真空管ラジオ『 コロムビア COLUMBIA 1510 』の修復 - Part.2 | アナログ三昧、そして時々ディジタルな日々
先日のPart.1では、ネットオークションで入手した日本コロムビア製の真空管
ラジオ『 COLUMBIA 1510 』のジャンク品を開梱し、修復に向けて機器の状況
を調べました。
その結果は次の通り:
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<現状のまとめ>
①中波は受信できないが、短波は受信できる。
②受信中、VOLUMEツマミの位置に関係なく常に最大音量?で鳴る。
③VOLUMEツマミを動かすと、かなり頻繁に「ガリガリ」『バリバリ』と
 最大音量?の雑音が出る。
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このPart.2では、外回りから清掃しながら、容易に見える範囲で構造を理解
しながら状態をチェックして、異常が無いかどうかを調べる事にしました。

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先ず『 COLUMBIA 1510 』のブロック図を書いてみました。
電源トランス付き5球スーパーの標準的な構成で、使用されている真空管も
ほぼ標準的な物です。
ラジオによっては、6BA6が6BD6だったり、6AQ5が6AR5、あるいは5M-K9が6X4
だったりするようです。

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作業机に移動しました。

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上面を軽く水拭きしました。
“新品同様”とは言えないけど、けっこう綺麗になりました。

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ツマミを取り外して操作パネルを軽く水拭きしました。
あまり綺麗になっていないけど、半世紀前の製品なので妥協します。

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取り外したツマミです。

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ツマミの裏側です。
半世紀分の垢がたまっています。

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ツマミを軽く水拭きして取り付けました。
1個足りないので、とりあえず『電源スイッチ-音量調節(SW-VOLUME)』と
『音質調節(TONE)』に取り付けておきます。
必要な時だけ『モード選択(SELECTOR)』の方に付け替えて使用します。

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ダイヤルパネルも軽く水拭きしたけど、黄ばみが少し残っています。

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サランネットの上に貼り付けられているエンブレムも水拭きしました。
カメラのフラッシュの影響か?白色の“HI FI”の文字だけが写って、
金地の部分やコロムビアのロゴマークが黒く沈んでしまってます。

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フラッシュをOFFにして撮り直したら、“HI FI”の金地の部分が浮き出して、
コロムビアのロゴマークと“HIGH FIDELITY”の文字もはっきり写りました。
但し、シャッター速度が遅くなったので少しぶれてます。

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これで外回りの清掃は一応完了です。

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裏蓋の周囲の埃も軽く拭いてやりました。

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裏蓋を取り外しました。
目の届く範囲で内部の構造と現状を調べることにします。

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仕切り板の右側の部屋の下部です。
中央に見えるのは電源部で、底板に固定した電源トランスの上に金属板を
L字型に折り曲げた小型シャーシを取り付け、その上に整流管とヒューズ、
そして本体部へ電源を供給するコネクタが実装されています。
そしてシャーシの手前の穴から電源コードが出ています。

電源トランスの左隣には、スピーカーを駆動する出力トランスが取り付け
られています。

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ヒューズホルダーのカバーを外してみました。
カバーのおかげで中は綺麗で、接触不良などの心配はなさそうです。

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電源コード先端のプラグも問題はなさそうです。
こんな所にもコロムビアのロゴマークが付いています。

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前面板の上部に2個のスピーカーが取り付けられて、並列に接続されています。
左側のスピーカーには『 Columbia DS-651 V.C. 3.3Ω 』、
右側のスピーカーには『 Columbia 6VS1 V.C. 3.3Ω 』と表示されています。

最初見たときは、元々同じ型名だった物の片方が故障して別型名の物に交換
されたのかと思ったけど、回路図上にも上記の2つの型名が記入されている
ので、特性の異なる2種類のスピーカーで広いレンジをカバーする設計に
なっているものと思われます。

ボイスコイル(V.C.)のインピーダンスは『3.3Ω』と低めです。

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左側の部屋に移って、前面パネルの裏に取り付けられたシャーシの下部です。
中央から少し左寄りの所に電力増幅用真空管『6AQ5』が見えます。

シャーシの下端部には、左から順に『モード選択(SELECTOR)』のロータリー
スイッチ、『電源スイッチ-音量調節(SW-VOLUME)』の可変抵抗器、そして
『音質調節(TONE)』の可変抵抗器が取り付けられています。

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ロータリースイッチと可変抵抗器にズームイン。
遠目には綺麗なようでも、古い物なのでそれなりに汚れています。
可変抵抗器は2個ともスイッチ付きです。

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シャーシの上部です。
中央の茶色の部品が『中波-短波』のバンド切り替え用ロータリースイッチで、
その上が局部発振/周波数変換用真空管『6BE6』で、そこから時計方向に
バリコン、アンテナコイル、ブロック電解コンデンサ、検波/低周波増幅用
真空管『6AV6』、二段目の中間周波トランス、中間周波増幅用真空管
『6BA6』、局部発振コイル、一段目の中間周波トランスが実装されています。

最上部中央の暗い所に微かに見えるのは、マジックアイのソケット裏面です。

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ロータリースイッチに軽くズームイン。
このロータリースイッチも相当汚れています。

中波の受信に関係する接点が接触不良を起こせば「中波だけが受信できない」と
いう現象の原因になり得るので、接点を洗浄してみる事にしました。

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ロータリースイッチに接点洗浄剤を軽くスプレーした後、何気なくその左側
の局部発振コイルに目をやると、そのボビンの中に二つ折りにされた線材が
無造作に押し込まれているのが見えました!!
コイルの端子に接続されている訳ではなく、ただ押し込まれているだけです。

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局部発振コイルのボビンから線材を取り除きました。
コイル自体にも、配線にも特に異常は無いようです。

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コイルに押し込まれていた線材です。ちょっとレアな透明色の被覆です。

画像では判り難いけど、両端とも被覆の先から十分な長さの芯線が出ていて
表面にハンダが残っているので、強い力で引きちぎられたのではなくハンダ
ゴテを使って、どこかから取り外されたものと思われます。

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周辺を調べた結果、3連バリコンの一番手前の端子に配線が繋がっていない事が
判りました。 ハンダは残っています。

ちなみに、標準的な2バンド5球スーパーでは受信電波の同調用と局部発振用
に『2連バリコン』が使われ、各バリコンは中波と短波で兼用されているけど、
この“高級5球スーパー?”では、局部発振用のバリコンが中波用と短波用に
個別に設けられて『3連バリコン』になっています。

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回路図と照合した結果、×印の箇所の配線が繋がっていない事が判りました。

これは中波用のバリコンと、局部発振コイル、ロータリースイッチ間を接続する配線
なので、これが繋がっていないと局部発振回路が動作せず中波が受信できません。

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緑丸で示したバリコン端子から青丸で示したロータリースイッチ端子へ、
あるいはそれと接続されている赤丸で示した局部発振コイル端子へ接続されて
いた配線が無くなっている事になります。

いずれの端子も、例のコイルボビンに押し込まれていた線材の長さとほぼ一致
する距離にあるので、ここから取り外された物と考えて間違いないと思います。

それにしても、何の目的で取り外されたのかは全く見当が付きません。

<現状のまとめ>
①中波は受信できないが、短波は受信できる。
②受信中、VOLUMEツマミの位置に関係なく常に最大音量?で鳴る。
③VOLUMEツマミを動かすと、かなり頻繁に「ガリガリ」『バリバリ』と
 最大音量?の雑音が出る。
④局部発振回路の中波用バリコンの配線が取り外されている事が判明!
 これが①の原因になっている可能性が大である。

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