あもる一人直木賞(第169回)選考会ー途中経過2ー | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

あっという間に本物の選考会の発表日が目の前に!

老眼が進みすぎてて見えんかったわ~。ショボボボ。

 

でももう読み終わってるから、しかももう受賞作も決まってるから、

あとは書くだけ・・そう書くだけ・・・必死!

 

遊んでるヒマはないので、とっとと本題へGO!

はやく書き終わって、逆スイミー・ベースボールを見たい(笑)

 

↓スイミー

 

→前回までの記事はこちら

 

 

 

今回の直木賞選考会も前回同様、特に読む順番も考えないまま、以下のとおり手に取った順で読んでみた。

※()内は出版社。

 

(1)月村了衛「香港警察東京分室」(小学館)

(2)垣根涼介「極楽征夷大将軍」(文芸春秋)

(3)冲方丁「骨灰」(KADOKAWA)

(4)高野和明「踏切の幽霊」(文芸春秋)

(5)永井紗耶子「木挽町のあだ討ち」(新潮社)

 

てなわけであもる一人直木賞選考会の結果を順次発表してまいります。

順位については読んだ時点でのもの。

次の記事以降で順位は上下していきます。

 

※全体的に作品の内容に詳しく触れています!!!(次回以降の記事も同様)

 

1位 高野和明「踏切の幽霊」(文芸春秋)
2位 垣根涼介「極楽征夷大将軍」(文芸春秋)

3位 

4位 月村了衛「香港警察東京分室」(小学館)

5位 冲方丁「骨灰」(KADOKAWA)

 

◇◆

 

 

うーん、序盤がよかっただけに後半のダレちゃった感がとにかく残念!

 

最初はもうとにかく怖くて、ヒ~・・と言いながら恐怖に耐えきれず、数頁先を読んで

「ほっっ。まだ光弘(主人公)生きてる><」

と安心して読み進める、という禁断の手口を使いながら読んでいった。それくらいホラーシーンの描写がすさまじかった。

なんだけど~。途中から、

いくらなんでも光弘の察しが悪過ぎんか?

・・ん~でもまあ、実際この立場に立ったら次々に起こる現象を受け入れられないのかも・・

でもお守りとか買うくらいには信じてるわけだし・・・

と思ってしまったら最後、もう最後までず~っとイライラしてた(笑)

 

亡き父に化けた得体の知れない亡霊の意味不明な封建時代的な命令とか~

家族を守る描写もイマイチ共感できなかった。

家族を守る!キリッ!とはあちこちに書いてあるんだけど、そんなに家族大事にしてましたっけ?と思わせてしまう今までの積み重ねのなさ・・

父親への思慕だけは伝わってきたが、奥さんと娘さんに対しては表面的な思いは書いてあるが、全体的に光弘の気持ちがこちらにあまり伝わってこなかったのが残念。

 

原さんを探しては地下に連れていき、連れて行っては逃げられる。のループ。

しかも連れてきたはずの原さんがいつの間にか別人に。

・・・映像にしたら多分恐怖のシーンなのだろうが、文字で読むと飽きてきた(笑)

あ~どうせまた別人でしょ~ほらやっぱり。みたいな。

ここは文章力が問われる箇所で、もう少し恐怖にまみれた描写もできたはずだと思う。

こうなってくると、起こる現象起こる現象がいちいちかったるく、序盤の恐怖の描写がウソのよう。

だいたい何度もお金を要求されるとか、さすがにアヤシイって思わんか?!

拝み屋の玉井工務店も過去に重大事案が起きてるなら、もっと厳重に管理しないと~。

というか、そもそも原さん探して地下へ連れて行く、という行為を当たり前のように書いてあったが、え?せっかく探し出した人をいきなり地下に連れて行っちゃうの?とまず思ったし。

思えばあそこら辺から、だんだん読む気しなくなってきた。

そして最終的に人柱が~!!!!って・・・さすがに東急に怒られんじゃね(笑)!?

 

4位と5位はほぼ同順位だったのだが、月村さんの作品の方がなんだかんだで最後まで楽しめたので、1歩リードとした。

 

◇◆

 

 

自分で決めた順序だが、まさか2作続けてホラーを読まされるとは思わんかった。

そうでなくてもホラー系が苦手なあもちゃん、真夜中に読むホラーとかイヤすぎた。

震えながら読んでいたら、突然壁が「ピシッ」とか音を立てるもんだから

ひっっ

とか声が出る始末。ほんと怖かったデス。

しかし結果的には2作連続で読んでよかった。

とりあえず同じジャンルとして比較しやすかったからである。

 

一方は上記のとおり察しの悪い主人公、こちらはものすごく察しのいい柔軟な主人公(松田)。

それだけでイライラが解消されるってもんである。

しかも作品の完成度は文句なしにこちらに軍配。

私、途中で泣いちゃったからね。

1人の女性が殺された。

その彼女はずっと偽名で生きてきて、容疑者はすぐに捕まったものの、この被害者がどこの誰かも分からないまま、名無しの権兵衛で裁判は粛々と進められていく。

本名も正体も誰にも知られないままひっそりと命を終えていったその描写に、まず胸がギュッと詰まった。

正しい名前で生きていられるということは当たり前なことではあるが、幸せなことであるのだと思い知る。

主人公の松田(元新聞記者)はその被害女性の正体を明らかにすべく取材に乗り出すが、その取材を進めていくうちに思わぬ真実に辿り着いてしまうのであった。

 

取材を進めるうちに、松田の過去も描かれる。

奥さん一筋だった松田がいかに奥さんを愛していたか、が細部にわたって描かれる。

霊媒師によって生きていた頃の奥さんの思いを伝えられた松田は泣きそうになる。

そして泣けない松田の代わりに私が泣いてあげました(笑)

 

取材が行き詰まり、その突破口となったのが序盤に軽く声をかけていた霊媒師だった時には

「あ〜そういやこの作品、ホラーだったな」

と思い直す。

それまでは心霊写真等のホラー要素も登場してはいるものの、全体的に電車事故と殺人事件、そして警察への取材などのサスペンス的要素がほとんどであったため(物語の入り方として心霊現象と事件との絡ませ方がすごく上手だった)、霊媒師の登場に多少面食らったのも事実。

サスペンスとホラーが上手く混ざり合っているかというと、多少強引なところもあるのがちょっとマイナスか。

政治家の汚職事件と殺人事件との絡みがかなり強引だった気がする。

しかも最終的に女性の幽霊が自分を殺した犯人とその奥にいる真犯人を殺すし〜。

いや、殺すならそんなまどろっこしいことせずに最初からヤればよかったのでは?

とも思ったのだが・・

そういや踏切に現れた幽霊の女性は、当初は何をするでもなくぼんやりと現れるだけであった。

自分でも自分の存在や自分の思いなども分かっていなかったのかもしれない。

(幽霊に思いを馳せるのも変な話だが笑)

それが松田と出会ったことで、自分でもわからなかった自分の思い

・自分の正体(名前など)を知ってほしい

・自分を殺した人を探しあて、事件を解明してほしい

・そして自分が何をしていたのかを知ってほしい

を知り、そして松田にその思いを託した。

・・ということがわかると、まあそんなに強引でもないか、とも思う。

でもやっぱり政治家の登場はやりすぎだったかなあ。

人間を1人始末するって結構大変だと思う。

それを何があったか存じませぬが、不要だからって簡単に始末できるかなあ。

しかも懇意のヤクザに頼むとか、一生弱みを握られそう。

大体ヤクザでもなかなか殺人(しかも一般人)には手を染めにくいと思うのに。←黒ちゃん作品からの知識〜w

 

それでもやっぱりいい作品はいい作品。

結末はともかく最初から最後まで楽しめたし、主人公の松田同様奥さん一途(表向き・・?)な汗かき夫にこの作品を勧めた。

女性より男性に私は勧めたい。男性が好きそうな作品。

ホラーと言いつつ、サスペンス要素が多いから楽しめると思う。

 

物語の最後の最後、生前の被害女性がなぜ踏切のそばに立っていたのか、そして命果てる前になぜ助けを呼ばず踏切まで歩いて行ったのか、の事実がサラリと明かされた時、ああそうだったのか、と寂しくなったね。

大袈裟に重々しくなく、しかも松田の推測という形でその事実が明かされたのはよかった。

そして私はその最後まで名が明かされなかった被害女性の魂があるべきところに戻れますように、と私も松田と共に祈った・・

 

高野さんってこんなに上手だったっけ?

あと高野さんってこんなに熱い人だったっけ?・・って文章しか知らんけど。

前回候補作の「ジェノサイド」から11年。

鍛錬すればするほど人は成長していくものなのだ、と勇気をもらった。

 

というわけで、次回いよいよ結果発表です!急げ~!