自分、南極について今一度語っていいっすか。(いいよ)
あの南極行きから早1ヶ月以上が過ぎた。なんだか今になってじわじわと南極の格別感が湧き上がってきている。時差すごい。リアルタイムで書いた記録と重複する内容もあるが、あらためてあの南極行きを書き記しておきたい。
まず、あの氷の青さ。
青い。
あの曇り空の灰色の世界で一際目を奪う青さ。なぜ青く見えるかというと、色んな色が混ざった太陽の光が厚い氷を通過するうちに赤色が吸収され、青色だけが残るためだ。普通の氷は表面にたくさんの気泡があり、光が乱反射することで白っぽく見えるが、氷河や南極の氷は長年圧縮されて気泡をほとんど含まないために光が内部まで入ることができ、その過程で赤色が吸収されるというわけだ。
あのちんぷんかんぷんだった英語の船上講義でもきっとそんなことを話していたと思われる。なるほどなるほど。
写真右の巨大な穴ボコ。一般的な洞窟の暗闇じゃない。奥深くまで青色。奥に行くに従って濃くなるグラデーションに吸い込まれそう。べったりとした青色でもなく透明感があり、氷自体がぼんやりと光を放っているような色でもある。あのラピュタの飛行石の洞窟みたいな、壁の内側から光っているような…うーん、あそこまでピカピカでもないんだけど。うまく言えねえ。
それにこの大きな穴ボコだけじゃない。細かな割れ目全てが青いのだ。目を奪われるとはこのこと。取り憑かれたようにいつまでも見ていたかったし、未だに忘れられない魅惑の青色だ。
あとツアー序盤で見たこの海の青色。これまたなんとも言えぬ濃い青。海は青いなとは言うけど実際の海が間近でこんなに青く見えたことはない。
南極はどこも絶景ではあったが、個人的には南極3日目に行ったPleneau Islandの景色が一番印象に残っている。抜けるような青空の輝く広大な景色ではなく、このどんより曇天のうっすら霧がかった景色だ。
この静寂。
写真から伝わるだろうか。かすかに聞こえるウシュアイア号のエンジン音もゾディアックボートで遠ざかればほとんど聞こえない。ボートが前進する時のモーターも切ってしまえばあとは慣性で進むボートが鳴らすぴちゃぴちゃとした水音だけ。
あまりにも静かで、人を寄せつけない聖域みたいな雰囲気があった。話すのも憚られる空気。9人が乗っているボートで誰も口を開かず波のない水面をすーっと漂うひと時。あの静寂も相まってあの極端に彩度の低い景色が幻か何かのように強烈な印象として脳に刻まれている。
私がそんなヒリついた雰囲気に呑まれているのに、お構いなしにペンギンがいる。
ふりむけばボートのすぐそばを5、6羽でぴちゃぴちゃスイスイ。自分たちの領域でのびのびと好き勝手にやっている。完全にこっちがペンギンたちの住む場所にお邪魔してる立場だ。ルールとして謎の病原体を持ち込まないために南極動物から5mは距離を保たなければならないし、海や地面を汚染しないために消毒など徹底するのも当然のマナーと言えよう。
クジラももうすぐそこに。南極ツアー中にクジラは幾度となく見たけれど、高く噴き上がる潮や背びれ、そして一瞬この尾びれが見えるだけで結局その全体像を見ることはなかった。一度ウシュアイア号の下を通ってくれたがはっきりとは見えず。
南極にいるクジラはシロナガスクジラ(体長25メートル超)、ナガスクジラ(20メートル超)、ザトウクジラ(15メートル)、ミンククジラ(10メートル以下)と色々いるらしい。チラッと調べた感じ、よく見たのはミンククジラな気がするなー。……分からんな。いったいあの水面下にどれほど大きな姿を潜めているのか。
こんな幻のような景色の中にかわいくて小さな生き物がぴょこぴょこしていたり姿の見えない巨大生物が蠢いていたりする様は、まるで異世界転生モノのアニメに飛び込んでしまったみたいだなと思ったりした。転生される主人公ってこんなかんじか。
他には気がつけばそこに寝そべっているアザラシ。
この時期レアなシャチ。
延々と舞い続ける巨大なアホウドリ。
(カモメじゃなかった。Albatross、アホウドリ。カモメもいることにはいる。)
南極ならではの動物はわりと見られたほうだと思われる。
もちろん光あふれる壮大な景色にも素晴らしかった。南米大陸南端から遥々2日かけてやってきた地点は南極大陸にぴよっとのびる細っこい半島の先っちょでしかなく、あの奥に見える沿岸の向こうにあのオーストラリアよりも大きな大陸が広がっていると思うと圧倒される。地球、広すぎ。
他のどことも違う見ず知らずの自然がまだまだ続いているというのだから、私ってちっぽけだナとか思ってしまうのも仕方がない。ペンギンも人間も同じぐらいのちっぽけさ。
でもなんだろな、実はこういう景色は私にとって人生を揺るがす大感動‼︎ってほどではなかったことをここに正直に記す。
素晴らしいのは確かなんだけど、白い雪と氷に覆われた陸地は雪山登山で見る景色とも通ずるところがある。高いところから見渡せるのもあって、心を打つレベルで言えば登山で見る景色のほうが感動的だった。
たぶんツアーで連れて行かれているのも案外感動しなかった一因だと思う。ぼーっと船に乗っているだけでハイッと景色を見せられても、それがどこなんだか何なんだかよく分からないままにまた次へ連れて行かれる。あのアメリカのジョンミューアトレイルだって自分で地図を見て己の足で歩いたからこその感動であり、あれがバスで絶景ポイントを巡るだけのツアーだったら一生物の思い出にはならなかっただろう。
団体ツアーは異文化なツアーメイトと英語で(時にはスペイン語で)コミュニケーションを取らなければならない心のハードルとか、移動範囲や時間の制約も疲れちゃう。南極に限らずツアーはだいたいこういうことに気を取られて疲れてしまって、見たものに大感動した覚えがあまりない。
とはいえ南極に自分で舟を漕いでいけるはずもないんだから仕方がないんだけど。
自分のコミュ力や協調性不足を棚に上げて文句ばかり言っているけれど、幸い私には日本語で通じ合えるツアーメイトがいてくれたし、船で出会った皆さんもとても親しく良くしてくれた。皆さんが今どこでどうしてるのかなとふと頭をよぎる。みんな南極というおそらく一生に一度の体験を時たま思い出してはじんわりと浸っていることだろう。
南極ツアーの最中や帰還直後はその場その場を凌ぐことや旅を進めることに必死で南極自体に没入できず、上記のとおり景色の感動も程々で、大金叩いて行ったのに案外感動が薄かったなとちょっとがっかりしたところもあった。「南極どうだった!?」と期待の眼差しで聞かれるたびに答えに困ってしまう始末。(なので率直に7大陸踏破した達成感を挙げていた。)
それが1ヶ月以上たち、旅を終えて快適な日本に帰ってきた高揚感も落ち着いてきた今、ようやく南極のことをじっくり振り返る余裕が出てきて、世界でも特別なあの場所に実際に行ったことに今更ながら感動しているのである。そして冒頭に戻る。
悠久の時を経て青く輝く氷山や自由気ままに生きる野生動物達の姿、静寂の音やほのかなペンギンのウンコの匂い、頬を撫でるひんやりとした空気。それらの記憶が本当に南極に行ったことを実感させてくれる。やっぱりあの時大枚叩いて行ってよかった。
世界一周して7大陸踏破も果たして燃え尽き症候群とリアルタイムの記録に書いているが、南極ツアーで一緒だった人が「じゃあ次は世界のミステリースポット制覇だね!」とかいうようなことを言っていた。え、まだ制覇するものあんの?たしかにエジプトのピラミッドとかは見たことないけども。
とにかく、まだまだ世界は広いということで。
リアルタイムで書いた以上に思いが募ったので改めて南極について書いてみました。満足満足。
































































































































