手動瞑想を導入した患者さんには、次に来院した時に、<普段やっていると同様に>と指示して、実演してもらっている。百人百様でそれぞれ個性があって、実におもしろい。だいたいは、スピードが速すぎて、手の位置確認が曖昧で、手や腕の動きに気を取られてしまっている方が多い。

 

Tさん、53歳、通院歴22年、診断名:双極性感情障害

 薬物療法によって、症状は完全にコントロールされていて、服薬内容も10数年全く変っていない。Tさんの性格は、生真面目で自分に厳しいが、他人にも厳しい。街中で不道徳な人を見かけると、思はず注意してしまうこともある。見るからにヤクザっぽい人には、さすがに、注意しないという。しかし、これまでの対人関係において、思い込みが行き過ぎて、大失敗したことが何度もある(そのとき躁状態であったわけではない)。

 手動瞑想を指導した日の数日後、Tさんより電話があった。「毎日15分間を3回やると、お約束しましたが、どうしても10分しかできません」という。そんなお約束したつもりはなかったので、<無理しないで、自分がやれる範囲で構いません>と伝えた。数日後来院されたので、早速実演してもらった。びっくり仰天した。その力の入れようたるや、格闘技を見るがごとし。頭上まで振り上げた手は、ナタで薪を割るがごとく、大腿部を叩きつける。何回かやっただけで、すでに額に汗をかいていた。恐るべし。<Tさん、これは瞑想じゃなくて、筋トレですね。10分と続けられないのは当然のことでしょう>と伝えた。その日の診察は、手動瞑想を3分間2人で“ユックーリ”とやって終えた。

 Tさんには申し訳ないが、他の人に手動瞑想を導入する際に、Tさんと同じように実演してみせることにしている。反面教師として大いに役立つようです。おまけに、みなさん満面の笑みを浮かべ、手動瞑想に親近感をもたれるようです。

 

 最近は<動画を見るときは、手を動かす手順を覚えるためだけではなく、達人の姿勢や手の動きの滑らかさ、気づきを入れるタイミングなどを、よく観てくださいね>と伝えることにしている。