真空管ラジオ『 コロムビア COLUMBIA 1510 』の修復 - Part.8 | アナログ三昧、そして時々ディジタルな日々
Part.7までの結果より、このラジオの問題点は次の通り:
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<現状の問題点まとめ> は解決済み。
①短波は受信できるが、中波が受信できない。
 ②受信中、VOLUMEツマミの位置に関係なく常に最大音量?で鳴る。
 ③VOLUMEツマミを動かすと、かなり頻繁に「ガリガリ」『バリバリ』と
  最大音量?の雑音が出る。
④局部発振回路の中波用バリコンの配線が取り外されている事が判明!
  これが①の原因になっている可能性が大である。
 ⑤コンデンサ、抵抗などの部品劣化の懸念有り。
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①と④は解決済み。
②と③はVOLUMEの可変抵抗器の故障が原因と思われるので、
 交換用の可変抵抗器を入手した。⇒後日交換する予定。 
⑤を調査した結果、複数のコンデンサに絶縁不良有り。
 ⇒コンデンサと抵抗をすべて新品に交換する。
  Part.6でコンデンサと抵抗の取り外しがほぼ完了。
    Part.7では、ダイヤルなどの機構部品や豆電球を取り外した。

このPart.8では、シャーシに残った配線やブロックコンデンサを取り外し、
可変抵抗器の故障を調査します。

d01

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Part.6のコンデンサや抵抗の取り外し作業で使用した『 goot KS-30R 』という
30Wのハンダごてにパワー不足を感じたので、残りの部品の取り外しや新しい
部品の取付作業に向けて、同じシリーズの40Wモデル『 goot KS-40R 』を購入
しました。

1970年頃購入したHOZAN製工具セットの中に40Wのハンダごてが入っていたけど、
いつの間にかヒーターが断線しているし、他に所有している2本は20Wと18W。

トランジスタやICの場合は20W程度が最適な場合が多いけど、真空管ラジオの
場合は対象物が大きくて熱容量も大きいので40W程度が最適な感じです。

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シャーシの前面側には、汚れたり劣化した配線がまだ相当数残っています。

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真空管のヒーター配線とアース線以外の配線は可能な限り取り外しました。

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シャーシの裏面側です。
中央のブロックコンデンサはテスターによる絶縁チェックでは問題がなかった
けど、機能、性能的に劣化している可能性も有り、故障した場合の周囲への
影響も大きいので、この際交換する事にしました。

d05

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ブロックコンデンサを取り付け金具ごと取り外しました。

d06

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取り外したブロックコンデンサです。

d07

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ブロックコンデンサを外した後のシャーシ前面側です。

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ふとキャビネットの方に目をやると、まだ出力トランスの端子板の上に
コンデンサと抵抗が1個ずつ残っていました。

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回路図を調べてみたら、このコンデンサと抵抗は直列に接続されていて、
出力トランスの二次側の信号(=スピーカーの入力信号)を低周波増幅回路に
“負帰還”するNFB(Negative FeedBack)ネットワークを構成しているようです。

“負帰還回路”はオーディオアンプでは普通に採用されている技術だけど、
ラジオの場合は例え『Hi-Fiラジオ』を名乗っていても採用されている製品は
少ないのではないかと思います。

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Part.2で描いたブロック図にNFBネットワーク回路を追加してみました。

一般的なラジオでは、出力トランスからスピーカーに繋がる信号線は2本共
アースに対してフローティング状態になっているけど、このラジオではNFBを
構成するために一方がアース(シャーシ)に接続されています。

NFBのコンデンサは“0.5μF”、抵抗は“1kΩ,1/4W”です。
これらも交換する事にしました。

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ハンダごてで加熱したら、コンデンサと抵抗が繋がったまま外れました。
コンデンサには“MP-15、0.5μF、W.V.250V、(SOSHIN)、57-8”と表示されて
います。
『0.5μF、250VのMPコンデンサ、1957年8月 双信電機製』でしょうか?

MP(メタライズド・ペーパー)コンデンサも、Part.5でチェックしたオイル
ペーパーコンデンサと同じように誘電体の素材に紙が使用されているので、
経年に伴って湿気を含んで絶縁不良を起こし易いようです。

一応コンデンサの絶縁状態をテスターでチェックしてみます。

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“×10kΩ”レンジのテスターの針は一瞬右に振れた後“約1MΩ”まで戻って
止まり、左端の∞(無限大)まで戻りません。
やはり絶縁不良を起こしているようです。

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負帰還用のコンデンサと抵抗を取り外した端子板です。
ちょっと汚すぎるので、軽く清掃します。

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埃だけは落ちたけど、古い物なのであまり綺麗になりませんでした。

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シャーシに戻って、故障していると思われるVOLUME用可変抵抗器を調べます。
端子の配線は全て取り外してあります。

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可変抵抗の端子間に上図のようにテスターを接続して抵抗値を測ります。

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シャフトを『反時計方向』に回し切った状態です。
抵抗値は“0Ω”なのでOKです。

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シャフトを『時計方向』に回し切った状態での抵抗値は“約1MΩ”です。
可変抵抗器には“500kΩ”と表示されているので、約2倍の値です。
経年劣化によるものと思われます。

しかし、シャフトの回転に対する抵抗値の変化はスムーズなので、例の
『ガリガリ』『バリバリ』という雑音の原因になるような抵抗体と摺動子の
間の接触不良は無いと思われます。
他の原因としては、放送も雑音もVOLUMEの回転位置に関係なく常に最大音量で
鳴っていた事を考え合わせると、可変抵抗器のアース側端子の配線が外れかけて
いた可能性が考えられます。

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可変抵抗器のスイッチ部の動作についてもテスターで確認しました。
スイッチをオンした状態で抵抗値が“0Ω”、オフした状態で“∞”なので、
OKです。

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Part.4で準備した新しい可変抵抗器はシャフトが短かったり、スイッチ部の
方式が違ったりという問題もあるので、敢えて可変抵抗器は交換せずこのまま
再組み立てする事にします。
抵抗値が500kΩから1MΩに劣化している件はとりあえず無視します!

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エアダスターと洗浄剤『CRC エレクトロニック・クリーナー』を使用して、
シャーシーやソケット類を清掃します。

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清掃後です。
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半世紀前の製品と思えないほど綺麗になりました。

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取り外したコンデンサ、抵抗、配線、そしてハンダ屑です。

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<現状の問題点まとめ> は解決済み。
①短波は受信できるが、中波が受信できない。
 ②受信中、VOLUMEツマミの位置に関係なく常に最大音量?で鳴る。
 ③VOLUMEツマミを動かすと、かなり頻繁に「ガリガリ」『バリバリ』と
  最大音量?の雑音が出る。
④局部発振回路の中波用バリコンの配線が取り外されている事が判明!
  これが①の原因になっている可能性が大である。
 ⑤コンデンサ、抵抗などの部品劣化の懸念有り。
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①と④は解決済み。
⑤を調査した結果、複数のコンデンサに絶縁不良有り。
 ⇒コンデンサと抵抗をすべて新品に交換する。
  Part.6でコンデンサと抵抗の取り外しがほぼ完了。
②と③は Part.8の調査の結果、VOLUMEの可変抵抗器の内部に接触不良はなく、
可変抵抗器への配線が外れかけていた可能性が出てきたので、可変抵抗器は
交換しない事にした。

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