手動瞑想をやっている患者さんには、必ず毎回<瞑想の調子どうですか>と訊くことにしている。そして、日々感じているのは、本人が瞑想の効果だと思っていることは、あまり当てにならないということです。期待する効果をイメージして、効果が出ていると勘違いしてしまう(プラセボ効果*)。逆に、本人は効果に気づいていないけれど、ちゃんと効果が出ている場合が多々あります。

 

Tさん、以前のブログ“手動瞑想は筋トレにあらず”で紹介した。

 現在失業中で、毎日熱心にハローワークに通っていて、働いていないことに罪悪感を抱いている。彼の性格は、生真面目で自分に厳しいが、他人にも厳しい。街中で不道徳な人を見かけると、思はず注意してしまうこともある。

 <瞑想の調子どうですか>と訊くと

「怒ることが減ってきた。瞬間的に切れるのが僕の悪い癖。車で追い抜かれても、カアッとしなくなった。前だったら追っかけて、クラクション鳴らしてた。トラックの運チャンの無謀な運転にも、働いているからストレスたまっているんだなと思える」と。

<それはすごい変化ですね。でも、自分が働いてないので、働いている運ちゃんには寛容でなければいけない。なんて、頭だけ寛容になってて、無理してるんじゃない?普通は、腹が立って頭がカアーッとするもの。先ずは、「ああ、腹立ってるな」と、いち早く気づくことではないですか。私も車を運転していて、しょっちゅう腹が立ってますよ。Tさんは腹立ちませんか>と返したところ、しばらく、うつむき加減で沈黙していた。

 

Wさん、42歳 診断名:自己視線恐怖、脇見恐怖。失業保険をもらいながら、求職活動中。

 <瞑想の調子どうですか>と訊くと

「ダメですね、変わんないですよ。手動瞑想は、毎日15分。以前は、不安な考えに集中し過ぎて続けられなかった。今は、10分までは不安がでてくる。それから、落ち着いてくる。こんなに考えて、どこまで考えてんだよ、あることないこと心配して、馬鹿じゃないのと思うけど、まあ、続けてます」と。

<今まで、そんなに考え事ばかりしていること、気づいていましたか>

「いや、わかってなかったですね」

<それが、瞑想の効果かもしれませんね>と。

 

 ヴィパッサナー瞑想を取り入れた、マインドフルネス認知療法は、自分の感情や思考の内容が妥当かどうかを吟味して、自分で修正できるようになることを目指すのではない。思考内容を思考(言葉)によって変えるのではなく、「頭では、わかっちゃいるけどやめられない」、そういう自分を受容し、観察し続けることによって、自分が変わっていくことを目指すものです。だとすれば、手動瞑想の本当の成果を得ているのは、Tさん、Wさん、どっちなんでしょうか。

 

 過去ログ“新世代の認知行動療法”の特徴も参照ください。