Part4では、2号機(60Hz版D-3500ジャンク品)から取り外した60Hz用
モータープーリーを1号機(50Hz版D-3500)に移植しました。
当面は1号機の修復に専念し、2号機は現状のままとします。
Part5では先ず『テストテープ』を試聴してデッキの状態を確認します。
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電源を入れて『テストテープ』をセットし、PLAYボタンを押して再生を
開始しました。
この『テストテープ』は約35年前に、このデッキとレコードプレーヤー
『DENON DP-1700』を使用して、あべ静江のファーストアルバム『みずいろ
の手紙/コーヒーショップで』をラジカセで聴くためにダビングした物。
このデッキが最良のコンディションだった時期に、ラジカセ用という事で
ドルビーをOFFにして録音されているので、このデッキの状態を確認する
『テストテープ』として好都合です。
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ダビング元LPレコードの収録曲は:
A-1:みずいろの手紙 《阿久 悠 作詞/三木たかし 作曲》
A-2:バラのささやき 《林 春生 作詞/馬飼野俊一 作曲》
A-3:恋人たちがいる舗道 《阿久 悠 作詞/三木たかし 作曲》
A-4:あのひとが帰る朝 《林 春生 作詞/馬飼野俊一 作曲》
A-5:ひまわり 《阿久 悠 作詞/三木たかし 作曲》
A-6:さよならを風に乗せて《奥山圭三 作詞・作曲》
B-1:コーヒーショップで 《阿久 悠 作詞/三木たかし 作曲》
B-2:恋人たちの季節 《フォーメン 作詞・作曲》
B-3:倖せの順番 《門間 裕 作詞/ボブ・佐久間 作曲》
B-4:恋はみずいろ 《漣 健児 作詞/アンドレ・ポップ 作曲》
B-5:わたしの城下町 《安井かずみ 作詞/平尾昌晃 作曲》
B-6:誰もいない海 《山口洋子 作詞/内藤法美 作曲》
の12曲で、これを60分ノーマルテープ『LOW NOISE C-60』のA面に上記の
B-1~B-6、A-1~A-3の順に9曲を、B面に上記のA-1~A-6、B-1~B-4の順
に10曲を、それぞれダビングしたものです。
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試聴結果は、1曲目の『コーヒーショップで』は一応正常に再生できたけど、
2曲目の中間辺り(再生開始から約5分後)から急にテープが減速したらしく
音程が低下して、あべ静江さんの声がフランク永井風?の声に変化!!
STOPボタンでテープを止めて、電源を一旦切って入れ直したけどモーターが
回転しない。
何度か電源ボタンを押してオン、オフを繰り返していたら、そのうちに
モーターが始動したので PLAYボタンを押したら、再生が再開しました。
しばらく正常に再生していたけど、10分程度でフランク永井風になって、
15分ほどでフランク永井以下の超低音で今にも止まりそうになったので、
STOPボタンで停止させて、電源を落としました。
そして電源を入れ直したけどモーターは始動しません。
その後、同じ事の繰り返し状態になりました。
モーターの劣化か、それともメカ部のグリスが固化したか?
あるいはゴムベルトやアイドラー類がスリップしているのか?
この種のモーターは劣化し難いと思われるので、とりあえず
モーター以外のメカ部を整備することにしました。
<キャプスタンプーリー軸受けの清掃>
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先ずキャプスタンプーリーの軸受けを清掃し、潤滑剤を注脂?します。
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軸受けプレートを取り外して、プラスチック製の軸受け部を清掃し、
サンハヤト製『プラスチック専用潤滑剤 "プラグリース" PGR-57』を
注脂しました。
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軸受けの上で回転するキャプスタンプーリーのシャフト先端にも潤滑剤を
注脂しました。
この潤滑剤は「プラスチック専用」と謳われているけど、効能書きには
「プラスチックvs.金属にも有効」と書かれています。
その結果は、テープが急減速する現象に対しては効果がありませんでした。
キャプスタンプーリー以外の大部分のプーリーの軸受け部にも潤滑剤を
注脂したけど、やはり効果がありませんでした。
<モータープーリーとキャプスタンプーリー間の平ベルト交換>
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苦し紛れにモータープーリーの取付位置を上下にずらしてみたけど、
効果なし。
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モータープーリーとキャプスタンプーリー間の平ゴムベルトの張力が
やや強すぎたので、最適な長さを再測定してオーダーメード品に交換。
その効果かどうかは不明だけど、5~10分程度で急減速していたのが
約30分間(C-60テープの片面)連続して正常に再生出来る様になりました。
しかし、テープを反転してB面の再生開始直後に急減速!
また、再生中に音ブレが発生するようになりました。
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不具合の直接的な対策ではないけど、モーターの回転状態を判りやすく
するために、ファンの1枚の羽根の先端を黒く塗りました。
この1号機に元々使われていた50Hz用モータープーリーのファンは
最初から1枚の羽根が黒く塗られていました。
次の対策として、メカの各部を丁寧に清掃し、必要な箇所に潤滑剤を注脂
することにしました。
<リール台周辺の清掃>
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メカの全体を上面から撮影。
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カセット受皿の周辺です。
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リール台の周辺を清掃するためにカセット受皿を取り外しました。
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カセット受皿を取り外した後のリール台と、その周辺です。
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テープ巻き取り側リール台の周辺です。奥の方は相当汚れています。
リール台の右に見える縦に細かい溝のある金属棒はアイドラーで、
録音/再生時にリール台のアイドラーに押し付けられて、テープを
巻き取る方向にリール台を駆動する役目を担っています。
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テープ送り出し側のリール台の周辺です。こちらも相当汚れています。
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両リール台とその周辺です。
二つのリール台の間の少し右寄りに見えるのは早送り用のアイドラーで、
早送り動作の時、右の巻き取り側リール台に押し付けられてリール台を
高速で駆動するものと思われます。
早送り用アイドラーの動力はシャーシの裏のプーリーから得られます。
やや左寄りの手前にあるのは巻き戻し用のアイドラーで、巻き戻し動作時
早送り用アイドラーと巻き戻し側リール台に押し付けられて、早送り用
アイドラーの回転方向を反転して、巻き戻し側リール台を高速で駆動する
ものと思われます。
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両方のリール台を取り外しました。
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リール台の裏側です。キレイに清掃しました
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垂直に立っている2本の金属棒はリール台の心棒です。
その向こう側の白い大きなプラスチック部品は、テープに張力を持たせる
ためにリール台に押し付けられる部品ではないかと推定します。
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そのプラスチック部品も取り外しました。
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清掃しました。
黒ずみは消えたけど、黄ばみはイマイチです!
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他の部品も清掃して潤滑剤を注脂しながら組み立てました。
シャーシも清掃しました。
その結果、再生時の音ブレは無くなったけど、巻き取りリールが
時々止まるようになってしまいました。
巻き取りリールが止まるとテープがカセットハーフの外にはみ出し、
その後、オートストップ機能が働いて停止状態になります。
巻き取りリール駆動用のアイドラーや、その前段のプーリーと
ゴムベルトがスリップして空回りしている可能性があります。
ということで、次は巻き取りリールの駆動系を清掃します。
<巻き取りリール駆動系の清掃とゴムベルト交換>
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赤い矢印で示したのが巻き取りリールを駆動するアイドラーです。
録音/再生時にはこのアイドラーが巻き取りリール台のアイドラーに
押し付けられて、リール台に回転を伝えます。
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シャーシーの裏側(下面側)です。
赤い矢印で示したプーリーが表側の巻き取りリール駆動アイドラーに
繋がっていて、キャプスタンプーリーに付属した小径プーリーから
ゴムベルトで駆動され、その回転を表側のアイドラーに伝えます。
このプーリーが取り付けられている白い"ヘの字型"のプラスチック部材は
録音/再生時には上の2段プーリーの軸を支点として右に少し回転するの
で、このプーリーはゴムベルトに押し付けられ、同時に表側のアイドラー
は巻き取り側リール台のアイドラーに押し付けられます。
プーリーが真面目に回転しているかどうか判るように、プーリーの金属面に
幅の狭いテープを貼り付けました。
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"ヘの字型"のプラスチック部材を取り外すために、先ず2段プーリーを
取り外しました。
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次に"ヘの字型"のプラスチック部材を取り外しました
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取り外した跡地?です。
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矢印で示したのが、巻き取り側リール台を駆動するアイドラーです。
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アイドラーとプーリーを清掃して、取り付けました。
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2段プーリーを取り付けて、完成です。
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表側(上面側)です。
リール台のアイドラーも清掃しました。
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リール台からオートストップ関連の2段プーリーへのゴムベルトと、
2段プーリーからテープカウンターへのゴムベルトを取り付けました。
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カセット受皿を取り付けました。
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裏側のゴムベルトやキャプスタンプーリーを取り付けて完成です。
しかし結果は"NG"で、やはり巻き取りリールが時々止まります。
そこで、巻き取りリールを駆動するアイドラーを駆動するゴムベルトを
少し短めの物に交換してみたら、ほとんど止まらなくなりました。
ゴムベルトが長すぎてプーリー上でスリップしていたようです。
しかし、再生動作を30分ほど連続すると減速する現象は直っていません。
減速して低速度で動作中に、ピンチローラーの背面をキャプスタン側へ軽く
押し付けてやると正常な速度に戻ることが判ったので、ピンチローラーを
清掃することにしました。
<ピンチローラーとポーズ関連メカの清掃>
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こんな状態で動作させています。
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矢印で示したのがピンチローラーです。
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Eリングを外して、ピンチローラーを取り外しました。
取り付けた状態で軽く清掃してあるので、比較的キレイです。
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ピンチローラーが取り付けられていたポールと、ピンチローラーを
キャプスタン側に押し付けていたスプリングです。
その奥にあるのが『R&Pコンビネーションヘッド』です。
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オーディオテクニカ製『ヘッド&ピンチローラークリニカ AT6037』の
『ピンチローラークリーニング・リキッド』を綿棒に染み込ませて、
清掃しました。
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元通りに取り付けました。
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手前のポーズ(PAUSE)ボタン関連の汚れが気になったので、ついでに清掃します。
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分解して清掃しました。
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元通りに組み立てて潤滑剤を注脂しました。
その結果は、全く改善効果が得られませんでした!
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ピンチローラーのスプリングを一段強くしてみたけど、これも効果なし!
<オートストップ関連ユニットの清掃>
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あと残っているのは、矢印で示したプーリーの下にあるオートストップ関連
のユニットだけです。
再生中にテープが減速する不具合とは関係なさそうですが、念のため清掃
しておきます。
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ゴムベルトを取り外しました。
このプーリーは2段になっていて、下段のプーリーは巻き取りリールの
プーリーからのゴムベルトで駆動され、その回転を上段プーリーから
テープカウンターへ中継する役目を担っています。
それと同時に、その回転はシャーシーの裏側(下面側)に取り付けられた
オートストップ関連のユニットに伝えられます。
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プーリーを取り外しました。
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取り外した2段プーリーの下の方には、カムのような物が付いています。
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これがオートストップ関連のユニットです。
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取り外した跡地?です。
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ちょっと複雑な構造で動作がよく判らないのですが、おそらくテープエンド
に達して巻き取りリールが停止した状態を検知して、その結果を録音/再生
メカに伝達して停止ボタンを押した場合に相当する動作を起こさせるための、
一種のセンサー機能を機械的に実現しているものと思われます。
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ユニットとプーリーを清掃して組み立てて、シャーシーに取り付けました。
しかし、当然ながら?テープが減速する不具合は直りませんでした。
C-60テープのA面は何とか連続再生できるのですが、B面に移ったとたんに
減速します。少し休ませると、今度はB面は何とか連続再生できるのですが、
A面に移ったとたんに減速します。
いよいよ、モーターの方へ目を向けざるを得ない状況になりました。
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この続きは“Part6” へ・・・
<参考サイトへのリンク>
オーディオの足跡>Lo-D/HITACHI>プレーヤー>カセットデッキ>D-3500
カセットデッキ『 Lo-D D-3500 』の修復 - Part4
レコードプレーヤー『 DENON DP-1700 』の復活
あべ静江オフィシャルブログ「みずいろの手紙」
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