[本] 人と違うということ / ご冗談でしょう、ファインマンさん | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

ノーベル物理学賞を受賞した学者の日常は、
いかにも天才物理学者らしい面と、
逆にとてもそうは思えない面が混在した風変りな暮らしでした。

著者R.P.ファインマン(1918-1988年)は、
1965年に朝永振一郎らと量子物理学の貢献によってノーベル物理学賞を受賞しています。

また、先月ご紹介した小説『新古事記』(村田喜代子)でも、
マンハッタン計画に参加した風変わりな若手学者として登場していました。

その原爆を開発していた時期のことにも触れています


*********************

とにかくいたるところで目立つのが、

著者と他の人たちとの相違です。

 

 


ご冗談でしょう、ファインマンさん 上・下 / R.P.ファインマン著、大貫昌子訳 (岩波文庫)
(原題:"SURELY YOU'RE JOKING, MR. FEYNMAN!", Richard P. Feynman and Ralph Leighton
原書刊1985年、1986年和訳刊、2000年文庫刊
お気にいりレベル★★★★☆

学生時代、行きつけの食堂で、2人のウェイトレスを怒らせた、
物理の知識と人の心理を逆手にとったチップの渡し方。

学生寮のドア泥棒に関する自白と犯人捜しのあいだの、
著者の常識と寮長の先入観のズレ。

勤めていた大学の3~4倍の報酬を提示した
シカゴ大学からの誘いを断った著者の意外な理由。

ラスベガスで、数学上確率的にはありえない勝ち方をする男の秘密に迫ろうと、
男に接近する著者の学者的好奇心と遊び好きな一面

場面自体を想像しづらい、
ふつうの人の暮らしにはないエピソードが、
次から次へと紹介されます。


*********************

なかでも強く印象に残ったエピソードを挙げると、

著者が一度は欠席を伝えながら

プリンストン大学での原爆開発に関する打ち合わせに
気を変えて出席した理由


原爆開発のマンハッタン計画メンバーが
実験の成功に沸き返るなかで、
若きリーダーのボブ・ウィルソンが発したひと言

そして、
科学を身につけ巣立とうとしている学生たちに向けた、
カリフォルニア工科大学(CALTEC)の卒業式の式辞における著者のこんな問いかけ。

私たちが生きている時代は、本当にサイエンス・エイジと呼べるような世の中だろうか?


*********************

このエッセイ集では、
物理の研究に関することと、それとは関係のないことが、
あるいは
真剣な研究と冗談やいたずらが入り混じっています。

読み通してみると、

遊び心の有無により一見無関係に見えたものに、
著者の考えや行動を貫いている、一人の人間としての筋の通し方が見えてきます。



[end]

 

 

 

 

*****************************
作家別本の紹介の目次なら
日本人著者はこちら

海外の著者はこちら
i-ちひろの本棚(読書メーター)はここをクリック
*****************************