(以下は全く個人的な記録で、G5の技術的な・有益な情報は 『何一つ』 ありません)

少し前から、機材の或る改造方法と使い方が気になって気になってしょうがなくなり、実家での正月休みは、家族には仕事をしてるフリをして、Webの記事を調べまくっていた。

最初は古い機材とジャンクを使った方法を考えて中古市場を捜したりしたが、以前生還したZOOM G5のパラメータ設定でソフト的にやれるかも、と気付いた。自宅へ戻るのを待ちかねて、G5を少しいじってみたところ、脈はありそうだ。できれば2台欲しい。

メルカリを毎日チェックしたが、G5の手頃な出品は中々ない。ところが先日ふらっと寄った都内のジャンク屋で、偶然見つけた!ジャンク屋もあちこち限りない回数行ったけど、G5を見つけたのは初めて。




筐体は綺麗で、錆びも殆どない。なのに

「通電NG」??
さほど古くもないこの種の機械が通電NGになるなんて、お酒飲ませるくらいしか、ないヨ。そんな人いるの?
 

たぶんお店では通電すらしておらず、ノークレーム・ノーリターンの宣言としてNGと書いているだけに違いない。でも抜け殻は御免なので、買うなら自分で何らかのチェックは必要か。

別の日に試験用の小物を持って、行ってみた。誰かが買ってしまってないか、ドキドキしながら。

オタクなお客さんたちをかき分けて、その棚へ行くと・・・あったあった! セルフチェックコーナーに移す。何人かの客に見つめられているようだが、気にしない。ジャンク屋では、恥ずかしさは、誇らしさに昇華されるのである。

 

持ってきたセンターマイナス9V500mAの電源アダプターを挿すと、案の定あっさり起動した。



出力にイヤホンを繋ぎ、入力のホット側を触ると、動作はOK。各スイッチおよびペダルの反応も、真空管ブースターも、画面スクロールもパッチ切替も、全部OK!!

ほんの数分だったが、要はお店では、たったこれだけの手間もかけられない、ということだネ。
初期ロットらしくファームウェアのバージョンは古いので、後で更新する。

 

何かやろうとするときのこんな出会いって、全くの偶然でなくて、何処かで引き寄せたり引き寄せられたりしてるのかナ、というようなタイミングで、不思議。まぁエフェクターなんてしょーもない話だけど、人生のもっとずっと大事な出会いを、偶然でなく必然と感じたという話なども、よく聞くし。

 

持ち帰って、ファームウェアのアップデート。

 

 

無事完了!


今回わかったことは、ジャンク屋の「通電NG」は、ぜひチェックしてみるべし、ということでした。

 

(おわり)

(以下は身内の個人的な話および私自身の回想で、H&M30の技術的な・有益な情報は『何一つ』ありません)

先日、超久しぶりに実兄に会った。兄は私と違い、Fender USAのストラトを持っている。

 

 

「最近、ギターどう? アンプ何処かで鳴らしたいね」
と言ったら、アンプは、前回の引っ越しの際に、奥さんに、捨てられてしまったという。

「!!???、エレキギターはアンプまで含めて楽器なのに、何でそんなことになる???」と私が訊くと、

兄は奥さんから


『あなた、これ(アンプ)、今まで一度でもちゃんと音出して使ったことある??ないでしょ!!』

と言われ、何も反論できなかったのだと。
さらには奥さんは、そういう『何だかわからないが使わない、機械みたいなもの』が家にあることが、イヤなのだそうだ。

勢いでLINE6のFLOOR PODまで捨てられそうになったが『いやいやこれだけは、どうかお慈悲を』と、何とか残したと。

殆どの家庭で、夫婦の力関係は、年齢とともに奥さんのほうがずっと強大になってくるが、兄宅もその顕著な例である。

そのアンプへの思い入れは、もしかすると兄よりも私のほうがずっと、深かったかも知れない。その捨てられたアンプは、若い頃に私が楽器店に買いに行ったのである。せめて、誰か使う人の手に渡って欲しかった。。

 

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H&M30は80年代に、アマチュアが手にできる価格でマーシャルの音が出るアンプとして、発売された。

 

 

日本のギターレジェンド成毛滋さんが監修してGuyatoneが開発した、プリアンプ真空管の、伝説的なアンプである。当時の価格4万5千円。今でもマニアには人気で、中古市場で2万円くらいで取引されている。

当時、ラジオ文化放送のパープルエクスプレスで、成毛さんがこのアンプを紹介していた。

 

 

80年代、東京でビンボー学生をやっていた私はラジオでこれを聞いた。子供の頃に田舎でギターの音に腐心して、歪エフェクターを色々自作しながら、あーでもないこーでもない、とやっていた私には、このアンプの話は非常に魅力的だった。すぐに関西の兄に電話して、要るかと訊いた。

アンプは渋谷の河合楽器で、予約販売するとのことであった。私はちょうど予約開始日に新宿の工事現場でバイトをしており、休憩時間に公衆電話に走って、兄と私のぶん2台を予約した。

発売当日に渋谷に行き、アンプ2台を受け取った。重量は11kgもあって、2台を持つと両腕が抜けそうだったが、電車で杉並区の下宿まで、休み休みしながら冬なのに汗だくで、何とか持ち帰った。1台を、その年の春に上京してきた兄に渡した。

私の下宿は木造でボロボロのため、音量を下げてもとてもこのアンプは鳴らせないので、杉並区公民館の音楽室へ何度か鳴らしに行った。音楽室の予約に団体名が必要なので「世界の演歌クラブ」なんて適当な名前で。
 

 

大音量で鳴らすとほんとに、目から鱗という感じだった。ギター直で、アンプだけで、レコードと同じ音が出る!!最初からこういうアンプを使っていれば、音色に悩む必要は何もなかったわけだ。

そのうちにギターも弾かなくなってしまい、私のアンプは手放してしまった。あと1台は兄のところにずっとある、と思っていたのだが・・・

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神奈川の粗大ゴミ処理場で、兄はそのアンプH&M30とFender JapanのストラトSST-314(これも80年代の超人気機種)を、破砕処理機の中に、自分の手で、投げ入れ(させられ)たのだそうだ。

 

 

その光景を想像して私は、気分が悪くなった。(写真はイメージです)

 

 

・・・グウォングウォンと不気味に唸り回転する巨大な破砕処理機の破砕歯の渦の中に、アンプが転がり落ちていく。頑丈な木製キャビネットも、強靭な鋼製の破砕歯の前には、ひとたまりもない。バキバキと音を立ててキャビネットは凹み砕け、精密な電子回路の入ったシャーシは回路基板とトランスを抱いたままグニャリと曲がり、アンプの音色を担ったプリ真空管12AX7が「パン!」と小さな音を立てて割れる。大型スピーカの金属フレームも、一瞬でぺしゃんこだ。

地獄図絵のようなこの場では、ギターの色白なメイプルネックはまるで女性の細腕のようだ。あっという間に破砕歯に掴まれ、ネックが次第に捻じれ曲がるとともに、プツプツとフレットが浮き上がる。さっきまで楽器としての精度を保っていたトラスロッドとネックの木材が擦れて、苦しい断末魔のような高い音がした直後、ネックはバキッと音を立てて降参した。続いて頑丈なボディも、この凶暴で非情な渦に成すすべもなく、挟まれ砕かれていく。

そして、すべては暗闇に飲み込まれた・・・

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若いころ頼もしかった兄は、不遇にも今は身体を悪くしてしまい、奥さんのお世話になっている。兄は奥さんに面倒をみてもらうことの代償として、長い間ずっと大事にしてきたギターとアンプを、自らの手で、まるで生贄のように差し出さざるを得なかったのだろうか?

兄にその話をしたら「スティーブン・キングの小説に出てくる、倒錯した登場人物のエピソードみたいだ」と寂しく笑った。

(おわり)

 

 

 

 

 

(以下は個人的な回想で、G5の技術的な・有益な情報は 『何一つ』 ありません)

数年前に安いギターを1本買い、少し広いところに引っ越して、ちょうど良い機会なので、ZOOMのマルチエフェクターG5の中古を買った。2010年代のZOOMのGシリーズの、フラッグシップモデル。



これで本格的にギターを再開できるゾ、という思いと、初めて触るマルチエフェクターのめくるめく世界への驚きとで、入手してから毎日毎晩、触っていた。機能が多くて色んな音が出せて、全く飽きない。
 

G5は、沢山のエフェクターの中から好きなのを選んで組み合わせることが出来て、しかもその外観とアナログな操作性は、まるで単体のエフェクターを並べているかのようで、私のような世代にも全く違和感なく使える。おまけにワウに使える頑丈なペダルも付いている。
音も素晴らしい。



或る晩、飲みながら調子こいてギターを弾いていて、そのうち飲み過ぎて、寝落ちしてしまった。
翌朝(床で)目覚めて、G5を見ると、LED表示が半分くらい点灯したまま、音はウンともスンともいわない状態。
よく見るとG5の表面が濡れている。

・・・・状況から察するに、

私がG5に、お酒※を飲ませてしまった模様。
 ※そのときは多分、ジン。下はイメージ写真です。



まるで、下戸の人に無理やりお酒を飲ませて、
「グェェェェ~~」
と苦しがってる、瀕死の状態である。LED半分点灯はさしずめ、白目をむいた状態だ。

事の重大さに気付き、あわてて電源を切り離して、分解して中を見た。
中身は一見綺麗だが、よく見ると無色透明なお酒(!)が電気回路の各所に浸透していた。

 【このへん、気が動転して作業していたので、写真が1枚もない】

何せ2000年代に入ってからの製品なので、昔の機器と違い、沢山の集積回路を精密な薄いフィーダーで繋げて構成されている、きわめて繊細な造りの製品である。

濡れた状態で通電するとさらに状況を悪くするので、各所をよく拭いて、1日おいて乾いてから、再度通電してみた。が、当然ダメ。諦めきれず数日経ってもう一度通電してみたが、やはりダメだった。

僅かながらも「何か、やれることがあるのでは」と思って開けてみたわけだが、手の施しようがないことを悟り、静かにそのまま蓋を閉じた。

まるで外科医の先生が、開腹してみたが癌が全身に転移しており手の施しようがないので、そのまま閉じた、という、そんな気分である。

G5は1ヶ月しか使っておらず、まだまだ知りたいことが沢山あった。再度G5を入手しようかとも思ったが、結局そうはしなかった。理由は、G5が

「オレのことはもう忘れて、新しい人生を生きろ」

と言っているように見えたからである。短い付き合いだったが、仕方ない。

そのあと、G1FOURを買った。



~3年後~

G5は廃品で捨てるには忍びないので、せめてジャンク屋に持って行こうと思いながら、物置きにほったらかしで、今になってしまった。今回、当時のことをこのブログに記録して、弔いとすることとした。

そういえば、半分くらいしか点灯しないLEDの写真を撮っていなかった。ブログには写真が沢山あったほうがいいから、それを撮って、一緒に載せよう。

物置きから引っ張り出して、電源アダプターを繋いで・・・・



???

LEDが全部点く。
ギターを繋ぎ、ボタンをあちこち操作してみるが、機能はすべて正常のようだ。エフェクターやアンプのシミュレートも、真空管ブースターも。長い時間が経って内部が完全に乾燥したので、復活したのか!!? ゾンビか??

・・・・正直なところ、嬉しいというよりは、何だか少し困った。
G1FOURや他の機材とともに、既に新しい生活に入って、もう3年なのである。

亡くなったと思っていた人が(相棒、友人、元カノ、何でもいいが)、やっと心が癒えた頃に突然目の前に現れた、そんな感じだ。

とはいえ、たった1ヶ月で別れてしまったG5。このあと演奏に使う使わないは別として、この機械がどういうものであるかをもっと知りたい気持ちは、今も変わらずある。

次に引っ越した後は、自室のギター用のスペースを広くして手持ち機材を並べて、各々すぐにいじれるようにするつもり。


その仲間に加えるか。

加えよう。

 

 

休日に分解して、ひたすら掃除。

 

歯ブラシの毛先が細いやつは、トーレックスの溝の掃除にちょうど良い。自宅にある古いアンプ数台も掃除しないと、と思った。

 

ぬるま湯と中性洗剤で、つまみも掃除。最近の電子レンジOKの食品容器が便利である。

 

見違えるようになった! マーシャルロゴは、ちょっと焼けていて、渋い!

 

シャーシの中はスカスカで、時代を感じさせる。電解コンデンサは、どれも膨らみもなく外観も異常ない。回路基板や電源まわりも、どこも焦げてもいないようだ。

 

 

基板は1991年製。当時作業した人の名前のシールが貼ってある。配線:ハリス、試験:リー、検査:エレイン。こういう人の手が感じられる製品は、いいね!

 

基板の上のほうに、歪発生用クリップ回路のダイオードがある。この機種ではLED(赤)が使われている。このダイオードで音が変わるというので、私も高校の頃、ゲルマやシリコンなど換えて試したり、果ては真空管に特性が近いというCMOS FETで歪回路を作ったりとか、やってみた。が当時はまだ、LEDをクリップに使うという発想は、世の中になかったと思う。

(出典:完全マスター! 電子回路ドリル)

 

LEDはI-V特性の立ち上がりが非線形のため、信号が大きくなると徐々に歪んでくる真空管の特性に似ているとのことで、90年代から急速にアンプやエフェクターのクリップ回路に使われるようになった。LEDをクリップ回路に使うことを世界でいちばん最初に思い付いたのは、一体誰だろう? 偉大な発見である。

 

(歪回路には、立ち上がり特性のほかに、素子や回路による倍音構成の違いの議論があるが、別の機会に。)

 

接点と可変抵抗を掃除するために近くのホームセンターで、アルコール系の洗浄剤を買ってきた。サンハヤトとかのがいいんだろうが、成分は電気機器用と殆ど変わらないし、安いし。(380円)

 

横着して、可変抵抗の中に洗浄剤を吹き込むことにする。本当は可変抵抗を外して、内部の抵抗体と接点のみを接点復活剤で掃除すると良いんだが、工具も体力も気力もなし。復活剤でなく洗浄剤を買ってきたのはそのためだ。基板を汚さないようペーパータオルで保護しシャーシーを逆さにして、端子側の穴から吹き込んだ。(非常に無理な体勢のため、作業写真はなし)ゲイン切り替えSWも同様にやった。

 

吹き込んでは軸をグリグリ、を何度か繰り返した。軸を回すときに、ものすごく固いのが数本あり、これは問題かも。洗浄剤が乾くのを待って、通電テスト。

(保護のペーパータオルを外して写真撮れば、もっとカッコ良かったのに。。)

 

動作OK。電解コンデンサは、通電しているうちに化成膜がある程度自己修復した模様。ボリュームやトーンのガリも全くなくなった!

 

ジャンクになった原因はおそらく、前の持ち主が、放置プレイのしすぎというのか、使わなさすぎたんだろネ。電解コンデンサの劣化も、可変抵抗の酸化膜も。

 

 

音は素晴らしい。完全なクリーンからクランチ~歪までは70年代~80年代の音。増幅段のゲインがかなり高くとられていて、90年代の相当歪んだ(メタルの)音まで出せる。そのうち自宅のLEAD12と比べてみたい。

 

可変抵抗の軸周りが固着して硬かったのも、アルコールでいい具合に溶けたのか、スムーズになった。当面これで行けそうだ。作業終了。

 

『寂しかっただろーナーお前!これからはオレが使ってやるから!!』

 

 

年度末、働き過ぎでヘトヘト。勤労意欲の全く失せた或る晩、慰みを求めて秋葉原~上野のジャンク屋を彷徨っていたら、御徒町で、遭遇。

 

 

 

「ジャンク品 音出ません 1,100円」

MarshallのValvestate8010。90年代初、当時まだアマチュアには高嶺の花だったマーシャルアンプを一般に普及させたシリーズの、最小モデル。Valvestateといっても8010と8020はソリッドステートで、8040から上位がプリアンプ真空管(12AX7)とパワーアンプソリッドステートの、ハイブリッドである。


夜、Webで8010の回路図を調べたら、トランジスタアンプの教科書のような回路で、これはどんな壊れ方をしていたとしても、勉強になるし楽しめそうだ!

 

翌日、大きなバッグを持って再度行き、セルフ電源チェックコーナーで繋ぐと、確かにウンともスンとも言わないが、Volume最大でかすかに「サー」という音がし「これはイケる!」と確信。

 

 

それにしても、めちゃくちゃ汚いな。このまま粗大ゴミ処分場に置かれていても、全く違和感ない。

 

持ち帰って背面を見ると、バーコードシリアルで、93年、イギリス製。 

Marshall創立者のジム・マーシャルは、外貨を沢山稼いだ功績で、女王陛下から表彰された。

 

Marshallはこの頃から、廉価版アンプのスピーカユニットを自社製にした。量産とコストダウンのためだろう。

 

電源を入れて暫くいじっていたら「ボン!!」という大きな音がして、ノイズだらけだが音が出たり出なくなったりし始めた。どこかのコンデンサの容量が抜けてたのかも。ボリュームやトーンのガリも、驚くほどひどい。でも、ゴールは見えたようだ。

 

(つづく)