ソクーロフを生まれて初めてみてきた。一日いっこずつ見る贅沢はもう味わえないだろうな・・
ひとつひとつの作風があまりにも違って、ますますこの人がわからなくなった。すごい人だ。
みたのは
「エルミタージュ幻想」
「日陽はしづかに発酵し・・・」
「ファザーサン」
「太陽」
一番の衝撃だったのは、「日陽はしづかに発酵し・・・」
映画館から抜け出て太陽に浴びた瞬間、泣きたくなった。
題目は、今あまりにも気を紛らしたりもぐりこめるものが多すぎて、考えようとしなかったこと。
世界の終わりって隕石の衝突とか、劇的な何かがきっかけでいっぺんに起こるのかと思ってた。
でも多分ちがう。 このタイトルみたく きしみ合い、歪みつつ訪れゆくのかも。
おびえる原因を追求することを拒み、人生を愛することを押し付ける老人。
全てが無駄だとあきらめる無気力で無表情な子ども。
異常な暑さも手伝い、気の遠くなる時間。
語り伝えるすべがなかったら、無に近くなりえることに気付いて恐ろしくなった。
岩にぶち当たるたびに変調する上流のような音楽のつなぎ方や、よりかかりたくなるぬるい色彩に囲まれた、濃い2時間半だった。
「エルミタージュ幻想」は、エルミタージュ宮殿を舞台に当時の全盛期を再現し、90分ワンカットで撮ったもの。
90分ワンカットって!音楽では一発録りとかよくあるけど・・映画はなかなかない。
ってことはちょっと荒々しさが残るのかな。
でも当時の再現だから、かなりのきらびやかさなんだろうな。
いろいろ想像してみてみた・・・そしたら!
全然ちがった。
カメラは声しか聴こえないソクーロフの見た情景そのもの。まるで自分も一緒に案内されて歩いているような錯覚に陥る。
そしてカメラに話しかけてくる迷い人の外国人。
ソクーロフとその外国人は、考え方にずれがあり、時代の視点も異なる。
その対話を通してみせられるきらびやかな世界は少し歪んでみえる。
自国のアイデンティティの揺らぎや諦め、近代化に対する皮肉など、一見、豪華な宮殿生活とは無縁のような問題がぽつぽつと浮かび上がる。
ただただきらびやかなものだと思ってたのに。
幻想の世界に現実逃避するような映画だと思ってたのに。
目の前に広がっているのは今とは明らかに違う非現実的な世界なのに、伝わってくるものはひどく現実的。
原題は「ロシアの方舟」。
箱舟がヨーロッパ一色に染まった、ある時代を通過した。ただ、それだけのことだったのか・・・
自分がどこにいたのか分からなくなるくらい不思議な体験だった。
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