボとしての作用は理気(りき:気を巡らす)です。合谷は陽明大腸経(ようめいだいちょうけい)の経脈に属するツボで陽の気が強くツボの性質としても「気」を巡らす強いツボです。ここもせんねん灸で良いのですが、目立つ場所なので火傷に注意しましょう。よって外見上の事も勘案してせんねん灸1壮で十分です。
まぁお灸をする・しないに関わらず、症状の状態によって必要とされる事柄が異なってくるのだと思ってみて下さい。「気」だけを補す、または「血」だけを補すやり方では対応できる症状がとても少ない。中にはそれがピッタリくる症状もあるとは思いますがピッタリこなければなんだかなぁという結果に成りかねません。このブログの初期に『髪はコゲである』というコゲ理論成るものを打ち立てましたが、髪を治す為にこの考えは今に成っても引き続き重要な考え方だと思います。
よければ参考にしてみて下さい。
≪参考過去記事≫
↓コゲについてはこれとその続きを!
↓身体の陰と陽とは
胃が元気になる気がします(個人的な感想)。
副作用はお腹がすくこと?!
亜鉛も銅も入ってます。
チロシンも入っています!
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