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『粛正の扉から3』


2001/1/5

俺が嘘を覚えた日
そして 嘘を重ねる事の罪悪感を消し去った日…

あの日から 君の感情がどう動いたのかは解らない
毎日100通にも及ぶメール
『近ければいつでも逢えるのにね…』
君のその一言で俺は(この距離を失くしてしまおう)
そう思ったんだ…

君との待ち合わせは 葛西臨海公園
赤色灯だけがその存在を示す まだ工事中の観覧車
一時間早く着いた俺に 今公園の入口だと告げる君の柔らかな声
駐車場へと緩やかに滑り込んで来る 君のGTSが目に映ったんだ
二週間ぶりに見る君と 今日はお揃いのロングコートで…

一月の海風は 火照った肌を柔らかく撫でるように
君と肩が触れ合う度 ふたりを擦り抜けて…
海沿いの遊歩道をずっと歩いたね

闇に舞う波飛沫 施錠された展望塔
ドアに触れたとたん鳴り響く防犯ベル
初めて 互いを握り締めて駆けたよね

自転車の警備員をやり過ごすと
『あめからのお年玉です』
そう言って君は 俺にキスしたんだ…
抱き締めた長い髪 その肌の艶めかしさ 冷えた唇
今でも…

そして もうひとつ忘れられないもの
日常に制限された俺を見送る君が 初めて口にした言葉
『またね りゅうき…』

『粛正の扉から2』

2000/12/22

二日後のチャでの事…
久しぶりにあめと一緒のチャで俺は 沢山の戸惑いに退室しようとしたんだが
仲間のひとりが
『りゅうとあめは逢ったことあるんだよね お互いどんな感じだった?』
そう…
こいつにだけは あめと逢ったこと話しちゃったんだよねぇ…

『あめの可愛さに圧倒(汗』『りゅうの金髪に圧倒(笑』
ここで止めればいいものをこいつは
チャ内最年長の俺に興味があるもんだから
『ねぇあめ りゅうは芸能人だと誰似?』って…
『誰似ってよりキレっぽい顔してた…』
(キレてた?つうかそんなことより 俺はすごく気まずいんだから もうその話はやめろってば…)
『そういえば りゅうはあの日すごい熱だって言ってたけど もう風邪は治ったの?』
(お前それだけは禁句だって…)
『りゅう メールするね…』

落ちちゃったじゃん…

『なんで熱があるって言わないのよ 風邪を馬鹿にしちゃいけないんだからね』
それでも逢いたかったんだからしょうがないじゃん…
逢ったらさらに好きになっちゃったみたいだし…
『…りゅうき…あたしの左手の指輪見なかったの?』
そう言われれば確かにあったような無かったような…
見てたの殆ど顔と 首筋の肌が綺麗だなと…
『りゅうきと同じであたしも結婚してるの これじゃダブル不倫になっちゃうでしょ…』
俺はそれでも構わないけど…?
『ん…そうね要はHしなければいいのよね… それが問題じゃなければ あたしもりゅうきの事好きなんだし…』
そうだね 身体の関係持つと いつかは別れることになるだろうからね…
プラトニックラブか… それもありだよね
『りゅうきとは仲良くできそうだね…』

彼女は言った お前と呼ばれるのが嫌いな事
暴力的な事が嫌いだと…

俺は… 君の前で自分の事が語れなくなった
そして… 偽りの自分でもいい 君といられるならば…

そう思ったんだ…

『粛正の扉から1』


2000/12/20

千葉県 穴川インター近くのイタリアンカフェ 土砂降りの雨の駐車場…
一時間も前から 俺は彼女を待っていたんだ
初めて会う約束をした 三日前のあの日は
俺の仕事が長引いて 二時間前にキャンセルしちまったし…
だから遅刻でもしようものならカッコもつかないしね
まぁ 待ち合わせの店まで 三時間かかると思ってたら
二時間で着いちゃったってのもあるんだけど…
待ってる間 色々と思い出していたよ

彼女と知り合ったのは 携帯チャットなんだけど
i モード普及初期あたりの 俺はまだチャを始めたばかりで
まともな会話さえ出来なかった頃でね…
彼女が初めてだったね こんなにもスムーズに会話が出来たのは…
一時間位話してみたんだけど なんか彼女とはこれきりにしたくなくてね
初めてチャ内で俺のメールアドレスを出したんだ

チャを落ちるとすぐ 彼女からメールがあって
その夜からメールを交わすようになったんだよね…

その当時 俺は仕事で埼玉県H市にいたんだけど
彼女は千葉県の中央辺りに住んでいて
関越道→首都高→東関道→京葉道と走り 高速を降りてから40分
トータルで2時間10分も走れば 彼女の家なんだよね
これが俺の居住地の栃木からだと 3時間~3時間半位…
当然交通費もバカにならないし 時間もね…

まぁ… 埼玉にいるのを幸い逢う事にしたんだが
当日 俺は風邪をひいていて
熱も38度以上あり 朦朧としていて
それでもたまらなく逢いたくて 車を走らせたんだ…

首都高速 浦安を過ぎた辺りから雨が降り始め 12月の寒さを際立たせていた
待ち合わせの街に近付くにつれ 雨は豪雨と呼べるものに変貌し
俺は不安に苛まれていったんだ…
先日 俺の都合で約束を守れなかった事もあり
初対面で顔も知らない ネット上だけの友達に会うため
この雨の中を彼女は来るのだろうかって… だから…
店の場所を確認すると称して 彼女に電話してみたんだ…

受話器の向こう側 いつもと変わらぬ口調で 彼女はすでに家を出た事を告げると
道路の渋滞で もう少し時間がかかる事を詫びた…

りゅうき-関東全域・東北の一部を勢力圏にする社寺建築業 栃木県在住の32才
彼女(あめ)-M市内の病院に勤務する看護士 千葉県在住の24才

ふいに電話が鳴り 『着いたよ』って声に顔を上げると
初めて見る 馴染んだ笑顔がそこにあった…
隣の駐車スペースに 車が入って来たのさえ気付かない程 思考が回帰してたんだよね…
熱のせいもあるんだろうけど…

彼女は黒のロングコートに キャンディレッドのセーターで
その異国風の顔立ちと相成り 妖的なまでに美しさを醸し出していた
緊張のあまり言葉を失くす程にね…

店に入り席に着くと 間近で見る君は 真っ直ぐな力強い視線で俺を見つめたんだ…
『初めまして あめです』
俺はもう眼を逸らす事も出来ずに
何を口にしているかさえ解らない程 君に引き込まれて行った…
一方的に質問を浴びせる君 ただ答えるだけの俺
実はもう 店の暖房が熱のある身体にはきつくて 座っているのさえ辛いくらいで…
でも君から眼を逸らしたくなくて…
ん… たぶん暗くつまらない奴に思えたんだろうな
2時間くらい話して別れる時
『またね』って言う俺に 君は『じゃあね』って…

帰り道の外環状線 いつも通り話す事出来なかった悔しさと
さらに上昇した熱のせいで 俺はSAに車を止め朝まで眠り続けていた
彼女からのメールにも気付かずにね…

『来てくれてありがとう 気をつけて帰ってね でもりゅうきって見かけよりも大人しいんだね』
まぁ確かに 俺が風邪で熱があるなんて言ってないし
気付かれないようにしてたから 知るはずもないだろうしね…
メールの内容の素っ気ない文章から
もう会うこともないんだろうなって その時思ったんだ…