横浜暮らしの本棚と日常

横浜暮らしの本棚と日常

ベスト・セラーじゃなくたって・・・・
表紙の手ざわりていどの本の紹介とか、暮らしのかけらとか。

「いいね」や「ペタ」はお返しできないことが多いのですが、
ご容赦ください。
相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。


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この本を手にとるには少なからず勇気が必要でした。

この小説には、一緒に登山中に恋人を亡くした遭難に後ろめたさをもつ青年の、再起に向けた挑戦と葛藤が描かれています。

私も元部下を山で亡くしました。
学生時代から登山に魅入られていた「彼」は、山に専念したいと退職し、世界に名の知れた山の未踏ルートに挑み、登頂後、帰路で消息を絶ちました。

遭難を人伝に聞いても、葬儀があったわけではありません。
当時、自分の仕事の忙しさにかまけて、遭難の事実を受けとめきれないまま、「彼」の死ときちんと向き合う場面を逃したまま今に至っています。

その後何ヶ月も経って「彼」の死亡が確認されたものの、亡骸は連れ戻せないほど厳しい場所にいまも眠っています。


   ◆      ◆      ◆

小説であれば、登場人物たちの挑戦が順風満帆なわけはありません。
遭難する場面が巡ってくれば、いやでも「彼」と置き換えてしまうことは想像に難くありません。

つらい読書になりそうです。


   ◆      ◆      ◆

 

還るべき場所 (文春文庫) 還るべき場所 / 笹本稜平 (文春文庫)
2008年刊、2011年文庫化
お気にいりレベル★★★★★

 

翔平はエベレストに次ぐ高さを誇るヒマラヤのK2の未踏ルートに挑み、登頂寸前、事故で自分は助かったものの、登山仲間で恋人の聖美を亡くしました。
聖美の遭難の真相が不明のまま、翔平はショックと後ろめたさを抱えが日々を送っていました。

登山仲間だった亮太が起業して主催するアマチュア登山ツアーに、翔平もガイドとして参加することに。
さらに、そのツアー後、その足でK2に再挑戦することになりました。

立ちはだかる自然、実力差のあるツアー客のわがまま、他国のパーティーとの連携と競争、ガイドの質のレベル差、軍から派遣されるお目付け役の不正 etc. さまざまな人に助けられながらも、苦難の連続です。

そして、翔平たちのツアーに参加する医療機器メーカー会長神津と秘書竹原の挑戦。


   ◆      ◆      ◆

ツアーとはちがって、翔平自身の登山は限られた装備でスピードを武器に挑戦するスタイルです。
無謀な挑戦にならないための準備や判断を伴います。
時には計画を断念せざるをえない場合もあるでしょう。

豊かな資金で多くの現地スタッフを抱え、豊富な装備に守られたスタイルと、限定した装備で挑戦するスタイルの違いを、善し悪しと別の冷静な視点で比較しながらストーリーは展開していきます。

私と一緒に仕事をしていた「彼」は、限定した装備でスピードを誇るスタイルを採っていました。
空から捜索の過程で、登頂後、帰路で滑落したことがわかったそうです。


   ◆      ◆      ◆

「彼」は、挑戦前にベースキャンプで高揚感と恐怖の狭間で何を考えていたのでしょう。
寒さや風の中で未踏の稜線をどんな歩みで進んだのでしょう。
頂上でどんな表情を見せたのでしょう。
帰路でその瞬間、「彼」の頭をよぎったのは何だったのでしょう。

主人公の翔平たちの挑戦を読みながら、もうひとつ私だけのストーリーの断片によるスライドショーが繰り広げられていました。

あれから10年を超える時間を経て、ようやく涙を流すことができました。



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朝食を作り終え、食卓につこうとしたら、右手の指から血が出ていました。
どうやら、洗った包丁の水気を拭きとるときに刃に触れてしまったのに気づきませんでした。

よく研がれているものだ、と感心している場合ではありません。
傷口をよく洗い、消毒ガーゼ付の絆創膏を貼りました。


   ◆      ◆      ◆

さあ、これで朝ご飯を食べられる、と箸をとると、手にチクリと痛みを感じました。
みると、右手の中指の第一関節あたりの切り傷から出血しています。

絆創膏を貼られているのは隣の人指し指です。

絆創膏を貼る指をまちがえるなんて、モウロクしたものです。


   ◆      ◆      ◆

貼ったばかりの人指し指からはがすと、絆創膏の下から同じような切り傷が現れました。
よかったぁ、切った指をまちがえるほどモウロクしていませんでした。

その代わり、人指し指と中指の2本の指を包丁で切ってしまったことに気づかないほどモウロクしていました。



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天涯孤独で山中で自給自足でもしていない限り、家族や親族やら、職場や取引先やら、身を置く何らかの団体やらと、何かと人間関係が生じます。

コミュニケーションを密にしましょう、相手の身になって考えましょう、とよく耳にします。
はい、ごもっとも。でもそれが大変で苦労しているんです。

関わりのある人たちといい関係を作ろうとする努力も、1日24時間1年365日の限りある時間と体力・気力の範囲で、という条件の下でのすべての人に対する最善です。
それとて、こちら最善と思う努力を尽くしたからといって、相手にとって最善のやりとりができている保証はありません。
だいいち、最善なんてそう簡単に尽くせるもんじゃありません。
しかもすべての人に対して。


   ◆      ◆      ◆

周りの人にばかり水やりをして、それでも時々あるいは始終水をやり損ね、周りとの関係がギクシャクしてきます。
コミュニケーションを・・・・、相手の身になって・・・・、と自分のことを後回しにして、という前提でいわれているように考えてしまうと、一日を終えるころにはもうクタクタ。自分自身に水をやるのを怠りがちになり本来の自分らしさを失うばかり。

この本の、植物の名を冠した各篇に登場する6人は、どこかで気づいて深夜になっても水やりをできるんでしょうか。

 

水やりはいつも深夜だけど (角川文庫) 水やりはいつも深夜だけど / 窪美澄 (角川文庫)
2014年刊、2017年文庫化
お気にいりレベル★★★☆☆

 


幼稚園のママ友の評判に怯えながらセレブな暮しをブログで紹介する母親。
仕事にかまけて子育てを妻や義理の両親に任せきりにしているうちに、家庭の将来計画の相談から外される夫。
発達障害だった自分の妹の記憶から、自分の娘の知的障害を疑いつづける母親。
出産後、子供ばかりに関心をもつ妻に違和感を覚え、他の女に興味を惹かれる男。
仲良く二人暮らしをしてきた父が再婚し、新たな義母を気づかう高一女子。
父親が単身赴任中で、祖母と母親の折り合いの悪い家で暮らす心臓疾患の男子高校生。

それなりにがんばってきた5人が、それぞれちょっとした事件に見舞われます。
それを機に、それまでのムリや誤解が表面化します。

そのまま不幸に足をとられて沈んでいくか。
それとも、浮かぶ瀬に指先が届くか。正念場です。


   ◆      ◆      ◆

あまりに始終、水を与えすぎると、地中に根が張らず、時には腐ってしまうこともあります。
自分への水やりを他人任せにすると、タイミングを逸するかもしれません。
水をくれるその人がいなくなったら、枯れてしまいます。

水は喉が渇いているときがいちばんおいしいですよね。
自分の渇きをきちんと意識できるほんのちょっとし休符を失わないようにしないと。



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例年なら自らの行動力を超えて予定を盛りすぎて空振りに終わるところが、この年末年始にはやりたったことがはかどりました。

そのひとつが体重増やしです。
ちょっと感じ悪い予定? m(_ _;)m

ここ何年か秋にあらかじめ体をしぼっておいて、年末年始に飲み食いした後も通常の体重と体脂肪になるようにしていました。

ところが昨年は、体質改善を目指して食生活を調整したのにともなって自然と体重と体脂肪は減っていました。
栄養指導では体重を維持するように言われていたので、この年末年始には体脂肪をそのままに体重を増やそうと企んでいたわけです。


   ◆      ◆      ◆

結果は、体重+1.2Kg、体脂肪率±ゼロ。上々です。

うまくいったいちばんの要因は忘年会の回数が4回に減ったこと。
それに加え、会が連続せず、脂の強い料理はパスし、酒はほろ酔いにとどめました。

うまくいったもうひとつの要因は、トレーニングの負荷を少しずつ増やせたこと。
1年半前に比べれば半分の負荷ですが、五十肩や手術から1年かけて、ようやく痛みなく体を動かせるようになってきました。

3つ目の要因は、妻のサマンサが年末年始に体調を崩し、食事を自分で作り粗食となったこと。


   ◆      ◆      ◆

こうして書くと窮屈な年末年始に映るかもしれません。
ところがこれが意外と気分的にはおおらかにいられました。

齢を重ねるにつれ、飲み食いについて、経験が蓄積された頭と衰えつつ体とのギャップがあると辛くなります。
かといって、老けこんだらつまらないし、気分が萎えます。

今回は適当に遊びながらギャップの縮小ができて、まず体が快調です。
体の調子がいいと、気分もいいもんです。


   ◆      ◆      ◆

体重増加のほかの企ては、災害対策と断捨離。これはセットです。

この年末年始に着手し、まだ道半ばです。
この件は、またそのうち。



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日日是好日は「ひびにちにちこれこうじつ」と読みます(本の表紙)*1。
毎日毎日平和で楽しい日が続く、という意味です。(「大辞林」より)
禅の言葉ですから、文字通りに無条件に楽しい日が続くなんていう、都合のいい話ではなさそうです。

*1: ブログを書いた当初「ひび」としていましたが、私の誤りでした。
「にちにちこれこうじつ」がこの本の表紙にも記されている読み方です。
もともとは「にちにちこれこうにち」と読まれていたようですが、この本では著者が「こうじつ」と読むとしています。

本の内容は茶道を習い続けた女性のエッセイです。
堅苦しい世界の話かと思ったら、堅苦しい世界でした。
ところが、同時になんと自由な世界なことか。驚きました。

茶道を習い続けて、観えてきた「日日是好日」とはどういうこと?


   ◆      ◆      ◆

 

日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫) 日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ / 森下典子 (新潮文庫)
2002年刊、2008年文庫化
お気にいりレベル★★★★★

 

母に勧められて従妹に相乗りするように茶道を始めた著者。
個々の作法にどのような意味があるのか、たずねることも許されないまま、毎週土曜日、季節の移ろいとともに変作法を次々に学びます。

メモは禁止。手順を頭で覚えようとする素振りを見せると、武田先生にたしなめられます。
土曜日を迎える度に稽古を休もうかという誘惑にかられながら、稽古にいけば帰りには、その日の新しい発見に喜びを感じています。

24年間にわたるそんな繰り返しの著者の追想につきあううちに、読み手の私も著者の気づきの再生を疑似体験していました。


   ◆      ◆      ◆

稽古や茶会・茶事の亭主(ホスト)と客(ゲスト)として、もてなす・もてなされる機会を繰り返して、もともとは異なる自分の感性と相手の感性の一部を共有する世界が描かれています。

茶道具の知見、掛け軸の書の意味、自然の変化の察知を通じて、客にいい時間をもたらそうとする亭主。
亭主の具現化されたもてなしの気持ちを汲みとろうする客。
亭主と客の双方の共同作業です。その共同作業を合理的に支えているのが作法です。

それを耳や目を使って頭で学ぶ理論ではなく体験により、無意識のうちに作法通りに合理的な動きができるようになる様子がつづられています。


   ◆      ◆      ◆

堅苦しい世界でありながら、教える側ではなく学ぶ側の、それも出来が素晴らしいわけでもない者の視点から体験が書かれているので、門外漢にもついていきやすくなっています。
 

とてつもなく自由だった。

こう著者に言わしめた世界は一読の価値ありです。



[end]




 

 

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