精神科の診療にヴィパッサナー瞑想を導入したのは平成28年11月。呼吸瞑想から始めて、平成29年3月からは手動瞑想に切り替えた(*その理由は?*)。手動瞑想導入のための説明をした患者さんは、これまでに200名を超えました。このうち、瞑想が習慣化しているとおもわれる人は50名くらい、脱落してしまった人も50名くらい、残りの100名は今後のどうなるかわからない人たちである。最も長い人は、瞑想を始めてから1年を超えたことになる。私を驚かせる“気づき”を披露してくれる患者さんも増えてきています。手動瞑想を習慣化できた50名には、どのような傾向があるかを、現時点で整理してみました。
① *性格神経症系*の患者さん(神経症性うつ病、抑うつ神経症、不安神経症など)
*自分の苦しみを何とかしたいと思っている
*自分が変わらなければと少しでも思っている
*医師との信頼関係が厚い
*通院間隔が短い(1週間~2週間)
*クスリを減らしたいと思っている
といった条件を満たしているほかに、瞑想に必要な集中力や内省力を、もともとも持っていることが、瞑想技術の上達を早めて、習慣化しやすいのではないか。もっとも、その集中力が(悩み事の方に向かってしまうと)、性格神経症の素地になっているとも言えます。
② 薬物療法が効きすぎない患者さん(治りきらない患者さん)
治りきらないということは、不快な症状(苦しみ)が残っていて、もっと楽になりたいという思いがあるので、動機づけが高い。パニック障害や内因性うつ病の患者さんに、瞑想を取り入れた認知療法が、再発予防や薬の減量に有効であるということを十分に説明はします。しかし、クスリだけで完全緩解に至ると、「忙しいから」等々を理由に、瞑想をサボってしまい、習慣化できません。
③ 素直な患者さん
かつて、プラユキ・ナラテボーさんに、瞑想を続けるのに何が最も必要か、と問うたことがあります。「素直さ!」と一言で答えられた。瞑想指導(医療レベルの)を続ける中で、その意味がだんだんとわかってきました。自分の経験や知識によって固められた自我に執着している人たちは、何のかんのと言い訳をして、やってみよう、という気持ちになれない。たとえやり始めたとしても、すぐに品定めをしてやめてしまう。
④ 早い時期に瞑想の効果を実感できた患者さん
うちの患者さんたちは、手動瞑想を自分からやろうと思って始めたわけではない。医者に勧められて、やらされている人たちである。 瞑想の効果を感じなければ、続けられないのは当然だと思う。私の役割は、“気づき”に気づかせてあげることです。それが瞑想を続ける動機づけの向上につながります。気づきは無意識のうちに育っていることなので、自分では気づきにくいものです。診察のたびごとに<瞑想の調子はどうですか>と訊くようにしている。「別に変わりません」という答えが返ってくることが多い。しかし、カルテからその患者さんの過去のことばを拾って<○○さんは以前こんなことを言ってましたよ・・・>と伝えると、「そんなこと言ってますか、今とは違いますね。そういえば最近は・・・」と、自分の変化に気づいてもらえることも多い。<もしかしたら、これの(手動瞑想の動作をしながら)効果かもしれませんね>、と効果を実感してもらう工夫をしています。
以上、私が現段階で思い浮かぶ、手動瞑想が習慣化している患者さんの傾向です。これまで何度も強調してきたことですが、この治療(手動瞑想認知療法)の成否の大半は、瞑想の習慣化に掛かっています。手動瞑想が生活習慣の一部になるかどうかです。生活習慣の一部になってしまえば、何の努力もなく続けることができます。しかし、それは簡単なことではない、と日々痛感しています。
注:私がここで問題にしているのは、精神科的治療として手動瞑想をやっている患者さんの話であって、修行目的で瞑想をやっている人たちの話ではありません。医療レベルでの気づきについては、*“手動瞑想の効果とは”*を参照してください。