ナイキスト周波数より低ければ、サンプリングしても元の波形は再現できるというのが「標本化定理」でした。
サンプリング~デジタル信号化~信号処理~出力、という流れだけ考える場合、たとえばオーディオのなどならこれで十分なのですが、フィードバック系を組んで自動制御をさせようとすると別のことも考慮しなくてはいけません。

「なんちゃってサーボ設計」の記事でこんなことを書きました。

構成要素の確認>光ディスク装置のサーボ設計(フォーカス制御)

https://ameblo.jp/an-engineer2019/entry-12502847126.html


以下、数記事で光ディスク装置のフォーカスサーボ設計の具体例を説明しているのですが、サーボ帯域としては数KHz あればよいということでこれらのサーボ設計内容をそのままデジタルに置き換えようとして、サンプリング周波数を 20KHz(ナイキスト周波数:10KHz)で十分などと思ってシステム検討をすると地獄へ直行です。

こちらも覗いて欲しいのですが、

「そうだったのか、PLL」>「不都合な真実?!!」(その3)

https://ameblo.jp/an-engineer2019/entry-12502847073.html



ここで PLL 制御は離散系の制御、言い換えればサンプリング制御のようなものだと説明しました。そうなるとサンプリングによる遅れ要素がもれなく付いてきて、系の設計を難しくするということです。
では、デジタル制御はというとサンプリング行為は外せませんから、デジタル自動制御は離散系になってしまい無駄時間要素が呼びもしないのに登場してきます。
無駄時間要素というのはサーボ設計に取って鬼畜のような存在で、位相遅らせるので安定性を損ね、そのくせ利得が減衰しないので帯域制限にも使えず、位相補償をしようとすると高域の利得が上がってノイズだらけになるというとんでもないやつです。
遅れた時間は取り戻せないので遅れ量をできるだけ小さくしておきたいところです。

前述のフォーカスサーボの例で、サンプリング周波数が 20KHz の場合は時間遅れが 50usec ですから、位相遅れが 20KHz で 360°、2KHz で 36°となってサーボ帯域付近で見逃せない位相遅れ量が発生します。従ってサーボ帯域 5KHz ぐらいまでの間で時間遅れによる位相遅れが無視できる量=10°ぐらいとするなら、少なくとも 180KHz のサンプリング周波数でデジタル制御したいところです。

前回までの説明と合わせるととにかくサンプリング周波数は高くしたくなります。経済性が許せばですが。
が、時々触れているようになかなかそうもいかないという話を次回(かな?)考えてみようと思います。

 

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