最初は太い？

こんにちは。
あおい堂鍼灸院の今泉です。

円形脱毛症は当初髪が抜けるというよりも髪が切れる事が殆どのケースにおいて観察されます。

私はこの現象こそが円形脱毛症の時に身体に何が生じているのかを推し量る手がかりだと感じます。

というわけで改めて髪が切れる様を見直してみたいと思います。

まず切れる髪は萎縮毛や断毛と呼ばれます。そして円形脱毛症を萎縮毛の視点で大別すると３種類に成ると思います。

萎縮毛が……

黒いままのモノ
茶色く変化するモノ
黒茶ハイブリッドなモノ

この３種類です。

まずは例として切れてしまった状態の画像から。

画像の中心に赤丸で囲まれた短い髪があります。この髪を拡大したものが緑の資格で囲まれている髪です。この髪は最初からこの短さだったわけではありません。普通の髪として生えていましたが何らかのトラブルにより髪に脆い部分が出来てしまった為に髪が切れてしまったのです。毛先は重力により落ちますが根元部分は毛穴に残ったままの状態です。これは萎縮毛や断毛などと呼ばれます。ではこの萎縮毛、よーく見てみましょう。よく見ると毛先側（画像中央側）は少しだけ太く、そこから根元方向は逆にやや細く、根元は毛先ほどではありませんが太さを若干回復させています。例えるならば『こけし』の様なフォルムです。仮に「こけし様現象」とします。

現在の毛先が太い事を確認出来たら今度はこの髪が切れる前の画像を見てみましょう。

それがこちら。

画像上方の根元が赤丸で囲まれた髪が最初にお見せした萎縮毛の1週間前の画像です。

そうです。

この画像は1週間前はなんでもなかった髪が1週間後に見た時には切れてしまっていたものなのです。画像下方にありますが普通に生えているように見えた髪の根元を拡大して良く見てみると根元だけが太く成っているように見えます。ここから髪が切れるようになったのは時系列として髪が太くなってから後である事が判明します。

まずは太くなった後に髪が切れていると覚えておいてください。

そしてこの頭皮に残った萎縮毛の毛先が太い現象は何もこの画像の人だけではないのです。頭皮に残った萎縮毛の毛先が太い「こけし様現象」はかなり高頻度に様々な人の頭皮で観察されます。なので「こけし様現象」は円形脱毛症を代表する現象であると思います。それはそのまま円形脱毛症で生じている現象は様々な脱毛パターンがありながらも多くの場合、同じ原理で発症していることを示唆すると思います。

ではこの「こけし様現象」から円形脱毛症で何が起きているのかを洗い直してみましょう。

まずは免疫の関与に関して検証してみます。

現在主流の円形脱毛症の病理に免疫異常があります。これは免疫が何故かわからないが突然髪を攻撃し始めるというニュアンスのモノです。

でも「こけし様現象」の視点から免疫異常説を見ると「？」が大きくなります。なぜなら切れる直前は髪が太くなるのです。

免疫異常説で想定してみますが普通に考えると切れる部分がもっとも免疫の強い攻撃を受けていたと思います。しかし髪は太くなってから切れているのです。もし免疫が正邪の見境なく髪を攻撃していたとするならば髪は太くなり得るのでしょうか。切れる部分に向けて根元が細くなる一方であるのではないでしょうか。

それなのに太くなっている……。攻撃されると髪は太くなるのでしょうか。それなら最終的に抜けずに極度の剛毛に成るのではないだろうか。ここから「こけし様現象」が見られるタイプの円形脱毛症に関しては免疫が異常をおこしたという免疫異常説は少し考えにくいように思えます。

では全く免疫の関与は無いかとするとそうでないかもしれません。私は髪が切れる現象に免疫が関わっているとするならば「こけし様現象」の細くなった部分が免疫の関与した部分であると思います。

切れ残った萎縮毛の太い部分を周辺の健常毛と画像上で並べてみると萎縮毛の太い部分は健常毛と同じかよりも太い事もあるのです（過去記事「委縮毛から推定する」を参照の事）。つまり太い髪は太すぎる異常毛であるとも言えます。この異常を感知した免疫が攻撃を仕掛けても、それは免疫の通常の働きであり何の不思議もありません。言い換えれば髪が急に太くなるような異常な働きを見せたので正常な免疫が正常に機能したのです。ここからは免疫が異常を起こしたのではなくて髪の方が異常を見せたことが推測されます。

一方で「こけし様現象」について過去記事『白髪の成り立ち』と同じメカニズムがあるのではないかと考えています。詳しくは過去記事を読んでみて欲しいのですがざっと内容を書くと『白髪は毛根のメラノサイトが交感神経の亢進によりメラニン色素を多く作り出すことから始まる。だがやがて過活動なメラノサイトが疲弊しメラニン色素を作れなくなるため髪が白髪に成る』というものでアメリカのハーバード大学の研究発表です。

類推すると毛母細胞が猛烈な勢いで髪を作り出したので毛根が疲弊して髪を作り出せなくなった。故に切れる直前は髪が太くなり、切れた部分は毛根が過活動により疲弊しているので細い髪しか作れなくなっている……そして最後は毛根の活動が止まるのではないだろうかと思うのです。

一方で冒頭で書いた茶色くなる萎縮毛なのですが、こちらは交感神経の過活動でメラニン色素（ユーメラニン）が作れなくなったと説明できます。

こう想定すると円形脱毛症の原因と根強く言われるストレス説は整合性が増すように思えます。

今までも書いていますがストレスの内容は関係なく、ストレスを感じている人の身体の動かし方、つまりは筋肉の動かし方で部分的な交感神経優位の場所が形成される事による毛根の過活動（トリガーポイントの関連痛領域脱毛）。または単純にストレスによる交感神経亢進でメラニン色素が過剰生産され、同時に毛根も疲弊してしまうのかも知れません。

こうなると思い出す言葉があります。

過去に書いていますが『苦髪楽爪』または『苦爪楽髪』です。

意味は苦労すると髪が伸びて、楽をすると爪が伸びる。または苦労すると爪が伸びて楽をすると髪が伸びるです。これはこの言葉自体があやふやであるので逆の意味をもつ言葉があるのですが、それでもそれなりに世間で通用してきたのは多くの人が容認できるような内容だったからだと思います。そうすると苦労する事は同じケラチンという材料で作られる髪や爪という器官の生成に大きな影響を与えることが分かります。ただ過去記事でも書きましたが第一義的に苦労とは食の苦労であり、少食を意味すると私は考えています。少食、即ちハングリーなのですが、ハングリーは交感神経を研ぎ澄まします。少食は円形脱毛症を治すにあたって良い事だと思います。これは経験則上間違いは無いと思います。髪も伸びるし太くなる。でも本日の記事的に太くなると切れる事もあるのでは、手放しで喜ぶことはできなくなります。アッ……

しかし萎縮毛生成に関わる交感神経優位は少食で生じるような程度では無いと思います。ですので安心して食べ過ぎないようにして良いと思います。おそらく食べる量が円形脱毛症に関係している核心的部分は血糖値ではないかと感じています。

そして抜けてしまう髪は太くなる萎縮毛だけではありません。

太さの変化する萎縮毛は大抵の場合、色は黒のままです。しかし萎縮毛には茶色く変化するものもあります。こちらの場合は何故か太さの変化が少ないのです。

冒頭で書いた萎縮毛の黒と茶色のハイブリッドタイプは黒の部分は太さが変化しますが茶色くなった部分に関しては通常の髪よりもやや細い感じはするのですが太さの変化は殆ど無いようです。そして頭皮に残ったハイブリッドタイプの萎縮毛をみると必ず毛先が黒で根元部分は茶色、もしくは白髪です。逆になる事はまず無いです。

これも円形脱毛症の成り立ちを時系列で語る重要な証拠になると思います。

どちらにしても免疫は円形脱毛症の根本原因に深く関わっていないのではないかと思います。

病院での治療に局所免疫療法があります（SADBEやDPCP)。これらは免疫の目を髪の毛から逸らすので円形脱毛症が治ると説明されています。確かに有効率は非常に高い治療法です。でもこれは果たしてその通りなのか。私は頭皮に微量な化学物質が残留し、微かな炎症を続けることによって持続的な血行促進をしているのが効果の秘訣ではないかと疑っています。例えば今の季節、花粉症がまだ猛威を振るってます。これは花粉が免疫を刺激しているわけですが、この花粉とSADBEやDPCPの違いは何なのでしょうか。花粉が免疫の目をそらして花粉症の季節だけでも円形脱毛症が緩和する事はないのでしょうか。

ここまで思いを巡らせると円形脱毛症は自律神経の働きによって結果が左右されることとなります。

自律しているので意識で思うように変化させることは困難ですが、その中でも筋肉の動かし方は意識をもって自律神経にアプローチする最もやりやすい方法であると思います。

運動や呼吸法でも良いと思います。楽しく夢中になれるような運動はおススメだと思います。

良ければ参考にしてみて下さい。