マインドフルネス認知療法(MBCT)というのは、いくつかある“新世代の認知行動療法と呼ばれるものの一つである。うつ病の再発予防を目的とし、ヴィパッサナー瞑想の実践を取り入れた、正式には8週間にも及ぶグループ療法です。“手動瞑想を取り入れた認知療法”は、マインドフルネス認知療法(MCBT)を雛形としています。私が模索しているのは、医者一人、受付一人の零細クリニックで、個人療法としてそれがやれないかということです。また、うつ病のみならず、種々の不安障害やその他の障害への適用を目指しています。現在の私の感触では、性格神経症(補足参照)の患者さんに最も効果がある(性格が変わる)と感じています。

 旧世代の人間に属して、従来型の認知行動療法を20年来やってきた私が、新世代の認知行動療法をやろうというのだから、その手法も旧世代から新世代へとバージョンアップしなければいけない。ヴィパッサナー瞑想(呼吸瞑想、手動瞑想)の指導会に参加し、新世代の認知行動療法の専門書に目を通すなど始めたものの、老化しつつある頭なので呑み込みが悪い。しかし、本を読んでいて、記述に相当する患者さんの顔が次々と浮かぶので実践に即した理解ができる。さらに、実際の診療現場で試みることができるという強みがある。

 MBCTをはじめとする新世代のCBTは、認知の内容よりも機能やプロセスを重視する。機能やプロセスとはちょっとわかりにくい表現ですが。心配や後悔の内容が妥当かどうかを吟味して、自分で修正できるようになることを目指すのではなく、『ちょっとした心配や後悔なんて誰だってあるさ。心配や後悔にいつまでもとらわれないで、目の前のことにパッと切り替えられるようになればいい。そうしていれば自然に、心配や後悔が減っていくよ』というような変化を起こさせようとする。どうですか?こっちの方が現実的だと思いませんか。こういう変化を起こすための一つの手段として、ヴィパッサナー瞑想(呼吸瞑想・手動瞑想・歩行瞑想など)が使われるのです。心配や後悔は無駄な事だとは「頭では、わかっちゃいるけどやめられない」というのが、ほとんどの人の実感でしょう。<思考内容を思考(言葉)によって変えることはとても難しく、時間と労力がかかることなんです>。これは長年にわたって、それをやってきた老精神科医のため息でもあります。

 

補足:「現実の受け取り方」や「ものの見方」のことを認知といいます。例えば上司に叱られるたびに、「自分はいつも失敗ばかりするダメ人間だ、次もまた失敗するにちがいない」という認知が繰り返し浮かんでくることでうつ状態になった患者さんに対して、・・・従来型認知療法では「今回の失敗は初めてのこと、これまでの仕事では褒められたこともある、次の仕事で頑張ればよい」というような認知に修正されることを目指す(これまでの私がやってきたこと)。一方、新世代の認知療法では、そういう認知が反芻(繰り返し頭の中で考え続ける)ことなどを問題視し、ヴィパッサナー瞑想を使ったトレーニングによって、反芻しないような、頭の働き方に変えていくこと「上司に叱られても、前ほど尾を引かないし、寝床で考え事をすることも減った」といった変化を目指す(これから私がやろうとしていること)。

 

性格神経症:現在ではあまり使われなくなった病名。症状の形成に個人の“もともとの気質―性格”が大きく関わっていて、そのために不安や恐怖を感じ、辛くて我慢できなくなったり、日常生活に支障をきたしたりするもので、不安神経症、強迫神経症、対人恐怖症、神経症性うつ病(抑うつ神経症)、心気神経症、恐怖症などがこれにあたります。現在は、不安障害、強迫性障害、社交不安障害、身体表現性障害、などと呼び名が変わっています。“もともとの気質―性格”というのは、一つのことを考え始めると、そのことが頭から離れない。同じこと繰り返し悩む。自分の感情を表に出せない。周りの評価を気にしすぎる。物事を白と黒でしか考えられない。といったものをいいます。

 性格神経症の患者さんのつらい症状は、薬物療法で相当レベルまで軽減することができます。しかし、クスリでは性格まで変えることはできませんから、その人の悩み苦しみは続きます。悩み苦しみがなくなるためには、自分の性格を変えるしかありません。一つのことを考え出しても、繰り返し考えずに、早く離れられる。自分の感情をうまく表に出せる。他者の感情表出に過剰に反応しない。物事のグレーゾーンを認める。といったように変わることです。(以上、過去ログ*手動瞑想は性格を変えるスピードを上げるからの引用。)